第3話
「さて、戻ってきたは良いが、したい事が無いな」
教室に戻ってきて自分の机のイスに座ってどうしようか悩む。
スマホを弄るにしても、今は調べたい事も読みたいモノが無い。このままチャイムが鳴るまで寝るのも悪くないかもしれない。
「なあ宮坂。ちょっと良いか?」
「なんだ?」
なんてボーっと考えていたら誰かに声をかけられた。感じ的に俺に用があるみたいなので振り向いたが、何なんだろうか?
「文野さんの事なんだけどよ」
「文野が何なんだ?」
「いや、なんでお前、文野さんのメガネを外した姿を見ようとしないのかって思って」
どうやら目の前の男は俺が文野のメガネを外した姿を見ようとしない事についての疑問を抱いてるみたいだ。
今の文野の取り巻く環境はメガネを外した姿を見たいに集約してる中で、俺はその真逆を走ってるようなものだから、気になるって事だろうか?
まあ答えられない内容じゃないから、答えるとするか。
「んー、単純にメガネの有無で文野が変わるわけじゃ無いから?」
ただ面白い内容なんてものは無く、メガネでのアレコレに興味がないってのが大きいが、一番はコレだ。
メガネの有無で文野が変わる訳じゃない。
「それはねーだろ。あ、もしかして宮坂の前では外してるから見慣れてるとか?」
「?俺の前でも外さないぞ文野は」
「ん?そうなの?てっきり宮坂の前では外すのかと」
「そういうのは無いな」
俺の前では外すといった特別性も無く、ただただメガネをかけた日常を過ごしてるのが実情だ。
「確か幼馴染だっけ?仲が良いのは見てて分かるけど、それでも見せないんだな」
「見せろーって言う気も無いしな」
「ま、今はその無関心さが文野にとってはありがたい状態だろうけどな」
「うんまあ、最近はちょっと暴走気味でヤバいよなって思う」
文野が抵抗するからと悪くいう訳では無いけど、見せない態度が余計焚き付けてしまってるのか、あの手この手でメガネを外させようとするのが目立つ。
勧めてダメだったので引き下がるのはまだ良いが、今日だとコンタクトレンズの実演を見せて断れない空気を作ったりと逃げ道を塞いでてちょっと危険に感じる。
「人の噂は七十五日って言うけど、さっさと落ち着いてくれと思う」
「お前みたいにメガネ云々に興味が無いのが他にもいるし大丈夫だろ」
「甘ーい!」
俺たちの会話を横から割り込む様に、男が大声を出して乱入してきたから面食らった。突然の大声を近くで聞いたからか耳が少し痛く感じる。
「宮坂は全く分かってない!メガネを外した方が良いに決まってる!」
「……その心は?」
「三大美女の1人の素顔を見れるんだぞ!見たいに決まってるだろ!」
なんだその三大美女って。
まるで後付け設定の様に突然生えてきた、聞いたことの無い言葉を聞いたもんだから、困惑してしまった。
「そんな三大美女の1人と幼馴染のお前だからこそ頼みたい事がある!宮坂からコンタクトレンズにするよう言ってくれ!じゃあな!」
「あ!おい!」
断る間もなく、言いたいことを言うだけ言って、嵐のように過ぎ去って行った。
なんだったんだアイツ。
「第一、なんだよ三大美女って……聞いたこと無いぞ」
過ぎたことは仕方ないし、次に疑問に思うのは三大美女だ。Bが三大美女?確かに可愛いと思ってるけども。
「あぁ、それ?」
「知ってるのか?」
「まあね」
内容としては誰にでも優しく接し、セミロングなボブの黒髪は大人しさと知的に感じさせる、メガネをかけた女の子。
これが文野の三大美女としての内容だそうだ。
「残りの2人はどうだ?」
「興味無い」
「言うと思った。まあ大食いっ娘と高飛車とだけ覚えとくと良いよ」
「分かった」
いつの間にか時間が来てたのか、昼休憩の終わりを知らせるチャイムが鳴った。
「またな」
「へーいまたな」
そう言って、えーっと、一条は自分の席に戻って行った。
三大美女はどうでもいいが、なんとなく、噂は終わりそうにない。そう思った。
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