某俳優の告白
第11話
眠る
食べる
仕事する
眠る
食べる
仕事する
咲羅と離婚したあとはそれだけを繰り返していた。
仕事はした。
ただ仕事の仕方は変えた。
力が欲しかったから。
もう二度と誰にも俺を利用させないと決めたから。
橘斗真の妻が自殺したらしい。
そんな投稿を俺は信じていなかった。
咲羅はそんな女じゃないし、SNS上が嘘ばかりだと身をもって知っていたから。
それに、もし本当なら咲羅の家族が黙っているはずがない。
だから大丈夫。
咲羅はあの家族に囲まれて幸せに暮らしている。
そう信じられるくらい咲羅の家族は愛に溢れていた。
施設で生まれ育った俺にとって咲羅だけが家族。
そう思っていたのに咲羅の家族はその大きな器で咲羅ごと俺を家族として受け入れてくれた。
咲羅と家族ではなくなった。
離婚届を出せばそうなのだけれど、紙切れ一枚を役所に出しただけで『離婚した』という感覚など感じるわけがない。
そういう実感はあとからくるんだ。
――― ご家族以外に患者の容体は教えられません。
病院に咲羅の様子を尋ねようとしたら「すみません」と断られた。
ああ、俺は咲羅の家族以外になったんだって。
堪えた。
教えてもらえないと分かっていても、俺は毎日病院に通った。
撮影の都合で朝早くとか夜遅くとかもあったから、病院内に入れず咲羅のいるであろう病室の窓を外から見ているだけのときのが多かったけれど。
咲羅の入院期間は俺の想像よりかなり長かった。
それほどの心労だったのだ。
退院する日、俺は病院にいった。
俺に同情してくれたのか、看護師が彼女の退院日を教えてくれた。
咲羅の家族が総出で彼女を迎えにきた。
その姿を道を挟んだところで、隠れるように見ていた。
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