夢中になれる時⑤
プレイしてから約一時間、四回目のプレイにしてようやくクリアできた。疲労感と達成感が同時にどっとやってきた。エナジードリンクを飲んでいても眠いものは眠い。とりあえずクリア後のストーリーを読み進める。
優勝した後、天山は満面の笑みを見せる。
「ようやく、ようやくここまで来れた。ふふっ、これでアイツと同じところに立てた」
―――おめでとうございます。胸を張って並んだと言えますね。
「そうね。けど、アイツは私より一年先に優勝してるんだから、まだこっちが追っている側なのかな。でも、そんなの今はいいや。アンタに出会わなかったら、ずっと私はスポットライトを浴びることなく終わってたんだと思う。アンタだけじゃない。一緒にいるユニットのみんなのおかげでもある。感謝なんて
してもしきれないわ」
―――今は私への感謝はいりません。ユニットのみんなへの感謝と自分を褒めてください。
「ふふっ。ありがと。じゃあ約束して。私を照らし続けて。私の良いところも悪いところも照らして、みんなに見せて。お願い」
最後にそう言った天山は少し不安そうな、でも以前よりも自信ありげにそう言う。
こうして、天山のストーリーは終わった。優勝した時のパラメーターと大会でのスコアが高ければ十話という真のエンディングが見れるのだが、今の俺にそこまでできる力はない。ギリギリクリアしたのが現状だ。悔しいが一旦諦めるしかないだろう。
次はどの子をプレイしようか、そう考え実行に移そうとはしているが、身体と眠気がもう限界だ。明日、明後日は特に予定がない。アニメを観るのもいいし、アイマジをプレイするのもいい。今日は眠ることにした。
翌日、いつも起きている時間に起きるが、休みだという事に気づき二度寝する。休みの日によくあることだ。結局、起きたのは七時半、母親が用意してくれた朝食を食べながら朝のテレビ番組を観る。そんな中、母親から茶々を入れられる。
「今日は花林ちゃんと遊びに行かないの?花林ちゃんのお母さん、嬉しそうにいつも話してるよ」
そう言われると、どうかと思うが本当に今日は予定がないので困る。
「今日はないんだよね。毎週遊んでいるわけでもないし、お互いの時間も大事にしたいしさ」
そう言っておいた。何だろうか。世の中のカップルというものは毎週の休みに会って遊ばないといけないという決まりでもあるのだろうか。母親の発言からはそうも感じ取れた。
「お兄ちゃんは毎週彼女と遊んでたけどね。一翔を見てると今の子って感じがするわ。自分の時間を大事にしたいのよね」
別にそう言うわけでもないんだけど、と反論したくなったが止めた。ここで何か言ったところで意味はないだろう。
兄は俺と違って社交的で友人も多く、小さいころから外で遊ぶことが多かった。アニメなんかは兄が観ていた横でよく観ていた。結局、俺の方が熱心に観ていたせいか今のようになってしまった。
「とりあえず、今日と明日は基本的に家にいるから。昼御飯も一緒に食べるから、何かあったら手伝うよ」
「ありがとう。じゃあ、作り始める時に呼ぶからね」
会話を終え、ケトルに水を入れる。部屋でコーヒーを飲みながらアニメを観ることにした。アイマジはプレイしたいが、ゲームをプレイする為のスタミナが溜まっていないのだ。一回くらいはプレイできるが、それだと少し味気ない。午前中はアニメを観て、アイマジをプレイするのは午後からにする。
こうして一人でダラダラしながらアニメを観るのも好きだ。狙って観ているわけではないが、さららが出演しているアニメばかり観ている。ただ、単純に出演数が多いのだ。今季だけで五作品くらいメインキャストで出ているな。
ここまでくるとけっこう忙しいんだろうな。SNSの投稿を観ていても生放送やラジオの出演も多い。花林はこの辺を全部追っていると言っていたが、結構大変だよな。時間がいくらあっても足りないくらいだ
二時間程経った後、ナマガルシップスから連絡が入る。少し電話しないか、という内容だった。丁度、集中力が切れてきたところだった。オッケーを出すと、すぐに電話がかかって来た。
「もしもし、すみませんね。突然電話して」
「いやいや。アイマジの話ですよね?」
「そうです。フカジロウ氏も天山夏南をクリアしたようですね。彼女のストーリーはけっこう王道で良かったですよね」
「熱いストーリーでしたよね。ユニット曲もまた良くて、なんというかちょっとおしゃれな感じもいいですね」
「アイドルっぽくない曲調と歌詞がまた良いんですよね。まあさの歌声がまたいい味出してるんですよ。まあさが演じている子のストーリーもまた良いんですよ。ぜひ次はプレイしてほしいです」
ナマガルシップスはハイテンションで話す。この人が機嫌よく何かを勧めるのは相当オススメの時しかないように思う。
「それじゃあプレイしてみますね。あっ、もしよかったらフレンドなってくれませんか?フレンドになればナマガルさんの力を借りられるじゃないですか」
「いいですよ。けっこう能力が高いアイドルに仕上がりましたからぜひ使ってください。IDを送りますね」
そう言われた直後、IDが送られてくる。このゲームにはフレンドのアイドルを使う機能がある。フレンドのキャラが強ければアイドルの能力を更に上げる事ができる。ナマガルシップスは相当強いアイドルにしたとSNSで投稿していたので、それを使わせてもらう事にした。
その後はアイドルの育て方を教えてもらった。その間に母親から声がかかったので通話を終える。ナマガルシップスはまだ話し足りなさそうにしていたので少し申し訳ない気はした。
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