第35話

和田山大学の合格発表の日が来た。

岸田は法学部の欄の合格者の受験番号を食い入る様に見つめた。

818番、何卒……!


「神様、どうかどうか、優ちゃんが合格していますように…… 」

大家はその日、仕事は有休を取っていた。

朝から岸田の好物を色々と作っていた。

サバの味噌煮、筑前煮、イカナゴの天ぷら、じゃがいもと玉ねぎの味噌汁。

母親の味には大抵及ばないが、今までの疲れを取って欲しい。


間違いない。

ちゃんと818とある。

岸田は何度も番号を確認した。

「間違いないよな!暖。俺、合格したんだよな…… 」

岸田の目から涙が溢れ出した。

「ああ、おめでとう。優ちゃん」

岸田は暖希に抱きついて泣き出した。

暖希もしっかりと岸田の背中を抱いた。


「うわー!俺の好物ばかりだ!」

岸田の顔が輝いている。

「お袋の料理食べたいと思ってたんだ。何で分かったんですか?お母さん」

「大家だからね…… 」

長谷部は残業で参加出来なかったが、5人で大家の手料理を食べながら舌鼓を打っていた。

更に最後にはチーズケーキが用意してあった。

そこへ長谷部が帰って来た。

「真ちゃん、丁度いい所へ!これからみんなでケーキを食べようとしていた所だったんだよ」

長谷部はビジネスバックを廊下に置いて台所に入って来た。

「おめでとう。優ちゃん」

「ありがとう」

大家は丸いチーズケーキを6当分に切って、まずは岸田の前に置いた。

「このチーズケーキも手作りですか?」

「まあね」

「うわー。ありがとうございます!」

岸田は感激していた。

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