残酷な世界 残酷な運命
@Haru1932
残酷な世界 残酷な運命
残酷な世界
残酷な運命
荒れ果てた世界。そこら中に建物の残骸。蔓延るゾンビ。ゾンビが蔓延り始めてから人類は急速に数を減らし、今は少数の人間が小さな街を作り細々と生きていた。中には私のように旅人になる者もいた。街を離れる=死を意味するこの世界で旅人は危険な行為。私はそんな旅人になった。そしてこれはそんな1人の旅人の残した日記ような物…日記だけど日記じゃない何か…分かりやすく言うならある一人の旅人の記憶…物語…かな。これを見てるあなたにこの言葉を残す。平和な世界は必ず崩れる。この世界のように。
第1話 残酷な世界
今日だけで何体のゾンビを殺したか分からない。殺しても殺しても…無限に湧いてくるゾンビ。ある日から私は無駄な殺しはやめた。殲滅する為に殺すんじゃなくて、生きる為に必要な殺しのみに絞った。例えば、食料の確保。寝床の確保など。生きる為に必要な殺しだけをするようになった。必要な殺しのみをするようになってから、体力が長く持つようになって、楽になった。楽にゾンビを狩れるという事は楽に食料の確保や、寝床の確保ができるという事。即ち、前みたいに無駄に疲れたりする事は無くなった。
「ふぅ…一通りやったかな…さてと…肉焼きますか…」
火を起こし、台に載せたフライパンをセットする。そこにさっき狩った鹿の肉を入れる。
フライパンから出る煙を利用して燻製も作る。これもさっき狩った鹿の肉を使って燻製肉を作る。
「やっぱり鹿肉は美味しいな…」
今までイノシシの肉などを食べていたが、イノシシの肉は美味しくない。だけど鹿肉は違う。イノシシとは違って美味しい。こんな世界でも美味しい食事の方が、食べる気が出る。マズイ飯はよっぽどの状態じゃない限り食べたくないからな。やはり人間だから美味い飯が食いたい。
「さて…と…そこの柱に隠れて見てるのは誰だ。」
右斜め後ろにあった柱に隠れている人間を呼ぶ。
「あっ…えっと…」
「こっちに来て。そんなに怖がらなくて良いよ。私は悪いやつじゃない」
柱に隠れていた少女が姿を現す。銀髪に美しい顔立ち。女優のようにも見えるほど彼女は美しかった。
「お腹…空いてるんでしょ?はい」
そう言って彼女に先程まで焼いていた肉を差し出す。
「えっ…?良いのですか…?」
「困った時はお互い様だろ?遠慮せずに食べてくれ」
「ありがとうございます…!」
久しぶりの食事なのか、彼女は泣きながらガツガツと食べ始めた。数分後には完食していた。「相当お腹空いてたんだね…元々いた街…わかる?」
「はい…!あそこの街です!」
「あの町か。なんで外に?」
「娘の為に花を摘みたくて…」
「花…か花なら…」
カバンの中を漁ると、中から瓶の中に入った綺麗な花が出てきた。その花を瓶ごと手渡す。
「良いのですか…?でも…食事を頂いたうえに、花まで…しかも瓶付きで…流石にもらえません…」
「遠慮しないでくれ。その花は荷物を圧迫していたんだ…貰ってくれると嬉しい。」
「…ありがとうございます…!では…私はこれで…本当にありがとうございました!!」
そう言い残して、彼女は街へと消えていった。…あの花に特別思い入れがあるかと言われれば無い。…無いからね。求めても無いからね。
火を消し、私は眠りにつく。
翌朝
「ふぁぁぁ…朝か…荷物まとめて移動するか…」
私は基本街には寄らない。生活必需品を買う事以外で町は利用しないようにしている。何故かと言うとこの世界で旅人は迫害の対象。外からゾンビウイルスを持ち込みかねない旅人は迫害の対象なのだ。だから私は街によらないようにしている。
「さて…行きますか…」
そう言って先程まで眠っていた場所を去る。
何時間歩いたのだろうか。気づけば、廃墟化して崩れたビル群を抜け、草原を歩いていた。
「……数は15か…少し多いな…でもやるしかないか…」
愛銃のグロック19を構え、ゾンビの大群に突撃する。
確殺距離まで接近し、引き金を引く。引いた瞬間、銃口が火を吹き、鉛の弾がゾンビ目掛けて飛んでいき、命中する。今の残弾数は14。全弾命中しないと勝ち目がない。慎重に狙いを定め、引き金を引く。次々に鉛の弾がゾンビに飛んでいき、数分後には全滅していた。
「…………」
ただ無言でゾンビの死骸を見つめる。
「……この世界は狂ってる。」
そう言い残し、私はまた歩き出す。
また何時間も歩き、あたりは草原から、また廃墟のビル群のある元都市に変わっていた。
「ここに来るのも久しぶりだな…私の…故郷…随分変わったな…今じゃ、大自然の1部だ…」
故郷を歩く。歩いて、歩いて…気づけば、夜になっていた。
「今日はここにテント張って寝るか…」
素早くテントを張り、燻製肉を取り出し、食べる。
「……味が無い…食べないよりはマシか…栄養もあるし…」
燻製した肉を3個ほど食べたところでお腹いっぱいになり、テントの中に入り、横になり、目を瞑る。
「……疲れた…」
そう言うと同時にに私の意識は暗闇へと落ちていく。
翌朝
「………」
目を開け、体を起こす。寝癖を直し、長く伸びた黒い髪を整える。ゴムで髪を縛り、ポニーテールにする。テントを片付け、その場を後にするのだった。そしてまた何時間も歩く。こんな生活をかれこれ10年繰り返している。私が生まれた時は既に世界はゾンビに犯され、都市は自然の1部になりつつあった。私が街を飛び出したのは6歳の時だ。あれから10年。今の私は普通の平和な世界なら、高校生のはず…多分。
「今日はやけに静かだな…なっ!?」
私の目の前に体長2mは超えるであろう巨大なゾンビ…”変異種”が現れる。変異種に銃弾は効かない。勘のいい方なら気づくかもだが、私が使うのは…
「やれやれ…久しぶりの刀の出番だな…」
そう、刀だ。銃弾は効かなくても、切れ味が良く、斬ることに特化した刀であれば、倒す事が可能なのだ。
私は刀を構え、変異種に向かって突撃する。変異種は巨大な手に持った木を私に振り落とすが、私は避ける。振り落とした際の隙を逃さず、心臓目掛けて刀を降る…が…
「うぐっ!?」
空いていた方の手が、私の腹に直後し、私は吹っ飛ばされる。
「ぐっ…あばらが何本か逝ったな…」
激痛が走り、言う事を聞かない体を無理やり起こし、刀を構え、再び変異種へと突っ込んでゆく。今度は思いっきりジャンプし、変異種の体を引き裂くようにして斜めに斬る。変異種は叫び声を上げ、少しの間暴れた後に倒れて動かなくなった。
「はぁ…はぁ…倒した…でも…いし…き…が…」
体に力が入らない。視界が暗くなっていき、私の意識は暗闇へと落ちていった。
色んな音がする。誰かが歩く音。誰かの喋る声。
「私はゆっくりと目を開ける。私の目に映ったのは青い空ではなく、白色の天井だった。
れい「…ここ…は…?」
医者「あっ!起きましたか!?」
声のした方を向くと、商人らしき男と白衣を着た医者らしき男がいた。
医者「良かった…!1日程目を覚まさなかったので心配しました!」
「私を助けてくれたのは…?」
商人「私です!」
商人らしき男が答える
「助けていただき、ありがとうございます。」
頭を下げ、感謝する。
れい「あの…何かお礼をしたいのですが…」
商人「もしかしてあなたは旅人ですか?」
この質問をされた時、私はまた迫害されるのかと怯えてしまった。それでも私は答えた。
「…はい」
商人「やはりですか!実は…私の息子が旅人になりたいと言っていまして…良かったら一緒に旅をしてくれないかなと…」
れい「命の恩人様の願いは断れませんね…分かりました。すぐに準備します。。」
医者「ですが、まだ傷が…」
れい「この程度の傷はすぐに治ります。」
御手洗で服を着替え、荷物をまとめる。
れい「旅人になりたい方に合わせてください。」
商人「もちろんです!」
ーー商人宅ーー
はると「あの…よろしくお願いします…」
れい「そんなにかしこまらなくて良いよ。私達の共に旅する仲間だから!」
笑顔で答える。
はると「わかり…分かった!行ってきます!お父さん!」
商人「息子を頼んだよ」
れい「おまかせください!…はると。行こう」
はると「うん!」
そう言って2人は街を離れ、目的もなく、ただ歩いていた。
れい「…君はなぜ旅人になりたかったんだ?」
はると「世界を旅してみたかった。」
れい「そっか。あそこで言いそびれたけど、旅人というのは危険だ。君の身の安全は保証出来ない。」
はると「承知の上だ。」
れい「そうか。君は覚悟がきまっている。良い事だ。」
はると「ありがとう。」
会話が続かない。すごく気まずい。……
れい「……変異種か…今の体でどこまで通用するかな…」
そう言うと私は刀を鞘から抜く。
はると「あの…俺は…」
れい「君は見てるだけで良い。」
そう言うと私は刀を構え、変異種に向かって突撃する。前回の反省を生かし、背後に回り込み、心臓を切る。
はると「す、すごい…変異種を…一瞬で…」
れい「前回は散々な目にあったからね…」
はると「!れいさん!後ろ!!」
私は素早くグロックを出すと、後ろに向けて引き金を引く。バン!という音と微かに匂う火薬の匂い。何かが倒れる音。後ろを見るとゾンビが倒れていた。
れい「お前らは臭うんだよ。後ろから来たとて無駄だ。」
れい「行こうか」
はると「うん。」
そして私達はまた歩き出す。
何時間歩いたのだろう。歩いている少し喋ったが、やはり会話が続かない。
れい「……………」
はると「……………」
ずっとこんな調子だ。長い事人と話す機会が無かった私はどうすれば良いのか分からない…
はると「………あの…れいはいつから旅人になったの?」
れい「10年前から。6歳の時に街を飛び出したんだ」
はると「なんで街を飛び出したの?」
れい「…!うっ…」
思い出したくない記憶が蘇り、頭が痛くなる。
はると「れいさん…?」
れい「すまない…話せない…いや…話したくない…」
はると「わかった…」
れい「……君はなぜ、わたしについてきた?」
はると「あなたからオーラを感じたのです。優しいオーラが…」
れい「優しい…か…言われたことも無い。人生で一度も…言われたのはクズだの約立たずだの…」
はると「……ごめんなさい…辛い過去を思い出させてしまって…」
れい「構わない。君が気にすることでは無い。そろそろ日も暮れる。今日はここでテントを張ろう」
素早くテントを張る。
れい「燻製肉だ。」
はると「ありがとう。」
2人で燻製肉を食べる
はると「美味しい…」
れい「そうか……確かに美味い…」
これ以降会話する事なく、2人は燻製肉を食べた。
れい「…寝ようか」
はると「…うん」
2人でテントに入る。
れい「おやすみ…」
はると「おやすみなさい…」
10分後…
はると「…れいさん寝ちゃったかな…」
れいの顔に自分の顔を近づける。れいは小さな寝息を立てて眠っていた。
れい「スー…スー…」
はると「寝てる…疲れてたのかな…俺も寝よ…」
顔をれいから離し、横になる。
れい「………」
(そんなに顔近づけられちゃ寝れないじゃん…)
れい「……はぁ…」
はると「…スー…スー…」
れい「……んっ…あっ…!んっ…!イッ…クッ…!んあっ…!はっ…はぁ…はぁ…拭かないと…」
はると(れいさんが…俺で…ヌいてる…!?)
れい「………」
ーーー翌朝ーーー
れい「はると〜!朝だぞ〜!起きろ〜!」
はると「ん〜…おはよう…れいさん」
れい「おはよ」(バ、バレてない…よね…?)
はると(ヌいてたのは夢…だよな…うん…)
れい「行こっか…」
はると「うん…」
最終話 残酷な運命。
あれから1ヶ月ほどたった。その間にはるとを育成し、それなりに戦力になるレベルにまで上げた。
れい「今日は銃弾を正確に奴らの頭…つまりヘッドショットの練習をするよ。」
はると「わかった…!」
れい「よぉい…始め!!」
私がそう言うとゾンビを模した模型にはるとが
突撃する。(ちなみにはるとにはトーラス85というリボルバーを持たせている。)
はると「はぁぁ!」
バン!という音と共にトーラス85の銃口が火を噴く。鉛の弾が銃口から飛び出し、模型の頭に当たる。
れい「上出来だ。もう私が教える事は無いな…あとは…刀の使い方か…刀は……」
そこから数時間。刀の使い方、持ち方、斬り方を教えた。はるとは真剣に話を聞いて、模型と対峙させてみると、なんと初めてとは思えないスピードで心臓を斬り、殲滅してしまった。
れい「今日は終わり!さぁて…ほれ!」
燻製肉をはるとに渡す
はると「ありがとう!」
肉を食べ終わる頃にはあたりは暗くなっていた。夜空には綺麗な星空と天の川が見えた。
れい「君と旅を始めてもう1ヶ月か…時間の流れは早いね…」
はると「もう1ヶ月ですか…本当に早いですね…」
れい「君はもう立派な旅人だ。私が居なくても旅ができるんじゃないか?笑」
はると「そんな寂しい事言わないでください…」
れい「あはは!すまんすまん!…じゃあ…おやすみ。」
はると「おやすみなさい…」
その日私は疲れていたのかすぐに眠る事ができた。そして、夢を見た。この世界が崩壊する前の夢。笑顔の人だったり、死んだ目をした人だったり…色んな人が居た。…………これがあんな見るも無残な姿になったのか。やっぱり世界がいつか崩壊するんだな…どんな世界も…崩壊は避けられないのか…あぁ…”残酷”だなぁ…
ーーー翌朝ーーー
れい「起きろ〜!朝だぞ〜!」
はると「ん〜…おはようございます…」
れい「おはよ〜ほれ、パン」
はると「ありがとうございます…」
私達は朝ごはんを食べた後、またいつものように訓練をしていた。だけど…ソイツは突然やってきた。
れい「じゃあいつものようにヘッドショットしてみ………!?危ない!!」
はると「へ?」
模型が破壊される音。さっきまで私達が居た場所は変異種の上位。”上位変異種”によって破壊されていた。
れい「くそっ…今かよ…!はると!お前は周りの雑魚を頼む!私は親玉を叩く!!」
はると「了解!!」
私は刀を構え、上位変異種に全速力で向かっていく。れい「はぁぁぁ!!」
ガキンッ!!
れい「硬い…!!」
変異種が拳を私に向かって振り下ろす。私はそれを間一髪で回避するも、左腕が取れてしまう。
れい「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
激痛で動けない私に変異種はさらに拳を叩きつけようとする。私はそれをギリギリで回避する。
れい「くそっ…がっ…!仕方ない…防御が緩い首を狙うか…」
私は立ち上がり、変異種の後ろに回り込み、首を斬ろうとするも防がれる。今度は横から行くもまた防がれる。
こんな攻防を1時間ほど続けた時ついに決着がつく。
れい「はぁ…はぁ…はぁ…」
私の体をボロボロになり、腕、足、腹、頭…身体中から血が出ている。
変異種も身体中から血を流している。お互い限界が近い。
れい「……終わらせよう……貴様も道ずれじゃ!!」
そう叫び、変異種に向かっていく。刀を振り下ろす。変異種も斬らせまいと必死になる。
れい「うぉぉぉぉぉぉぉ!!斬れろぉぉ!!」
……………変異種の体が地面に倒れる。同時に私も倒れる。
はると「れいさん!!死んじゃダメです!!」
れい「はる…と…君と過ごした1ヶ月…とても楽しかった…私が居なくても…君はやって行ける…さよならだ…はると…」
はると「れいさん…?れいさん!!」
れい「………」
ピクリとも動かない。
はると「れいさーーーん!!!!」
西暦2125年。れい 死亡。
最終話 残酷な運命。
オマケ
はると「…………」
はるとはれいの墓の前で手を合わせていた。はるとの背中には、れいの刀があった。はるとのズボンのベルトに付けられたガンホルダーには、れいのグロック19と反対側にあるガンホルダーにはトーラス85が合った。
はると「れいさん…あれから5年も経ちましたよ…れいさん…天国で元気にしていますか?……僕は元気ですよ…じゃあね…れいさん…また5年後に来ます。」
そう言って立ち上がり、墓を後にした。
記憶の旅終了。ここまで読んで頂き、ありがとうございました。良ければ、応援、応援コメントお願いします!では!また会いましょう!
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