夫婦の契り

夫婦の契り①

「姫様、物凄くお似合いで御座います…っ!!」

「ありがとう、梅」

「お前達、口よりも手を動かしなさい!」

「「はい!!」」

「全く…姫様、私はこの日を待ち望んでいました」

「ばあや…」

涙ぐむばあやを見て、私も胸が熱くなった。

────そう、 今日は私と彼らの祝言、基に夫婦の契りを結ぶ日。

今、私は白無垢姿。

「祈音…どうか、幸せになりなさい」

「…はい、御祖母様…!」

「姫様!間もなく時間です!」

「はーい!」


シャラン、シャラン。

鈴の音と共に舞うのは、神之原一族分家の娘達。

神之原一族に代々伝わる神楽舞を天帝達に奉納し、花嫁及び花婿達の門出を祝ってもらうのだ。

「花嫁様の御成りです!」

私の姿を隠していた御簾が、上げられる。

途端に、辺りは静寂に包まれた。

「美しい…」

「母君に、なんと瓜二つなのだ…」

そんな呟きが聞こえる。

「わぁ〜…!」

「別嬪はんや…」

「……ふん」

「兄様には劣るけど、まぁまぁだな」

「愛らしい姿だ…」

「綺麗…」

ふと、御兄様が目に入った。

「祈音…」

つぅ…と涙を静かに流す御兄様。

「っ、」

涙が出そうになるのを、私は何とか耐えた。

祝言は無事に終わり、いよいよ夫婦の契りを結ぶ時を迎えた。

天帝達に、私…花嫁が花婿達と夫婦となることを誓うのだ。

とくとくとく…と朱塗りの盃に、御神酒が注がれる。

これを花嫁、花婿全員が盃を合わせ、乾杯する。

そして飲み干す。

そうすれば、夫婦の契りは結ばれるのだ。

「……」

「祈音ちゃん、心配しないで」

「え?」

囁き声で、私に話し掛ける緋兎くん。

「僕達が、祈音ちゃんを死んでも護るから」

「…うん」

にへ、と笑う緋兎くんに、私はホッとした。

「では…乾杯」

7つの盃が、ぶつかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

八百万の神々に愛されし少女は天帝遣也 中太賢歩 @YAMI_SAKURA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ