第42話 罪と罰
「ごめんね、せっかく話を聞いてくれたのに……」
「本当にすまない。
例の
しかし、犬の色は黒ではなく白。
いや、
数時間前――、
……
…………
………………
――ワンッ! ワンワンッ!
「ロク!?」
幽子が
ロクは
――ワォォォォーン!
ロクの声を聞いた双頭の犬はしばらくの間ロクと
幽子と一郎は
数分ほど両者は睨み合った後、双頭の犬がその場に
『お座り』のポーズを取った双頭の犬からはもう
体毛も黒から白へと変化し、怒りで
――同じ
――話を聞こうじゃないか。
二人の心に直接そんな言葉が
犬が耳を
――
――完全に
――そうなった場合、天国にも地獄にも行くことなく
――殺された犬たちの
――二度とこのようなことをしないよう
――だからこの場は
二人を信用した双頭の犬はコクリと
説得による
………………
…………
……
そして現在――、
再び現れた双頭の犬は怒りに
約束は
――もういい。
――もう十分。
二人の心にそんな声が届いた。
ハッとした二人が顔を上げると、双頭の犬の姿はどこにも
「幽子、あの犬はどこに?」
「
「そっか、良かった」
「私たちにできることはもうないわ。帰りましょう」
「そうだな。ロク、帰ろう」
――ワンッ。
二人と一匹は車に乗り、武山邸を後にした。
自宅まで残り半分となったタイミングで、一郎はある
「そういえば、何であの犬は成仏したんだろう?」
自分たちは全ての約束を守ることができなかった。
墓を
「八割は守ったから、まあいいやって思ってくれたのかな?」
「違うわ」
「え?」
「霊たち
「ああ、そうだな。じゃあ何で?」
「多分、確信があるんでしょうね」
「確信? 何の?」
「自分がやらなくても、いずれ誰かがやるだろうって」
……
…………
………………
『こんにちは~♪
――ぷるぷるだよ~♪
――REIKAブランドの商品マジ神。
――あれ? REIKA
『ええ、そうなんです。実は実家から配信してるんですよ』
――そうなんだ。
――どうして?
『んー、プライベートなことなのでそこは
――えー、知りたいよ~。
――REIKAのプライベートが知りたい。
――プライベートじゃなくてもいい。
――何か教えて?
――新しい情報カモン♪
『え~? じゃあ、そうですね~、この前私が
――え? マジ?
――超テンション上がるぅ~♪
『今日
――ピンクのクリーム。かあいい♪
――うん、かあいい。
――今入ってきた犬もかあいい♪
『え? 犬?』
しかし、
――REIKA犬かわいいね♪
――いっぱいいるけど何匹
――さすが実家が太い。
『い、いっぱい……? うちは犬なんて飼ってませんよ!?』
――え? またまた~(笑)
――じゃあそこの犬何?
『だ、だからどこにそんな犬……!』
――だからそこだよ。
――REIKA後ろーっ!
――あ、何かめっちゃデカい犬が入ってきた。
『え? え?』
――っていうかこれマジで犬なの?
――ありえんくらいデカい。
――何か合体してね?
『あ、あぁ……』
ようやく麗華にも犬の姿を見ることができた。
大きさは二メートルほど。
その
麗華は
「キャアアアアアアァァァァァァッ!」
――え? これ
――放送事故?
――んなわけねーだろ。
――こんなデカい犬がいるか。
――でもREIKAガチでびびってない?
「こ、来ないで! 来ないで! 来るな! 来るんじゃねえ!」
手当たり
さらに何かを投げつけようと近くにあったものを手に取る麗華。
それがスマホだと
ツーコールもしないうちに電話が
『もしもし? どうしたの?』
『どうしたじゃねえ! な、何でまた幽霊が出るの!? あんた
その
思ったよりも早かったな。
幽子は心の中でそう思いつつ、麗華からの
『私は除霊なんてしてないわ。私がしたのは除霊じゃなくて
『浄、霊……?』
『
『はぁ!? な、何で祓わなかったわけ!?』
『
あんな
『私は何の
『そ、そんな……』
『ましてや、今回みたいな美容のためとかいうクソくだらない上に、自分勝手な理由で命を
悪を
『説得に応じたって今言ったわね!? じゃあ、何で今目の前にいんのよ!?』
『多分別の犬なんでしょ』
武山邸を
『あなたを襲った犬の霊は
『別の……霊?』
『そう。心当たりない……わけないか。エリザベート=バートリー
犬の血で
犬の肉を
『武山さん、あなた私たちにペットと
『え、ええ……』
『ペットは人間と
犬と猫、牛と豚の違いはそこだ。
同じ動物でも進化の
『共に
『じゃ、じゃあ、私がしたことは……』
『エラー出まくるに決まってるでしょ。レトロゲームで
そんなことを
壊れた
『新しく犬の幽霊が出たってことは、あんたまたやったんでしょ?』
『や、やってない! あなたたちに言われてからはもう!』
『本当に? よーく思い出して?』
『本当にやってない! 神様に
そう口にした時、麗華は
今日の配信で
『こ、こここここここ…………!』
これだ、間違いない。
豚の血や
近いうちに発売しようとしていたこれが、こんな
『心当たり、あったみたいね』
『た、たたたたたたた……助けて物部さん!』
『
『どうして!?』
『だって私も一郎くんも、あなたの実家の場所を知らないもの』
『あ……』
『そもそも今から行っても間に合いそうなの? 車で何十分かはかかるんじゃない?』
『そ、それは……それはぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!』
『……
『は、はい……!』
自分が助かる方法はもうそれしかないのだから。
麗華は
『そ、それでどうすれば……!?』
『新しい犬の幽霊、その子たちの肉体をちゃんと
『………………はい?』
『だから! 新しい幽霊たちの肉体を、一つ一つお墓を作ってきちんと弔ってあげるの! あなた自身が心を
幽子の言葉で一瞬で覚悟が
そんなことは
今から全て回収して弔うなど物理的に不可能。
つまり――
『そ、そそそそそそ、そんなの無理! 今すぐ来て! 助けて! 私を助けろ物部幽子ォーッ!』
『だから無理って言ってるでしょ! あんた自身でやらなきゃ――』
『無理って言ってるだろ! いいから来い! 金なら払う! いくらでも払うから助け――』
――バキャッ。
麗華のスマホが砕け散った。
目の前まで迫った巨大な犬の霊が、目にも止まらない速さで『お手』をしたからだ。
超高速のお手は麗華の
「あぁーーっ!?
そしてゆっくりと、人間を
「ひっ…………」
口の中には無数の
麗華は
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……! 私が悪かったです!
――いいよ。
――命だけは助けてあげる。
「あ……」
麗華の心の中に霊の声が届いた。
心なしか巨大な犬も、口の中の無数の目も笑っているように見える。
よかった、助かる。
麗華は
――命だけは。
「え?」
バクリ――と巨大な犬の霊が麗華を丸呑みにした。
麗華は
巨大な犬の霊の
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