第8話 リアルな魔物登場!
遅くなったな。
日も沈んだ帰り道。
埋立地にある大型ショッピングモールに続く4車線の大きな道を3人でおしゃべりしながら歩いている。
この辺は照明灯もあるし、車もけっこう走っている。また、お店も所どころ並んでいるので、懐中電灯なしでも不自由なく歩ける。
沖縄そばを食べたあと、ショッピングモールの3階の海に面しているテラスから飛行機が着陸してくるのを3人でしばらく眺めていて遅くなってしまった。
「匠っ!」
鋭い声。
十麻斗がボクの胸あたりを無理やり押さえて後ろに下がらせた。
「ハブやっさ!」
ボクが歩いていたちょうど少し前を蛇行しながら横切る細長い影。
いつものふたりとは違いとてもシリアスな顔をしていて、どんどん後退して距離を取っていった。
「轢かれた、ね」
「しに焦った」
歩道から車道に飛び出たハブは、通り過ぎた車のタイヤに轢かれ、しばらくもがいていたが、やがて動かなくなった。
「ハブに噛まれたら下手したら死ぬからな」
2000年代に入ってハブに噛まれて亡くなる人は極端に減ったそうだ。それでも噛まれたら、1か月くらい入院する人もいるのだとか。
ハブは捕まえると、市町村の役場に持っていく何千円か報奨金がもらえるらしい。でも、思っていたよりもずっと速く動けるハブを見たあとでは捕まえようだなんて、思いもしない。刺すまた形状の先がマジックハンドのように開閉できるハブ専用の捕獲するアイテムがあるらしいが、素人は危ないので誰もやらないそうだ。
ハブはお墓の近くやニワトリやウサギを飼っている家のまわりに多く出没する。草むらの中を分け入っていく時は棒でガサガサと音を立てながら入らないと出会い頭に噛まれることもあるらしい。
千葉県にも蛇はいたが、毒蛇なんて滅多にお目にかかるもんじゃない。やっぱり沖縄って異世界チックな要素がたくさんある。
でも、なんとなくやっていけそうな気がする。
「まさか、本当にハブに出会うとはね」
十麻斗が息をつきながら、どこか笑っている。
足元を通り過ぎていく夜風に海の匂いが混じる。その匂いがまた不思議と心地よい。
「沖縄、怖いけど面白いかも」
思わず口にした言葉に、十麻斗と宗善が笑った。
この島には独特のリズムがある。
千葉県ではけっして味わえなかった異世界のような場所。
ふと空を見上げると、満天の星が瞬いているのが目に入る。こんな風景もまた沖縄の一部だ。
「また明日も何か起こるかもな」
軽くそう言って、ボクらは再び歩き出した。遠くから聞こえる三線の音色が夜の空気に溶け込んでいる。
─ 終 ─
【短編】おきなわーるど あ、まん。 @47aman
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