第10話 挑むための道標
「ふああ〜っ」
ソラは蔓や木の幹などから作られたベッドから起き上がり体を伸ばし、そしてストンッと寝転がる。
「そっか…私今シェルターの中じゃないんだ…」
見慣れない天井を見ながらソラは悪魔との激しい戦闘を思い出しそう呟いた。
ソラはあの激闘を制した後、疲れが一気に来たのか強い眠気に襲われたのだ。
カレンがおぶってくれたところまでは覚えているのだがそこから先の記憶がない。
たぶんカレンの背中に体を預けたら安心したのだと思う…すっかり熟睡してしまった。
そんなことをソラがボーッと考えていると部屋の扉が開き、カレンが小さく手を振りながら入室してくる。
「おはよう!ソラ起きたのね!」
そして自分のことに気がつき、起き上がったソラへと入ってきたその足でベッドまで移動してくるとそのままガバッと抱きついた。
「ええっ!カレンさんおはようございますですけど…ちょっとスキンシップが激しすぎません!?」
ソラがカレンの突然の行動に戸惑いつつも挨拶し、それから遅れて驚きの声をあげる。
「だって手伝ってもらうとは言ったけど、初日からあんなに危険な目にあわせることになっちゃったから…その…無事で良かったというか…そういう感じのスキンシップよ!」
それにカレンは抱擁を解くとベッドに座り直し、改めてソラを見つめて申し訳なさと心配が混ざりあったような顔でそう返してくる。
最後の一言はいきなり抱きついてしまったことへの照れ隠しなのか語気が少し強かった。
「ふふっカレンさん!はい、おかげさまで見ての通り無事ですよ!」
そんなカレンの様子が少し可笑しくて失礼かもしれないけどと思ったがソラは我慢できずに笑ってしまう、それからその笑顔のままカレンを安心させるために力こぶを作るようにポーズをとる。
「そうね、無事ね…本当に本当に良かったわソラ…ホントに良かった…」
ソラの気持ちが伝わったのか心配そうな表情を消すと優しく微笑む、そしてソラの無事を確かめるように何度も呟いた。
すると部屋の外から騒がしい声が聞こえてくる。
「おいメグ!腕折れてんだからもう少し落ち着いて移動してくれ!」
そして勢いよく開かれる扉、そこには片腕を包帯で固定されたメグが立っていた。
「ん!ソラ目が覚めたか。良かった。」
メグはソラのもとへとスタスタ歩いてくると安心したように小さく頷いてくれるが明らかにソラよりメグのがボロボロだった。
腕の包帯は元よりなんか切り傷とか擦り傷だろうか腕とかズボンから見えてる部分の足とか至るところに傷を防護するための絆創膏が貼り付けられていた。
「ちょっと待ってください!私よりメグの方が重傷じゃないですか!?」
「ん!まあ言われて見ればそうかもしれない。でもこれには理由があって…」
「まあ言ってしまえば、ソラの外傷が少ないのはシルの力に守られていたこととあのピンク髪の悪魔はソラのこと欲しがってたから拘束するときの癖で壊れないように手加減してたみたいよ。それに比べてメグは話を聞いた限り、相手も壊そうとしてたからその違いかしら。」
メグが説明しようとしたが言葉の続きをカレンが奪い取ってしまったため、結果的にソラは欲しい情報を手に入れることができたが、メグはちょっとだけほんのちょとだけだムッとした。
「ん!カレンが全部取った。」
メグは悲しそうな声をあげると今度はカレンに向けて少しの反抗の意思を込め、ほっぺたを 空気でプクーと膨らませるが残念ながら見て欲しいカレンにもましては差し向けていないソラにさえも気にされなかった。
「そうなんですねって!そういえば私が寝ちゃったあとって何がありましたか?」
「あの後は、私たちにとって重要な情報の提供があったわ。」
「えっ!?どなたですか?」
二人とも聞いていなかったわけはない。
ソラもピンク髪の悪魔の話題が出たので現状の疑問に意識が行ってしまい聞かれたからには答えるしかないカレン。
メグはしょうがないことと思いつつもちょっぴり悲しい気持ちになった。
「金髪の悪魔、いいえサーヤからよ。」
「ええっとあのメグと戦ってた人ですか。どうしてまた?」
そんなところから情報が…と言おうとしたソラにカレンが続ける。
「ソラが倒したピンク髪の悪魔いるでしょ。そいつから無理やり聞き出したのよ。ちなみにその悪魔はサーヤが拘束中よ。」
「ん…私とクレイスは始末するべきって言ったんだけど、あの金髪があの悪魔から邪神に繋がる情報を引き出した。だから私とクレイスも引き下がるしかなかった。」
「ほんとは俺も始末するべきだと今も思ってるけど、邪神の情報を持ってる悪魔自体がそんなにいないんだ。少なくとも俺は初めて会った。」
しょんぼりしていたメグは気持ちを切り替えると会話に割って入り、それまで傍観を決め込んでいたクレイスも話に入ってくる。
「だから情報を生かして引き出すことにしたってことですか。」
「まあ…そういうことだな。」
「その情報というのは?」
「それはだな、これに目を通してくれ。カレンがあの金髪の悪魔から渡されたものだそうだ。」
クレイスはソラの疑問に綺麗に二つ折りにされている水色のかわいらしい紙をスッとソラに差し出すことで応じる。
「ええっと?なになに。」
ソラはクレイスからそれを受け取ると紙を開いて書かれた内容に目を通し始めた。
『邪神のことについて瓦礫の悪魔から聞いたことと私が知っていることを簡単にまとめるわ。』
まずあなたたちが邪神と呼んでいる悪魔は私たち悪魔の間では「暗闇」と呼ばれている悪魔よ。まあ暗闇に関しては私も名前とでたらめな強さをしているっていうフワッとした情報しか知らないけどね。
そしてここからが本題よ。暗闇の所在地について瓦礫の悪魔を問い詰めたんだけけど、正確な居場所は知らないみたい。
でも、特定する方法については吐かせたわ。
その方法はこの世界にある6つのポイント、正確にはそこにいる特定の強力な悪魔から印を奪って全て揃えること。(印は小石に紋章が入ったものでカレンに渡してあるわ。)
これが「暗闇」に挑む資格になるらしいわ。
それと名前だけは判明したからここに書いておくわね。
・補食の悪魔
・嘆声の悪魔
・瓦礫の悪魔
・欺瞞の悪魔
・濃霧の悪魔
・反逆の悪魔
また何かわかったら送って上げるわ。
なんでかって?それはね私がカレンとソラのことを気に入ったからよ。たぶんとなりにいるメグとかいう人の話を聞かない人は嫌いだけどね。
じゃあまたね!会えることを楽しみにしているわ!
読み終えたソラは顔を上げ…
「こっこれ!すごいじゃないですか!?というかもうすでに1個手に入ったってことで!えとえと!あと5個ってことですよね!このまま残りも頑張りましょう!」
そう落ち着きない様子で嬉しそうに言ったソラへカレンは笑顔を向けつつも口にする言葉は重かった。
「そうね、残りもさっさと集めてしまいましょうって言いたいところなんだけど…居場所がわからないのよ。だからこの広い世界をくまなく探すとかしか方法がないのよね…それとどんな能力かもはっきりしてないし…」
「でもそれは今回だって似たような…」
「あれはメグがサーヤを斬ろうとした結果、邪魔してきた悪魔が偶然私たちに必要なやつだっただけよ。この報告書を読むまで邪神にたどり着くための手段なんか知らなかったわけだし、事前準備ができるならしっかり準備してから行くわ。実際メグが危なかったわけだしね。」
「うぐっ!それはそうですね…」
カレンに言われてちょっとだけしょんぼりしてしまったソラをチラッと見たクレイスが今度はメグのほうを見る。
「というかだ。その話に関係して俺は言いたことがある。メグ、お前が強いのはわかってるけどいい加減悪魔を見たら手当たり次第仕掛ける癖直せ。その…ちょっとは相手の出方を観察してとかあるだろ。お前のその癖が仲間を危険にさらすこともあるんだから…」
その視線に気がついたソラがそちらへと目線を向けるとクレイスにそう言われたメグが無事な方の拳を強く握り、下唇を軽く噛むのがわかった。
「そうだと思う…それは反省する。でも悪魔は許せない…だから斬って斬って斬りまくる。」
メグが静かに放ったその一言はなんというか力を持っていてソラはそれを強い怒りだと感じた。
「メグ…」
ソラが心配そうに声をかけようとしたがその前にメグはこれ以上の詮索はしてほしくないのか少し強引に話題を変えてくる。
「大丈夫、これからは気をつけるから。そうだソラにお礼を言いたい人がいる。立てるならついてきて欲しい。」
「はっはい!立てます大丈夫です!」
「ん…ならついてきて。」
少々強引な話題転換に驚いたようなソラの返事を聞くと素っ気なくそれだけ言い残してメグは踵を返し部屋から出て行ってしまった。
「あの…メグって過去に何があったんですか?」
「まあいろいろとね…今度また話してあげるから今は行ってきなさい。」
ソラはカレンとクレイスに遠慮がち聞いてみるがカレンは首を横にふるふると振ると言葉を濁し、メグに着いていくように促す。
「わかりました。」
そんなカレンの様子にソラは食い下がらず、素直にそう答えると立ち上がりそのままメグの後を追うように部屋を出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます