第46話

恭子が亡くなって3年の月日が経っていた。伊庭には親から勧められた見合いの話があった。

相手は京都の老舗の次女で、父は彼女の父親に恩義があるのでその見合いは断れないと言う。先方が伊庭の写真を見てかなり気に入ったようだった。


伊庭は父親にまだその気にはなれない事を言うが逆に叱られてしまう。


あるオフの日、絵里香は事務所に差し入れに行った。そこで絵里香は初めて伊庭がお見合いする事を知ったのである。絵里香は場所を聞くとその足で新幹線に飛び乗った。


絵里香はあるホテルの前にいた。

中庭で着物姿の美しい女性と伊庭が話しているのが見えた。絵里香は乗り込むと驚いている伊庭の手を引いて言った。

「すみません、彼、私のものなので」


目を丸くしている女性を置いて絵里香はどんどん歩いて行った。

そして離れた場所で絵里香は叫んだ。

「伊庭さんは私だけのものなの!だからもうこんな事許さないから!」

だがその瞬間、伊庭は笑い出した。

伊庭ははっきり断った事を絵里香に告げた。

そして両親と先方に挨拶をして伊庭は絵里香と共にホテルを出たのである。


伊庭と絵里香は京都のある町を歩いていた。伊庭の生まれ故郷である。

伊庭はきちんとスーツを着ていたし、

絵里香はセーターとGパンと言うラフな格好だった為、須田絵里香とは気づかれなかったようだった。

絵里香は伊庭が入っていた児童劇団を訪ねた。

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