エピローグ
後日、小島先生から電話をもらった。いわく、彼女は、仕事の合間を縫って夫の仕事仲間だった人に会いに行き、夫やスイーツの話を聞くようになったらしい。そのほうが夫も喜ぶから、と言って彼女は笑っていた。彼女なりの供養なのだろうと私は思った。
「そういえば、あの日、司書の相楽さんは結局戻ってこなかったわね」先生は言った。
「あー」その点については、謝らなければならないとずっと思っていたことがある。
「実は、言おうと思っていたのですが、その」言いにくい。私は意を決して告白した。
「私が司書の相楽なんです」
「どういうこと?でも、あなたの名前は、たしか荒井」
「母の騒動があってから、名字を変えたんです。私の今の名前は『相楽しおり』で、この高校の、新米司書教諭をしています。自分でいうのもあれですけど、かなり童顔なので。高校生に間違えても無理はないですが」
私は苦笑した。先生に昔の自分を知っていると言われ、咄嗟に嘘をついてしまった。あとで種明かしして驚かせてやろうとも思ったけど、俳句の謎解きで完全にタイミングを逸したのだ。
「ええ・・・そんな」戸惑う先生の横から、無邪気な声が割り込んだ。
「なにー?ママ、誰と話してるの?」
「こら、さくら。ママは今大事な話をしているんだから、あっちで遊んでなさい」
「・・・はーい」
先生の娘さんだろうか。あどけない声の中に、いつかの自分と同じ寂しさを感じた。そして私は気がつくとその子に尋ねていた。
「ねえ、さくらちゃん。流れ星が消えるまでに読める文学って知ってる?」
十七音の真相 夜野あさがお @asagaoooo
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