2章 元カノの夫、現る。

1.飯田茉侑子②

続・未冬

『本当にごめんなさい!!』


 という文が、スマホの通知欄にポップしてきた。


 未冬みふゆだ。


 二週間くらい前だった。未冬から、私の28歳の誕生日を直接祝いたい、という旨のメッセージが送られてきたのは。

 生後六ヶ月の赤子の母親がなに言ってんだ、と思って一度は断ったものの、未冬が一度言い出したことをすんなり曲げるはずもなく、『すーくん(夫)にこーくん(息子)見ててもらうから大丈夫!』などと言われて押し切られてしまった。


 結局私は、それが本来の形であったかのように、自然な結果として『未冬の友人』に戻った。戻ってしまった、といった方が正しいか。

 一度は私から離れてゆき、男性と家庭を築いて母となった未冬。元恋人という立場である自分が、そんな彼女の友人の顔をして立つことになる。そのことが、果たしてどんな悪影響を及ぼすか分からず、鉛のように重たい懸念がみぞおちの辺りに溜まっていた。

 けれども、心のどこかでこの状況を喜んでいる自分がいるのもまた憎い。

 未冬はまだ、友人としての私なら必要としてくれるんだ、って。

 それが馬鹿な考えであるのは分かっている。本当は恋人という関係性を維持したまま、何の心配事もなく穏やかに過ごしていたかったに決まっているし、それが叶わないなら、せめて過去の人間として関わらずにいてくれればよかった。

 しかし、そう割り切らせてくれないところもまた、未冬が未冬たる所以なのかもしれないと思ったり。


『誠に申し訳ないことに、急に体調を崩してしまい、どうしても茉侑子まゆこのお祝いに行けなくなってしまいました……』


 未冬からのメッセージが続く。

 それならそれで、べつに良いと思った。もともと断ろうと思っていたことでもあったし。

 いいよ気にしないで。お大事に──そう入力しようとしたところで、次の文が来た。


『代理としてすーくんを向かわせましたので、仲良くしてあげてください!』


「嘘でしょ?!」


 危うくスマホを落とすところだった。


──元カノわたしの誕生祝いに夫を寄越すつもり!?


 さすがに冗談であってほしい。……が、未冬の性格を思うと、これも冗談ではないのだろう。

 つくづく、私って報われないよな。


 しかも『向かわせました』と過去形で綴られているのが最悪。

 頭が痛くなってきた……。

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