第31話 コラボ相手には誠意を持とう
ガチャポンの森泉風店、本日閉店セールイベントで貸切です。
ゲストは、チャンネル登録者数10万人を誇るオモチャレビュー系ユーチューバー・十文字クロス。そして、近所の小学校に通う天羽きららちゃんです。
ガチャガチャに造詣が深い十文字さんが、最近の玩具に疎い小学生へアレコレ情熱的変質的に多弁を振るう人気企画――
「茶番はやめなさい。どうして、あたしがおじさんのヘンタイ仲間に協力しなきゃいけないのよ? 不愉快の極みね」
アイフォンのカメラを向けると、美少女の心底嫌悪する素材が撮れた。
俺の休憩室でスタンバっていた、天羽。貫禄だけは売れっ子タレント。
「子供が活躍して、高評価を頂く。友達たくさんできる。お前らウィンウィンやろ?」
俺に利益はないものの、人生万事第三者である。幼女から真の解放を得られれば、安息の日々が再来しよう。仕事の問題が一切片付いていないが、未来の自分を信じてキラーパス。おらっ、キャッチしろ!
「あの珍妙な奴がほんとに人気あるわけ? あたし、全く知らなかったけど」
「メインユーザー層がドンピシャだし、絶対ガキンチョたちに影響力ある。あいつのことは嫌いでも、あいつのチャンネルだけは信じてやってくれッ」
「雪月花も登録してたし、おじさんより使えそうね」
天羽は、ワインよろしくぶどうジュースが入ったグラスをテイスティング。
一本千円の強い芳香が漂い、鼻孔をくすぐった。あとで飲んでいい?
「好きになさい。行くわよ」
生意気幼女、お得意のすまし顔で売場へ向かった。
おひとり様、お得意の無気力顔で控室へ残留した。
とっとと歩けと女子小学生がいたいけな成人男性に乱暴していく。
やめてっ、暴力反対! 今の、撮影してるんだからねっ! きゃぁぁ~~っっ!
後で動画編集するの俺なんだぞ。余計な手間増やすんじゃない。サビ残を許すな。
フロアへ赴くと、此度の協力者が背中で語っていた。
「フ、待ちかねたぞ我が同志! そして、その弟子よ」
学ラン姿で無地の黒マントをバサッと翻すや、腕を十字にクロスさせた変質者。
汝、その名を――
「驚いた。おじさん以上に気持ち悪いじゃない。それが仕事の衣装なの? 奇抜なキャラクターだけど、なるほど演じる必要なくありのままを露出するわけか」
印象は残りました、と女子小学生談。
「クックック、浅はかな考察なり。所詮、手弱女のざれっ、ざ、ざざざ」
「頑張れー。足震えてるぞ」
「戯言よッ!」
はあはあ、息を切らした十文字何某。
いかに幼女と言えど、天羽の口の悪さはオタクに効果抜群。
彼もフレンドゼロを背負う親戚的ポジションだが、俺より女子の辛辣さに耐性がないようだ。気にしすぎじゃん、他人を見たら無心を抱け。
「我が怨敵の弟子。今宵の饗宴、その是非! その賛美に酔いしれてみせろ。小生の本気に挑むがいい」
「おじさん、通訳」
「お誘いありがとうございます。今回の企画、楽しみにしてました。一緒に取れ高作って、再生数を稼ぎましょう。よろしくお願いします」
天羽が腕を組みながら、じぃ~っと先方に圧を加えていく。
小生さんが縮こまってるでしょ。本来、小心者や。キャラを羽織って、ペルソナを被ってるんだ。それが彼奴のぼっち克服法。
「あんたの連れに協力してもらう立場だもの。その分、あたしを利用するといいわ」
「俺に連れはいないけど。十文字、悪かったな。ベイバトルは今度にしてくれ」
「クックック、それがしのギアスを打ち破り命令を書き換えるとはッ。なかなかどうして、面白き趣向というもの。否、そこな小娘に拙者と対峙できる実力がありようか?」
十文字は自信に満ちていた、ロリなんかに後れを取るわけないと。
ずっと視線を外しながら。
「オタクの人、どこを見てるわけ? 挑発したいなら、直視なさい」
「オタクは人見知りだから。言動とかおかしいの全部、演じないとまともに女子と話せないんだ。面映ゆしゆえに」
「おかしくないとまともじゃない? そっちの方が恥ずかしいけど」
怪訝そうな天羽を打ち払うかのごとく、十文字はフレミングポーズで顔を覆って。
「いくら動揺誘おうとも、我が心不動なり! 実力にて、相対さんっ!」
そして、腕を十字にクロスさせた不審者。忙しい奴である。
相変わらず、足腰は生まれたてのバンビっていた。こやつに緊張するだけ無駄やで。
強気な女子小学生が苦手なオタクが必死に頑張っている。こっちを応援するべきか。
しかし、俺の心情など対戦に一切合切影響など与えられず。
なんせ、こちらにおわすクソガキをどなたと心得る! 畏れ多くも伝説のガチャポン荒らし――天羽きらら公にあらせられるぞ!
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