第3話 ギルバード殿下
「かしこまりました」とリシアは答えた。
【その湖のほとりの街に住む人々は心に宝物を、持っていると言われている。その街の人々は妬みや偏見を持たない自由な心を持っている。なにものにも屈せず、媚びず誇りと謙虚さを合わせ持つ人々だった】
「そこまででありがとう。美しい響きだ」とギルバード殿下が言った。
たしかに意味は全然わからなかったがずっと聞いていたいとおもう声だった。
それから、大人の方、えっと・・・なんとか卿がこう言った。
「リシア嬢は今見習い中ですね。ギルバード殿下の語学教師をしてもらいたい。研修期間があと半分残っているが、これ以上の研修は必要ないと思います。お願いできますか?」
リシアが答えた。
「あの、無理だと存じます。わたくしは平民でございます。おそばにいける身分では」
最後まで聞かずになんとかは
「ご心配なさらずにすべて承知の上です。ギルバード様のご希望もありますが、今、読んでいただきました。問題ありません」
と静かに言った。
リシアも静かに
「かしこまりました」と答えた。
お城の人の会話だ。
なんとか卿が
「それでは引き止めて悪かった」と言った。
これは俺もわかる。話は終わったって意味だな。
立ち上がってリシアの真似をして礼をした俺とダグラスは部屋をでようとした。
そのとき、ギルバード殿下がリシアに抱きつき
「リシア、わがままを言ってごめんね。リシアは外務部みたいな華やかな場所で活躍できる人だけど、僕、リシアと一緒にいたくて」と言った。
こいつ策士だリシアをわかってるじゃないか・・・
リシアはやさしく腰を下ろしてギルバード殿下と同じ目線になると
「殿下、わたくしの力は足りませんよ。でもお許しが出たら、リシアは殿下のお手伝いを致します。わがままなんて思っていませんよ」
とやさしく言った。
すると殿下はリシアの手を取って
「リシア送らせてください」と言った。
「お願いします」リシアがそう答えると二人は歩き始めた。
「ねぇリシア、僕に敬語はやめて、リシアには普通に話して欲しい」
「殿下、わたくしは、研修中の見習い文官でございます。けじめは大切でございます」
ギルバード様、折れない。
「じゃあ、正式に僕付きになったら普通にお話してくれる?」と来た。
リシアはちょっと間を空けて
「そのときに皆さんに相談して、よく考えて決めましょう」と答えた。
あぁやってかわすのか。なるほど。
「リシアって先生みたいだね」と殿下が甘えた顔で言っとる。
「そうですか?」とリシアは優しい。
「あぁ先生になるんだよね」と殿下が可愛く言うと
リシアが少し声をだして笑った。殿下も可愛く笑う・・・けっ!
宿舎棟の入口まで送ってもらって殿下一行は帰っていった。
翌日、いつものようにリシアを迎えにいくとドアのまえに研修責任者とオークリー卿が控えていた。
彼らに見られながらノックするといつものようにドアが開き、リシアがでてきた。
俺をみてすぐ後ろをみてリシアが驚いた顔をした。
「おはようリシア」責任者が言うとリシアは
「おはようございます」と挨拶をした。
すぐに責任者が
「昨日話をしたと聞いた。さっそくだがこれからすぐにギルバード殿下のところにいってくれ」と言った。
リシアが戸惑いながら頷くと
「辞令や契約に関しては追って人をやるから、話をしてくれ」と続けた。
「はい承知しました」とリシアが返事をした。
オークリー卿が一歩まえにでると
「リシア嬢こちらへ」と言った。
リシアは黙って頷くと、俺に向かって
「おはよう、ケント来てくれてありがとう。わたし行ってきます。ケントも行ってらっしゃい」と笑って言うと、オークリー卿についていった。
俺はその後ろ姿を見て決心した。遅れずにリシアに付いて行くと。
俺はこの時から死に物狂いで努力したのだった。
十年後に戻ったら、 朝山みどり @sanguria1957
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。十年後に戻ったら、の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます