第5話 必殺技では?

王子は興味深そうに頷きながら、次の挑戦者を待った。


ヨシオ・イチノセの「精神的な鼻拭き」の余韻がまだ漂う中、司会者が元気よく叫んだ。


「さあ、次の挑戦者は…町の謎多き詩人、エドガー・クシャミ!彼の鼻拭きはリズムと韻を刻むというが、果たしてどんなパフォーマンスを見せてくれるのか!」


エドガー・クシャミはマントを翻し、詩的な雰囲気を漂わせながらゆっくりと登場した。そして、静かにハンカチを取り出し、朗々と詠み始める。


「風そよぐ  鼻の奥より 来たるもの

 優雅に拭けば 詩となりぬ」


彼がハンカチを軽やかに振ると、まるで風に舞う花びらのように美しく鼻水が消え去った。観客は「おお…!」と感嘆の声を上げた。


王子は内心思った。「鼻拭きに詩情を込めるとは…奥深い。だが、そもそもこれは何の大会だったのだろう?」


そんなことを考えているうちに、次の挑戦者が登場した。


「お次は…筋肉の塊、ヘラクレス・ハナカムリ!その力強い鼻拭きで、鼻水だけでなく、空気まで震わせるというが…!」


ヘラクレス・ハナカムリは観客に向かって拳を突き上げると、勢いよくハンカチを鼻に当て、一気に拭いた。


「フンッッッ!!!」


その瞬間、強烈な風圧が発生し、観客席の帽子が吹き飛び、テントがめくれ上がり、何人かの審査員が椅子ごと後ろに倒れた。


王子のマントも風にあおられ、思わず抑えながらつぶやく。


「これは…もう鼻拭きではなく、必殺技では?」


町の人々は恐る恐る拍手を送った。


「す、すごい破壊力だ…!」


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夢の渦いまだ遠い mukko @tylee

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