6時限目 ピンク色
その日は帰宅後にスマホを開いたが、メッセージを打ち込むのに時間が掛かった。
悩んで打ち込んだのはたったの一行。
文豪: また教室で会いたい
暫らくすると返信が届いた。
ピンクいろ: 今日は入院するみたい
ピンクいろ: 明日は学校休むかも
文豪: お大事に それと早く治して欲しい
ピンクいろ: 【スタンプ】治すぞ! 包帯ウサギ
僕はそのままの姿勢で、動きの無いスマホの画面を見詰めた後に電源を落とした。
◆ ◇ ◆
三日後の放課後。
春の日差しが時刻と共に
僕は真っ先に口を開いた。
「
今日も
そして僕にコッソリとこんなメモをくれた。
―― 放課後、時間とれるなら付いて来て ――
「ここは期間限定の、あぁ――しの特等席なの」
クルリと振り返り見せた
「
「
「えっと、ゴメン聞いたことないや」
「じゃあ、アルビノって聞いたことある?」
「あぁ。白い蛇とか? 白いライオンとか?」
「あぁ――しも、それなんだよね。生まれるのはたった0.005%の不幸な偶然なのよ」
「そしてアルビノに生まれると、
僕は勇気を出して、ピンク色の話題にそっと触れる。
「その髪の毛も、そして瞳も生まれながらのものなんだね」
「両親だってそんな、あぁ――しにスミレなんて名前を付けたのよ! スミレの花言葉は
「僕はこの学校に入ってから景色がどんどんモノクロになっていったんだ。そんな中で唯一見付けたカラフルな色は、君の髪が持つピンクだったんだ。そして僕の自己紹介で助けてくれたのも、君の名前なんだ」
僕はどうしようもない現実を抱えている
「僕は
僕は
「それにスミレが
僕は直ぐにスマホで検索してみた。
ある意味賭けだった。そもそも僕が花言葉のことなんか詳しく知る訳がない。
そしてスマホの画面に検索結果が出ると、僕はその画面に目を奪われた。
そのままの画面を
「ほら! ピンクのスミレの花言葉は『愛』と『希望』だよ。そして誕生花は『1月6日』って
やがて、そのピンク色の瞳には涙が
僕は慌ててポケットからハンカチを取り出して、
「僕はピンクのスミレが好きだよ」
「わたしも、シェークスピア以外なら文豪は好きよ」
屋上には穏やかな日差しが、二人を優しく包み込んでいる。
春のそよ風が、
そして
―― 完 ――
両手にランとスミレ ~曰く付きの高校生たちが織りなす青春譚~ 【カクヨムコン期間限定公開作品】 そうじ職人 @souji-syokunin
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