暴食戦姫の食べるが勝ち! ~「豚は消えろ」と人気パーティから追放された底辺配信者、ダイエット目的でダンジョンに潜ったら弱肉暴食スキルが開花して伝説級の強さを手に入れる~
6.暴食さんのダイエット料理配信:ダンジョンかぼちゃの煮物、作ります
6.暴食さんのダイエット料理配信:ダンジョンかぼちゃの煮物、作ります
「こ、こんばんわー。いりいり食堂のいりいりです! 今日はかぼちゃを手に入れました。ダンジョンかぼちゃです! しっかりずっしり重いです!」
そんなわけで配信開始だ。
いちおう、告知しておいたんだけどライブで見てくれてる人いるかな?
……すごい4人もいる!
『どうみてもハロウィンのやつ』
『ダンジョン産のかぼちゃって、デスパンプキンのこと?』
『魔物なら食えるわけないだろ』
『デスパンプキンっぽく作りこんでる』
ぼちぼちコメント欄に書き込まれていく。
ふぅむ、みなさん、私のことを疑ってるようですね。
いいでしょう、美味しいカボチャだってことを教えてあげますよ。
「顔があって、ジャックオランタンに似てるんですけど、内側に身が入ってるぽいです!」
絶命したからか鋭い牙も長い舌もどこかへなくなっていた。
なんていうか、かぼちゃを数センチくりぬいているだけって感じ。コメント欄の人が言うように、まるっきりハロウィンのあれだ。
「それじゃ、調理開始しますね! ダイエットご飯、第二段です!」
まな板に載せて、包丁をぐっと押し当てる。
かぼちゃと言えば、切りづらい野菜トップに入るけれど、想像以上にさくっと刃が通る。
断面は想像以上にきれいな黄色をしていた。
種も普通の種だし、スーパーに売られているかぼちゃと変わらない。
「顔は……適当に処理しちゃいましょう」
顔部分はちょっと気味が悪いから厚めに皮をはぐことにした。
こういうのは得意。
『手際いい』
『料理スキルは素直に尊敬』
『頑張って痩せろ』
応援してもらってるのかな?
少し嬉しいかもしれない。
「かぼちゃかぁ、ふーむ、どうお料理しようかなぁ」
かぼちゃを4分の1にカットしたところで、献立を考え始める。
基本的には素材の味を引き出せる料理がしたい。そっちのが早く出来上がりそうだし。
このかぼちゃ、身が詰まっていて、見れば見るほど美味しそうだ。
じっと見つめていると、頭の中で声がする。
『「ダンジョン料理人:見習い」の派生スキル、「食材鑑定:1」を手に入れました』
頭の中に突然響いた声に、一瞬、手元が止まった。
「食材鑑定……?」
目を閉じると、不思議な感覚が広がる。
このスキル、一体何に使えるんだろう?
でも、とりあえず今は料理に集中だ。
スマホでレシピを調べると結局はシンプルなところに落ち着く。
「やっぱりかぼちゃと言えば、煮物だよね! じゃあ、作っちゃいましょう」
ダイエット中なのでお砂糖はゼロにして、お醤油とお出汁とみりんで味を調える。
ゆであがったかぼちゃはかなりの分量だ。
「できました! 見てください、この色! このツヤ! 最高じゃないですか!」
甘いにおいと飴色の果肉にメロメロである。
うぅう、よだれが出そう。
『うまそう』
『料理上手』
『別に料理上手なら多少太っててもよくね?』
『小太りぐらいだろ?』
『かぼちゃのホクホク感すき』
コメント欄では激論が交わされる。
うふふ、みんなカボチャ好きだよねぇ。
これを全部食べるとなると糖質過剰で絶対に太るので、注意しなきゃだけどさ。
「さぁて、お味の方は……」
お箸で一口取り、口に運ぶと、途端に甘さが広がった。
「おいひぃい!」
口いっぱいに広がる濃厚な甘みとほくほくした食感!
思わず目をつぶって堪能してしまう。
「まるでスイーツみたい……! 食べたことないぐらい美味しい!」
感動のあまり、涙が出そうになるくらいだった。
「恐るべし、ダンジョンかぼちゃ!」
お箸でつまんでハフハフ言いながら口に入れる。
口の中に広がる強烈な甘み。
ほくほくの触感だけで幸せになる。
やばい、やばい、鍋いっぱい食べちゃうかもしれない。
『普通にうまそうだ』
『ダイエットチャンネルやってて太りそう』
『てか、ダンジョンの魔物を料理する(ふり)って新しいよな』
『食えないし』
『腹減ってきた』
『食べてる姿も映せるようになったらいいね』
コメント欄は好意的なのかな。
そりゃそうだよね、美味しいものを前にしたら人間は争いをやめてしまうものなのだ。
それにしても、このかぼちゃ最高!
次も絶対に狩ってやる!
『「ダンジョン料理人:見習い」の派生スキル、「食材変換:1」を手に入れました』
例の声が頭の中に響く。
食材変換というスキルを手に入れたらしい。
ふぅむ、なんだそれ。
ダンジョンの魔物を食材に変えるスキルなんだろうか。
食材鑑定と合わせて二つもスキルが身についたらしいけど、体に変化はない。
「ふわぁあ~あ、それじゃ、今日の配信はここまでです! おやすみなさい! あ、実は体重がちょっと減りました! これからも頑張ります!」
お腹が満たされると、次に襲ってくるのは睡魔である。
私は急いで配信を終えてしまう。
さすがに寝落ちしたまま配信なんてできるわけないし。
やばいぐらいの眠気なのだ、もう本当に。
『おやすみー』
『歯を磨けよ』
『かぼちゃだけで栄養足りるの?』
『夜食するなよ』
『おやすみー』
気づけば視聴者が10人に増えていた。
チャンネル登録者数は15人もいる!
どこで私のチャンネルを見つけるんだろうか。
一回目の配信に比べて、みんなの態度が温かい感じになったのは嬉しいけど。
◇
「あ、あれ? ま、ま、まじっすか!?」
明朝、衝撃が私を貫く。
顔がすっきりしているのだ。
慌てて体重計に乗ると、見事に1キロマイナス。
昨日、私はかぼちゃの煮物を半分食べたし、お腹いっぱいになった。
それなのに痩せるってことあり得る?
脂肪は少ないだろうけど、糖質の塊なのに。
「このダンジョン、やばいかも……! 冷蔵庫さん、ありがとっ!」
私は冷蔵庫に思いっきりハグをする。
このダンジョンに出てくる魔物を食べ続けると痩せるかもしれない。
やばいよ、このダンジョン。
私、痩せられるかも!
私、やればできる子なのかもしれない!
とりあえず、お弁当箱には昨日のカボチャを詰めて……準備完了!
「行ってきます!」
写真立ての中の家族に笑顔で手を振って、私は意気揚々と部屋を出るのだった。
もちろん、その後は別に何事もなく人生は続く。
そんな風に思っていたのだが、今日は違った。
「師父、ご飯、食べよう」
「うぉい、王さん?」
お昼休みになると私の席のところに王さんが立っていた。
今更だけど、スタイルがいい。
身長は私よりも5センチは高いし、脚が長い。
彼女はどうやら私と一緒にご飯を食べたいようだ。
「いやぁ、あの、しふ? ってその、私、そんな大したもんじゃないし」
私は敢えて釘をさしておくことにした。
王さんとお弁当を交換して以来、弟子入りされたのだが、さすがに優秀な探索者にそんなことをされると恐縮する。
私なんて親の定食屋を手伝っていた経験しかないんだし。
「ダメ。入谷イリアは師父。私は弟子」
「うぅう、聞き分けが悪い……」
「それで、師父、今日のご飯は何を食べる?」
「あ、そうだ! 今日はねぇカボチャを持ってきたんだよ。食べよっか」
話を強引にそらされたけど、これ以上、言い合っていても仕方がない気がした。
お昼休みは有限なのだ、さっさと堪能したいよね。
「はい、どうぞ。おすそ分け」
「ありがとうございます。美味しい、うまうま」
王さんはカボチャを受け取ると、満面の笑みでそれを食べる。
普段は感情が全く顔に出ないのに、食べるときだけは別なのだろうか。
それにしても、気になるのは彼女の持ってきたジップロックの袋だ。
前回同様、ちょっと直視できない感じの代物である。
「……
彼女はジップロックに太めのストローをさすと、ずずずと勢いよく吸いこんだ。
顔は再び無表情。
言葉の意味は分からないが、たぶん、美味しいものではないらしい。
「えーと、それってお弁当なの?」
「そう。私の手作り。体に必要な栄養を全部入れてある。だが、まずい」
王さんはあっという間に食事を終えてしまう。
いや、食事と言っていいのかよくわからない。
栄養補給とでも言った方がいいのかもしれない。
「入谷イリア師父、私に料理を教えてくれさい。私、あなたの弟子」
「いいですけど。基本的な家庭料理みたいなのしかできないよ? あとは定食とか」
「構わないし、助かれます。あなた、教える人、私、教わる人」
王さんは私から料理を習いたかったらしい。
確かにあのドロドロのものを毎日食べるのは酷だよね。
栄養バランスの取れた食事はそんなに難しいものじゃないし。
「よっし、今日はバイトがあるから、その後で教えるね!」
「わかった。師父の家の前で待機する」
王さんは少しだけ口角をあげると、私の前の席からいなくなるのだった。
っていうか、私、家の住所、教えたはずないんだけども。
少しだけ背筋に冷たい汗が走るのを感じながら、去り行く彼女の後姿を眺めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます