第2話

「メガネからコンタクトレンズに変えたらどうよ?」

「そーそー、メガネって壊れたらしばらく使えないけど、コンタクトなら付け替え可能じゃん?」


良くも悪くも開発されて世に出回ってるからこそ言えるのだろうアイテム、コンタクトレンズを勧める声が増えてきた。

メガネから裸眼では視界の悪さから考えて厳しくて断れても、代替品があるのならその言い訳も厳しくなる。


「えーっと、ほら、使い慣れてないもの使うのは怖くてさ」

「そんなの最初のうちだけだって」

「そーそー、慣れたら余裕だよ」


そう言いながら、見せつけるようにコンタクトレンズを外してみせて問題無い事をアピールしている。実際に使ってる人が大丈夫と言ってたら断る理由が無くなっているのか、言葉が見つからなくてBの目が泳いでるように見える。

とはいえ、俺は俺で用があるから、この状況を放置できない。


「おーい文野、部長が呼んでんぞー」

「え?分かった。そっち行くー……その話はまた今度」

「あ!」

「あーもう!あのガード面倒だなぁ!」


文野が所属してる本愛好家部の部長の呼び出しの代わりを頼まれたので文野を呼びに来た。コレ幸いとばかりに逃げるように文野は俺の所にやってきて部長がいる所に一緒に向かう。

引き剥がされた男たちからはガード呼びしてきてるが、確かにここ最近、何かと文野を呼びつけて引き剥がしてメガネ云々を有耶無耶にしてるからガードかもしれない。


「助かったよ宮坂」

「良いってことよ」

「で、部長呼んでたの?」

「プロット作りで苦しんで逃げてる」

「つまり呼んでないのね」


文野が呆れたような声を出して俺をジト目で見てきた。

本愛好家部の部長には悪いが離れる口実作りに利用させてもらった。

実際、文野が所属してる部長はネタが出なくて苦しんでるし、時間があればネタ出しの協力を常に求めているから嘘は言ってない。


「コンタクトレンズを勧めてくるとは思わなかった……」

「まあ真っ先に思いつく代替品だけどな」

「うー……」


文野は俺の言葉に対してうねる様な声を出してるが、メガネの代わりになる物があるとしたら真っ先に思いつくのはコンタクトレンズしか無いだろう。


「ま、このまま行かなかったら面倒だから部長の所に行こうぜ」

「……そうする」


どう言い訳するか悩みながら、3年生の教室にまでやってきた。

あの騒動は2年生の間で起きてるだけなのか、3年生の方ではメガネで云々は出てこなかった。


「部長、今は何のネタ出しに困ってますか」

「んー、文野ちゃんか。そうだねーメガネキャラ」

「なんでまたタイムリーな……」

「君の騒動自体は3年生でも聞こえはしてるからね、そのついでだ」


騒動自体は3年生にも及んでいたようで、文野はげんなりしてる。ある意味学年の有名人にされてるからか。

ただ進路の事で先生と相談してたり、パンフレットを睨めっこしてたりと、進学や就職でそれどころでは無いのかもしれない。


「それはそうと部長、コンタクトレンズにしない良い理由、無いですかね」


ここ最近の押しに参ってるのか、文野は救いを求めるように部長に良い案を求めた。

正直俺だと案がない。


「簡単だろ、それオーダー性だから安易に変えられないって言えば良い」


即座に対応した。オーダー性なら確かにそう安々とは変えられないし、良い手段だ。


「オーダー性……あ、そっか」

「……それ、まさか市販のすぐに買えるメガネか?」

「えぇ、まあ、はい」

「バレないようにな」

悟られないように言われて、一先ずの言い訳は思いついた。

俺はこのまま帰っても良いが、それだとまた文野はメガネ云々で振り回されそうだ。どうしたもんだかと考えるが、コレと言ったものが無い。


「宮坂は先に帰る?私このまま部長のネタ出しに協力する」

「ん、分かった。じゃあな」

言い訳を作ってくれたお礼か、文野はこのまま部長に協力するそうだ。

俺はそういうのには興味が出ないし、このまま教室に戻ろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る