社会人二年目の僕

 入社二年目になり、僕の居場所は突然無くなった。

四月、僕は突然僕以外の女性社員二人から無視されるようになった。

 原因は分からなかった。三月最後の日、つまり昨日までは普通に話していたのに、今日になっていつもの様に挨拶をしたら無視された。

 最初は気のせいかもしれない。もしかしたら調子が悪いだけかもしれない。なんて考えていたが、一週間経っても一か月経っても状況は変わらなかった。

 むしろ悪化さえした。

 最初は仕事の話は嫌そうな態度しながらでも答えてくれていたのに、一か月も経ったら仕事の話でさえも無視される様になった。

 僕は、聞かなくても独りで解決できるようにならないといけない状況になり、情報収集をひたすらに頑張り、夏頃には係長から現場を独りで任せてもらえるくらいには成長していた。

 その時期から無視だけでなく、聞こえる悪口を言われる様になっていた。

 すれ違いざまに「気持ち悪い」「死ね」「うざい」「媚び売りやがって」等と言われた。

 それでも必要とされているのが嬉しくて負けないように、気にしてない風を装って頑張った。


 そんなのも長続きするはずもなく、夏の終わり頃僕は会社を休みがちになった。

 休むようになって喫煙所を利用するパートのおばさんに「あの人、君に嫉妬してたみたいよ。〝自分より後に入ってきてましてや、中途採用から会社に頼まれて正社員になった私と違って敷かれたレールの上を歩くだけの新卒ごときが課長達にちやほやされて現場任されて、何が次期主任だよ。調子乗ってんじゃねぇよ〟って言ってたわよ」と教えてもらった。

 僕は、頑張った分だけ自分の首を絞めていたことに気づいて自暴自棄になり会社に行けなくなった。


 二年目の頭に姉に誘拐される様にして同居を始めていた僕は会社を休んでいる間も家に居られなくて夜勤になったと嘘を吐いて他課の係長の家に逃げ込んだり、野宿をしてお昼に帰るという生活をして誤魔化していた。


 入社二年目の冬、一か月丸々無断欠勤した僕は流石に会社から呼び出しの電話があった。


 呼び出されて支店長や課長達と面談することになった。

 僕は四月から自分の身に起きたことを全て打ち明けた。

 支店長から返ってきた言葉は「あの人はそんなことする人じゃないよ」だった。

 僕がどんなに訴えても「君が嘘ついてるんじゃない?」としか言われなかった。

 違うと否定すればするほど支店長はイライラしていき、最終的に僕に「なんでお前はそういう態度かね?」と怒った。

 僕が……悪いの?

 段々僕は何が正しい事か分からなくなっていき、自分が悪いことを認めた。


 面談後、僕は係長の送迎有りで出社することを頑張った。


 面談の日、家に泊めてくれていた他課の係長に僕は「君の存在は出世の邪魔になる」と言われ、捨てられた。

 この人は後に皆からポンコツと呼ばれていた。出世どころか現在の地位も危うい状況だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る