第44話 やる事は1つ!

 フォドゥラの武器である大剣もライフルも、完全に破壊されてる。


 フォドゥラに熱線のような固定武装があれば話は別だけど、もしなければ戦えないも当然。

 私としては、これで降参してくれれば越した事ないけど……。


『馬鹿な……ディオネスの方がフォドゥラよりも上回っているというのか……? いやそんなはずが……』


『そんなはずも何も、今さっきの戦闘を見れば一目瞭然じゃない。どうやら、ユアを追放したあなたの目が節穴だったようね』


 動揺するジェラルドさんに対して、嘲笑を見せるエリカさん。

 まぁ、相手が相手だからこの表情は仕方ない。


『だから、私はそちらの聖女など知らない……!! それにまだ勝敗が決まった訳では……!!』


『何が訳ではよ。フォドゥラの武装はどちらも破壊。対してディオネスは爪や牙などが健在。降参するのが賢明な判断だと思うけど、違うかしら?』


『……………………エミさん』


『はい……』


 何を思ったのか、エリカさんじゃなく奏多さんに問いかけるジェラルドさん。

 その彼がこう言い放ったのだ。


『周りに甚大な被害が出る恐れがありますが、致し方ない。……を発動して下さい』


『よろしいのですか?』


『このままではディオネスに敗北してしまう。それだけは絶対に避けなければ……!!』


『……分かり……ました』


 アレって……?


 疑問に思う私の傍ら、フォドゥラが破壊された大剣とライフルを投げ捨てる。

 その次の瞬間だった。


『リミッター……解除……』


 フォドゥラの全身の装甲が花のように展開したかと思えば、何とその隙間から青い炎が噴出。

 全身という全身が青い炎に包まれて、ただならぬ雰囲気を醸し出していた。


「何……!?」


『フォドゥラの解析の際に発見したものだ。終了直後に動きが鈍くなるという制約があるが、数分の間だけ性能が格段に上がるリミッター解除……これでお前とお前のファフニールを倒す!!』


 リミッター解除……。

 確かアニメとかでそれを発動すると、パワーアップするとかあったなぁ……。


 何て、軽々しく思っている場合じゃない。

 武装を破壊されてもまだ隠し玉を持っていたようで、しかも奏多さんもフォドゥラもやる気満々だ。


 ……だとするなら、


「ディオネス……」


 ――キュルオオオオ……。


 私がディオネスに問いかければ、その子が唸り声を上げながら答えてくれた。

 いつも通り戦うし、中の聖女もこれまで通り傷を付けない……と。


 ディオネスがそう答えるのなら、やる事は1つ!


『ディオネスの聖女……覚悟して下さい!!』


 奏多さんの言葉と共に、フォドゥラが向かって来る。


 しかも速い。

 さっきの3倍くらいはあって、残像が残るくらいだ。


 そのフォドゥラの拳がディオネスに振るわれるも……、


『……!?』


 私はディオネスを動かし、拳をかわす。

 それでもフォドゥラが再度攻撃を仕掛けてくるも、それも回避。


『は、速い……!?』


『何故だ……!? 何故リミッター解除をしたフォドゥラの攻撃を……!!』


 聞こえてくる奏多さんとジェラルドさんの驚きの声。


 正直私でもよく分かっていないけど、自然とフォドゥラの動きを捉えられるのだ。


 こういう事を言うと自賛になってしてしまうけど、確信は出来る。

 ディオネスの性能は、リミッター解除をしたフォドゥラよりも上なんだと!


『こんな事で……!!』


 奏多さんがフォドゥラをジャンプさせた後、ディオネスへとかかと落としを繰り出す。

 そしてかかと落としはディオネスの頭部……ではなく、その地面に当たって盛大に爆ぜた。


『いない……!?』


『上だ!!』


『!?』


 ジェラルドさんの声でフォドゥラが顔を上げる。

 そう、私は宙へと回避したのだ。


 そこから鉤爪を突き出しながら急降下し、すれ違いざまにフォドゥラの左腕を抉る!


『キャアア!!』


 どうもディオネスの前では追加装甲は意味ないらしく、部品をばらませながら左腕が落ちる。

 奏多さんごめんね……。でもすぐに終わるだろうからそれまでは……。


『追加装甲ごと……ありえない……!! そもそも何で、今のフォドゥラに対応して……!!?』


 うろたえるジェラルドさんに対して、私は答えない。

 私の中でやっと、「当然の帰結」という物が見つけたとしても。


 その帰結というのは、元々ディオネスが超高速飛行を持っているという事だ。


 例を挙げれば、初めてディオネスに会った際。

 

 あの時に私がいた草原は、例えワイバーンを使ってもトラヴィス城下町まで半日以上かかる距離にあった。

 現に到着するのに夜を経過している。


 対し城下町にいたディオネスは、草原で私がゴブリンに襲われているのを知ってで駆け付けたのだ。


 加えてブラックドッグ襲撃の際にも、城下町の外にいた私の元に数秒で到着している。

 

 それで分かるだろう。

 ディオネスは、とてつもない速度で飛行できるという事なのだ。


 なので高速で移動しているだろうフォドゥラに反応できるし、回避も難なく出来る。

 

 当然その回避にGが発生するけど、今着ている聖女用の服がそれを軽減してくれている。

 

 ディオネスと服を作ってくれたエリカさん達……。

 皆の協力があって、今の「ジェラルドさんのファフニールを圧倒できる私」がいるんだ!!


「もう降伏して下さい奏多さん!! これ以上の戦闘は無駄ですって!!」


『戯言を抜かすな!! エミさん、相手の言葉を聞いては駄目だ!! 倒す事に専念しろ!!』


『はい……!』


 私が呼びかけても、ジェラルドさんに邪魔されてしまう。


 音声を出しているという魔結晶を引き千切りたいところだけど、もちろんそんな場所なんて知らない。

 となると、やっぱり無力化するしか……!


『私は……あなたを倒して……!! ネルソン帝国を……!!』


 フォドゥラが指を手刀状にして振るえば、そこから斬撃波が射出。


 となれば同じ技で対抗。

 私もディオネスの鉤爪を振りかぶって斬撃波を出し、互いにぶつけさせ合う。


『くっ!?』


 相殺の影響か衝撃波が発生し、フォドゥラが体勢を崩す。


 ――今っ!


 その隙を見逃さなかった私は瞬時にフォドゥラの懐に入り、鉤爪で右腕を破壊する。

 

『そんな!! フォドゥラが!!』


 ジェラルドさんの叫び声をよそに、続けて両足を掻っ切り、


『私の……私のフォドゥラがああああ!!』


 そうしてフォドゥラの頭部を強靭な鉤爪を握り、粉々に潰していった。

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