第4話 佐藤の入部
そんな訳で今日は入部の日。放課後、私は囲碁部担当の教室に向かう。この学校では、入部するには、それぞれ、部が割り当てられた教室に行くイベントがあり、そこで正式な入部が決まる。私は早速囲碁部の教室、3-2に向かう。お隣の3-1、3-3はにぎわっていたが、3-2、ここだけ静まり返っていた。教室の扉は締まっており、この教室の中はすりガラスで見えないようになっている。本当にこの教室であっているのか。私は不安なまま、扉を開けた。
ん?黒縁眼鏡の見覚えのある顔。
「あっ!ダークネスゴッド!」
「なんだ。シュガーライトではないか」
「私は砂糖灯りではない。佐藤朱里だ」
「ちなみに我も今は志藤道雄であるが」
「知らんわ。自己紹介でダークネスゴッドのインパクト残しすぎなんよ」
「そうだったのか。そんなに目立ってしまったか。隠密に暮らす予定だったのだが」
おいおい、あの自己紹介で隠密はないだろ。いったい何者なのかさっぱり理解できん。っていうか、ダークネスゴッドと一緒な部活ってことは、私はこれからこの変人と仲良くならなければいけないのか。
「二人はお知合いですか?」
窓際に立っていた男の先生が尋ねてくる。年は40代中ごろくらい。優しそうな見た目に、穏やかな声。一目見て、いい人だとわかる。
「同じクラスです」
「そうなんですか。じゃあ、仲良くなれるといいですねぇ。でも、もう仲はいいのか」
いや、今日初めて授業以外で話しましたよ。そういって、私はダークネスゴッドの隣に座る。
「ここに学籍番号と名前を書いてほしいらしい」
そういってダークネスゴッドは紙をよこしてくる。上にはダークネスゴッドの筆跡があったのだが、字が汚すぎて読めねえ。古代文字並みに解読が難しそう。
「ねね、ダー、志藤君は囲碁経験者?」
「初心者だ。やったことなどない」
「あ、そうなんだ。じゃあ、なんで囲碁部入ったの?」
「人が少ないからだ」
この人も慈悲で入ったのか。意外といい人だ。
「ちなみに囲碁部をネッコ大戦争部にしようとしているのだが」
「いやいや、囲碁部乗っ取って、ゲームコミュニティ作ろうとすな」
慈悲もクソもないやないかい。ちなみにネッコ大戦争は、ネコのキャラクターが人間を倒していくゲームだ。私も弟がやっていて、私もたまにプレイしていたのだが、こやつもやっていたとは。
「志藤君は他に部活入らないの?」
「ふむ。とりあえず、ここだけにしようかと考えている」
「ふーん。中山君と一緒じゃないの?」
中山君は、私の隣の席の男の子で、入学式の日にダークネスゴッドと意気投合していた陽キャである。
「中山はサッカー部に入るらしい。我はサッカーは興味がない」
そうでしょうね。逆にサッカー部入ったらそれはそれで面白いだろうけど。すると急に扉が開く。男子三人が入ってきた。一人はガタイがでかく、もう一人は小さい。最後の一人は中くらいだった。
「入部希望者ですか?」
先生が尋ねる。三人はうなずいて、私の隣に座り、次々に名簿に名前をかく。
「今年は沢山入ってくれましたね。玉井先生」
優しそうな先生は隣にいた、仙人のようなおじいちゃん先生に話しかけた。玉井先生はうなずくだけでこちらを見たままだった。
「遅れてすみません」
ドアを開けて、入ってきたのは、先日の先輩だった。
「わあすごい。こんなに入ってくれた」
先輩は目を輝かせて教室を見る。
「早速今からやりましょうか。じゃあ、皆ついてきて」
そういって私たち5人は先輩にぞろぞろとついていく。ついたのは社会科資料室だった。
「ここに碁盤や碁笥があるから、取り出して使って」
私は、先輩が取り出したものをバケツリレーの要領でダークネスゴッドに渡していく。
全て取り出したら、さっきの教室にぞろぞろと戻った。
着いたら、机を向かい合わせにくっ付け、碁盤と碁笥を言われるまま並べる。するとダークネスゴッドに釘を指される。
「砂糖。石が黒と黒になっている。黒と白だぞ」
私は、並べた碁笥を見る。確かに、黒と白を置いていくから同じ碁盤の所に白と白はおかしい。私はなにもなかったように直す。
「じゃあ、並べ終わった事だし、少し打ちましょう」
先輩はそういって、向こうの三人組の所に座る。こっちの私とダークネスゴッドはというと、玉井先生、いや仙人が相手してくれるようだ。緊張する。
「二人とも初心者?」
私たちはうなずく。
「囲碁はな、まず、お願いしますで始まって、ありがとうございますで終わるもんだ」
そういって、仙人は碁石を並べる。前先輩とやった時の、オセロの始めのような並べ方だ。
「で、碁はこういう風に囲ったらとれる」
そういって、仙人は、ルール説明をする。
「じゃあ、先にとった方が勝ち。置いてみて」
私はとりあえず、前みたいに、白を3つの黒石で囲む置き方をする。やはり白は繋げて逃げる。そのまま考えながら打っていくが、全然取れない。気がついたら、とられてしまっていた。隣のダークネスゴッドは、まだ粘っているようだった。
「もう一回やるか」
そういって、またオセロの最初の形を作る。さっきとれなかったのは、次、相手が置くところを予想できなかったかからだ。一回やってみて、なんとなくつかんだから、次は相手の次の手を予想してみることにする。
佐藤の巣ごもり @urerukaku
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