7 マチオと初心者ダンジョン3

夕飯を腹いっぱい食べることができ、藁ではなくきちんとベッドで寝ることができた。

なんとありがたいことか。


翌日、マチオは幸せな気分で目を覚ました。


顔を洗い、身支度を整え、1Fの食堂エリアに向かう。

昨日は空腹に気を取られ気づかなかったが、冒険者風の宿泊客が何人も座って朝食を取っていた。

マチオは窓際の空いているテーブルに腰掛けると、

窓から見える通りを身ながらルイーゼを待った。


「マチオ様。お待たせしましたぁ!」

振り向くと、昨日購入したローブを纏ったルイーゼが立っていた。

「どうですか?おかしくないですか?」

マチオの前でくるっと1回転する。

ルイーゼはお世辞抜きに可愛い。

若かったらお付き合いをしたいところだ。

「いいな。似合ってるぞ。」

「そうですか。テヘヘ。」ルイーゼが照れながら椅子に座る。

うん。すごくかわいいぞ。

マチオは胸元の刺繍が目に入った。

視線に気づいたルイーゼが言った。

「ん?この刺繍ですか?これセレファ様のマークなんです。」

「セレファ様?」

「はい。セレファ様。

 わたしに加護をくださった女神様です。」

「女神様・・・ね。」

マチオは泉で出会った残念女神様を思い出していた。

たった2日前のことなのに、色々ありすぎてずいぶん前のように感じる。

名前は聞かなかったが、あの残念女神様は元気だろうか。


「わたし、回復魔法使えますよね?・・・まだレベルは低いですけど。

 で、回復魔法は教会で女神様の加護を受けて、女神様からいただくんですけど、

 人によって、加護してくれる女神様が違うんですね。」

「ルイーゼの場合は、それがセレファ様と。」

「そうです。なので、昨日洋服屋で見つけた時にどうしても欲しくなっちゃって・・・。」

「似合ってるし、ほんとうに、買ってよかったな。」

「はい!」ルイーゼが笑った。


2人は朝食を食べながら、本日の予定について話していた。

「できれば、1階層のボス部屋に挑戦する前にあと1つぐらいレベルを上げておきたい。

 そうすれば、少しは余裕をもってボスと戦えるんじゃないかと思うが。」

「そうですね。わたしもレベルを上げておかないと辛いと思いますので。

 まだ行っていないエリアもありますし、今日も1階層でレベル上げしましょう。」

「何か買って行く物はあるか?」

「そうですね。いざという時の為にHPとMPのポーションが欲しいですね。

 ただ、どちらもちょっと高いんで、悩むところです。」

「安全にお金をケチったらいけないからな。これは買っていこう。」


2人は薬屋に立ち寄りHPとMPのポーションを1つずつ購入すると、ダンジョンに向かって出発した。


2人はダンジョンを進んでいたが、まだリスポーンしていないため、

昨日スケルトンソルジャーと戦った広間までモンスターに遭遇せずに辿り着いた。

広間には出入口が、今マチオたちが来た入口を含めて3カ所ある。

「さて。ここからだな。」

「ですね。こっちの道が正解。あっちがハズレの道になりますね。」

ルイーゼが地図を見ながら言う。


2人は予定通り、躊躇なくハズレの道の方へ進む。

道を進み程なくして、ゴブリン3体と遭遇。

ルイーゼの魔法を温存したまま、マチオが3体とも難なく木刀で一刀両断する。

続いて、スケルトン1体と遭遇したが、こちらもマチオが難なく倒す。

さらに、ゴブリン2体とスケルトン1体。

ゴブリン1体をルイーゼが倒し、残りをマチオが倒した。

それにしてもこの木刀は強い。

場所はともかくとして、とりあえず当たりさえすれば、異常な破壊力で撲殺できる。

残念な女神なのはともかくとして、加護っていうのは凄いんだな。

マチオは木刀を見ながら思った。


そうこうしているしている間に広間手前までたどり着いた。

音を立てないように気を付けながら中を覗き込むとスケルトンが2体が部屋の中心付近に立っている。

1体はスケルトンソルジャー。もう1体がボロボロのローブに杖を持った魔法使いと思われるスケルトン。

「あれはスケルトンメイジですね。物理攻撃はさほどではないですけど、魔法主体で攻撃してくるらしいです。」

ルイーゼが小声で耳打ちをする。

「やっかいだな。どちらも1対1であれば倒せると思うが・・・。

 さて、どう攻めようか。」


2人はスケルトンに気付かれないように静かに入口を離れ、少し離れた曲がり角に戻った。

広間の入り口の向こうにスケルトンメイジの姿が小さく見える。

マチオは木刀を持ったまま曲がり角に背を付け隠れる。

ルイーゼは曲がり角に隠れながら詠唱を開始する。

詠唱が完了すると、杖の先端がほのかに発光する。

マチオとルイーゼは無言のまま頷くと、ルイーゼが静かに通路に立ち、見えるスケルトンメイジに杖の先端を向けた。

「ファイアボール!」

ルイーゼが魔法を放つ。

音も無く火の玉がスケルトンメイジに向かっていく。

スケルトンメイジは声の方に体を向けるが、反応が遅れ、ファイアボールがスケルトンメイジに直撃した。

スケルトンメイジが炎に包まれる。

が、スケルトンメイジは動じることなく杖を構え詠唱を開始する。

それに呼応するかのように、通路にスケルトンソルジャーが走りこんできた。


「すみません。わたしの魔法じゃ、1発では倒せないみたいです!」

ルイーゼがマチオの背後に後退する。

「分断できただけで十分だ。ここからはオレの出番だ。離れてろ。」

マチオはぐっと木刀を握りしめた。


がしゃんがしゃんと音を立てながらスケルトンソルジャーが接近する音がする。


今!


マチオが木刀を横なぎに振り始める。

その瞬間、曲がり角からスケルトンソルジャーが姿を現す。

スケルトンソルジャーはマチオを視認するが、時すでに遅く、木刀が背骨に直撃し、背骨を粉砕した。

あっけなく絶命したスケルトンソルジャーは力なく骨がばらばらと崩れ落ちる。

「我ながら卑怯だな・・・。この勝ち方はちょっと心が痛むな。」

「卑怯も何も。勝てばいいんですよ!」

ルイーゼが満面の笑顔で親指を立てた。

「そういうもんかな?」

「そういうものです。」


「さて、もう1体だな。すでに詠唱は済んでいるみたいだし、どうするかな。」

足音がしないことから、スケルトンメイジは広間から移動せずにこちらを迎撃するつもりなのだろう。

どうせなら、こちらに誘導できればよかったのだが。


その時、足元にスケルトンソルジャーが落とした鉄の盾が見えた。

「使ってみるか。」

マチオは鉄の盾を手に取る。

分かってはいたがずっしりと重い。ただでさえ遅いスピードにさらに制限がかかる。

今のマチオのステータスでは満足に使えないことは明白だった。


「一撃入れてくる。できる限り魔法はこの盾で防ぐつもりだけど、この通り、あんまり動けないんでな。たぶん怪我すると思うから終わったら治療をしてくれ。」

マチオはルイーゼに向かって言う。

「心配はしていませんが、無理はなさらないように。ご武運を。」


マチオは盾を前面に構え通路に立つ。

途端、スケルトンメイジがファイアボールを放つ。

マチオは冷静に盾でファイアボールを受け止める。

炎が爆散し、マチオを覆う。

熱っ!

盾で防がれていない部分を炎が通り過ぎる。

でも今のは我慢できない程ではない。

マチオはじりじりとゆっくりと歩を進める。

本来なら走りたいところではあるが、盾を持った今はこれが限界の速度であった。


スケルトンメイジが2発目のファイアボールを放つ。

幸いにもファイアボールには当たった時の衝撃はあまりない。

マチオはゆっくりと歩を進めながら確実に盾で受け止める。

ぐっ!

次のは熱かった。

肩口とズボンを炎が焼き、素肌が露出する。

炎が通過するのは爆散するときの一瞬だけなのだが、なにせ炎の勢いは強い。

マチオは痛みで涙が出そうになるのをぐっとこらえて歩を進めた。


もう少し。


ファイアボール3発目。

盾で受け止めると同時に、マチオは広間へ足を踏み入れた。

さらに服は燃え落ち、肌が露出する。

「熱いんだよ!テメェ!」

マチオは盾を投げ捨て、木刀を正面に構えながらスケルトンメイジに向かって走る。

スケルトンメイジは次の詠唱をスタートするが、盾を捨てたマチオの方が速い。

「ぐらあああああああああああっ!!!」

マチオは全身を使って怒りを込め頭蓋骨に向け木刀を突き刺した。

木刀を突き刺した部分からバラバラに粉砕する頭蓋骨。

それに呼応するように全身の骨がばらばらと崩れ落ち、

最後にひらひらとボロボロのローブと杖が地面に落ちた。


イテテテテ。全身がヒリヒリと痛む。

肌が露出してしまったところが、赤く火傷をおこしている。

マチオはふぅと溜息をつくと、片膝をついて座った。


ピロリロリン♪


名前:マチオ

職業:農民

レベル:5

HP:22

MP:15

STR:11

DEX:8

SPD:5

魔法:なし

スキル:なし

武器:木の剣(攻撃力:1+※▼☆)

防具:布の服(防御力:0)

   布のズボン(防御力:0)

   布の靴(防御力:1)


お。レベルが上がった。

スピードも上がった。

目標のレベルに到達したし。これでボス部屋に挑戦できるな。

レベルアップのおかげで火傷が治癒されていく。

とは言え、完治されたわけではなく、あちこちに火傷が残っている。


っていうか、ただでさえ紙装甲だった布の服が防御力0になってる。

確かに、ズボンが半ズボンになっちゃってるし・・・。

シャツも袖が取れ、あちこち燃えたりしてるし。

よく火傷だけで済んだな。


「マチオ様!大丈夫ですか?!」

ルイーゼが駆け寄ってくる。

「ああ、大丈夫だ。

 ただレベルアップでは治癒しきれなかった火傷があるんで、回復魔法かけてくれたら助かる。」

マチオが立ち上がる。

「きゃあ!」

ルイーゼが顔を手で覆う。

「え?! あ~~~~っ!」

マチオが自分の下半身を見回しすと、


お尻に大きな穴が開いていた。

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