【憧れの背中】

レイグを追い、外へ出てしまったアイル。

周りは炎に囲まれ、火傷してしまいそうな暑さと煙に息が苦しくなる。


アイル:「とう……さん……どこに……ー!?」


燃え盛る家から出ると視界には兵に殺された村人達が倒れ、息のある者たちは必死に抵抗していた。


村人:「駄目だレイグ!こいつらに普通の攻撃は通じない……!!」


レイグ:「ハァ……ハァ……ハァ……ど、どうすれば……」


兵士と騎士達に囲まれ更に追い詰められるレイグ達、

その光景を目の当たりにしたアイルは迷わず走り出し、止まっていた一頭の馬に剣を突き刺す。

刺された馬が嘶(いなな)き騎士が振り落とされてしまいそのまま地面に叩きつけられる。

それに気づいた他の兵士達がアイルに視線を向け、レイグが向かおうとするも剣や槍で足止めされてしまう。


レイグ:「アイルゥゥゥ!!!何をしてるんだ!!早く……早くそこから逃げろ!!!」


アイル:「ぅ……ぅ……っく……!!!おぁああああ!!!」


兵士:「はっ!小僧が……生意気な!!!」


アイルを蹴飛ばし、ゆっくりと近づく一人の兵士。

それを見ていた他の兵士や騎士達が野次を飛ばす。


兵士:「おら、どうした?……立てよ小僧……気色の悪い姿しやがって!!」


恐怖で言葉も出ず、動く事すらままならないアイルに突然後ろから石が飛んできた……。


アイル:「ー!?……なにしてんだよ!!」


兵士:「んあ……?またガキか」


ミーシア:「お兄ちゃんから離れろ!!」


兵士を睨むヘレナ。


兵士:「おい、俺一人で殺っちまうぞ?」


ーやっちまえ!ハハハッ……ガキ相手にいばんな!ー


兵士:「おら……このクソガキ!!」


ミーシア:「ー!!」


レイグ:「ミーシア!!ヘレナァァァ!!!」


村人:「……どうして出てきたんだ!!」


ミーシアとヘレナを狙い殴りかかった兵士。

足が震え、全く動けないアイル。


アイル:ー駄目だ……怖がるな……兄ちゃんに教わったことを思い出せ……!!ー


━━━━━━・・・・


シエル:「いいかい?アイル、まずは敵をよく見るんだ……敵の視線はどこか、先に出すのは剣を持った手か、それとも足か……よく観察するんだ」


アイル:「わかった。後は?」


シエル:「自分の強さを信じろ、感じろ。俺は弱くない!って心で強く念じるんだ」


アイル:「え?そんな事して意味あるの??」


シエル:「これが一番大切なんだよ、心を落ち着かせて……体を完全な状態にするんだ。そしたら相手の一番弱そうな部分を狙って倒す。アハハ……誰が教えてくれたかは覚えてないけど……これをすると自信が湧いてくるんだよ!」


アイル:「へ〜……覚えとく」


シエル:「それと……忘れるなアイル」


アイル:「?」


シエル:「自分が剣を握る時……それは大切な者を護る時だ。絶対に死なせない……守り抜いてやるんだ。怖がるな……」


━━━━━━━━・・・・


アイル:「……目の前の…恐怖に抗うな……そして」


兵士:「……あ?……ー!?」


シエル・アイル:ーその瞬間…その一瞬のー


アイル:「自分を……信じろ!!!ぅぁあああ!!」


目の前へと近づいていた兵士に剣を握りしめ、甲冑(かっちゅう)の隙間を狙い力いっぱい突き刺したアイル。


兵士:「……ぐぶぅわっっ!!!……クソ……ガキィィィ……!!!!」


刺された場所を抑え、怒りで剣を振り下ろす兵士。

足がすくんでしまいその場で腰が抜けてしまう。


ミーシア:「!!ーお兄ちゃん!!!」


ヘレナ:ーだめ!!アイル!!ー


アイル:「……!!」


アイル:ー駄目だ……俺……死んじゃうんだ……怖い……怖いよ……ー


自分に向かって振り下ろされる剣がゆっくりに見え、

徐々に近づく死にアイルは恐怖し涙を流す。


兵士:「バケモンが……死ねぇぇぇぇぇ!!!!!」


アイル:「た……た……助けて……助けて!シエル兄ちゃん!!!!!」



━━━━━━━"よく……頑張ったな"━━━


アイル:ー!?ー


真横を瞬時に横切るなびく長い紅髪、瞬きをする間もなく目の前の兵が倒れ、前に立つ大きな背中。


アイル:「んぐっ……ぃ……シエル兄ちゃん゛…!!」


シエル:「お前のその剣と勇気は何よりも強く、真っ直ぐだった……。

ちゃんと護れたじゃないかアイル……遅くなってすまない……後は……"俺達に任せろ"……」


後ろから現れるレインとデイン、アイル達の目に映る何よりも強く感じたその背中はアイル達にとって憧れと希望に満ちた背中だった……。


ラボラス:「来やがったか……面倒なこって……」


シエル:「ラボラス……"俺達の仲間"に手出したからには……覚悟出来てるんだろうな」


レイン:「良いこと言うじゃねぇかシエル、俺達の仲間……大変だぜ?お前ら」


デイン:「心強いじゃないか……自分よりも大きく、凶暴な相手に剣を握り立ち向かったんだ歓迎しよう、胸を張れアイル」


ラボラス:「フフッ……フハハハハハ!!!くだらねぇ……!こいつらが仲間だと?たかがアサシンが……!図に乗るな!」



シエル:「一つ教えてやる……俺達がなんの為に戦っているか、この子達のように強く生きる者たちに……明日を笑って過ごせるようにと願っているからだ……その為なら術師だろうが国だろうがこの俺達が相手をしてやる……それで"悪"と言われようが、"恐怖"とされようが、今を生きる未来に……これから産まれてくる未来達に…笑って明日があるんだって伝えてやる為に戦うのが……俺達"【アサシン】"だ……!!!」


ラボラス:「くだらん……そもそもお前らアサシンなんてのは国の捨て駒なんだよ!!歴史がそう語ってきただろ!夢を見るのもいい加減にしろ、今ここで思い知らせてやる!!」


ラボラスが手を前へと出し、兵達に攻撃を仕掛けるよう煽る。


剣を抜き一斉にシエル達へと襲い掛かる兵達。


シエル:「準備出来てるかい……?二人とも」


レイン:「当たり前だ」


デイン:「暴れてやろう……!!」


ダガーを額へ当て、息を整える。


シエル:「感じろ...風の流れを、鼓動の音を...感じろ...己の強さを……!!!」


鷹龍の目を発動し、レイン達と共に突っ込んでいく。


ッッ……!!!!


向かってくる兵や騎士達を次々と斬り、ラボラスの元へ向かうシエル達。


騎士・兵士:ーぅがァっ!!ーみ……見えない、ングッ……ーな、な、なんなんだ!!こいつら!!!ああああ゛゛!!ー


アイル:「す……凄い……あれが……アサシン……」


シエル:「レイグ!!」


レイグ:「シエル……二人共……すまない、俺達では手も足も出なかった」


シエル:「謝る必要はない、レイグ達が戦っていなかったら俺達は間に合わなかった、ありがとう。今はみんな家族達の元へ戻って護るんだ!こいつらは俺達に任せて」


レイグ:「面目無い……殺られるんじゃないぞ」


シエル:「アハハ!!俺達を誰だと思ってるのさ!……大丈夫、もう誰も死なせない」


レイグ:「頼む……!!」


その場から村人達と走り出しアイル達の元へ向かったレイグ。

失うかもしれなかった恐怖心からか強くアイル達を抱きしめた。


アイル:「ぅ……ぅ……父さん……ごめんなさい゛゛……」


ミーシア:「うぅ……ああん゛……おどうさぁぁん゛!」


レイグ:「全く……言うことを聞かない子達だ……良かった……本当に良かった……」


シエル:「ラボラス!!!……お前だけは絶対に許さない……一度でもお前を信用した俺が馬鹿だった」


レイン:「まぁいいさ、これで心置き無くあいつを殺せる」


ラボラス:「チッ……役に立たねぇ兵共が……!魔法兵!!出番だ、奴らはアサシン……魔法が唯一の弱点だ!さっさと殺せ!!」


ラボラスの指示に抵抗したくなっていた魔法兵達。

それもそのはず、王国でも腕の経つ騎士達が呆気なく殺られ、目の前で繰り広げられていたほんの一瞬の出来事に恐怖しない訳が無かったからだ。


魔法兵:「あんな奴らに……魔法が当たるのかよ」

魔法兵:「やらなきゃ……殺られるのは俺たちだ」

魔法兵女:「ひっ……」


ラボラス:「おい……なにごちゃごちゃ言ってやがる?面倒な奴らが、さっさとやれよ……あ?」


魔法兵女:「ほ……炎の精霊よ、我が為に……ー!?」


シエル:「魔法って大変だよね〜?それ言わないと戦えないんだろ?、だから"すぐ死んじゃうんだ"」


辺りを見渡すと既にデイン達に他の魔法兵が殺られており、恐怖する残された魔法兵たち。


魔法兵:「い……いつの間に」

魔法兵:「こんな奴ら……相手したことない、俺たちが勝てるはずないだろ……」


魔法兵女:「た……助けて……」


シエル:「助けてほしいのかい?……でも君達は村を燃やしたんだよね?何人殺した……言ってごらんよ」


女は恐怖で言葉が出ず、女の目に映るシエルの赤い瞳は恐怖そのもの、ただ涙を流しその場で立ち尽くすことしか出来なかった。


魔法兵女:「私は……わ、悪くない……だから……ゆ、ゆる」


シエル:「許すわけないだろ」


ダガーを喉元へ刺そうとしたその時、


魔法兵:「うわぁぁぁぁ!!!死ねぇぇぇ!!!」


一人の魔法兵がシエルから視線を奪おうと襲いかかるが迷うことなく首を斬る。

しかし一人が詠唱を終えシエルに上級魔法を仕掛ける。


魔法兵:「"フェラスレイラ(炎の雨)"!!!」


宙へと浮いた炎の球がシエルの頭上で弾け雨のように降り注ぐ。

しかし、シエルやデイン達に当たる事は無く、その場で立ち尽くしていた魔法兵の女へと降り注ぐ。


魔法兵女:「い゛やぁああああああ゛゛……あづい゛……ああああああ゛……」


シエル:「来世は魔法使わないでね……」


背後からのシエルの声に反応し振り向いた魔法兵。

一瞬にして首を斬られ死んでしまう。


全滅する魔法兵。

残された兵や騎士達は剣を構えるも怯えてしまいシエル達に手も足も出せなかった。


ラボラス:「くそっ……洗脳でも恐怖には勝てなかったか、まだ研究が必要だな」


兵達に呆れたラボラスが突如手を広げ、残っている兵達にかかっていた洗脳呪文を強制的に解除する。

すると突然好戦的であった兵士達が先程までとはうってかわり混乱した様子へと変わる。


兵:ーな……なんだ……これは:なにがどうなってる……ここは亜人(ペティーシャ)達の村じゃないか……:そんな……誰がこんな真似を……ー


レイン:「おいおい、何がどうなってやがる……!?」


デイン:「突然兵や騎士達の様子がおかしくなった……」


シエル:「術師が洗脳魔法を……!?あいつそんな事まで……」


レイン:「洗脳……!?それって……まじかよ」


デイン:「じゃあ俺達は罪の無い兵達を殺したっていうのか……くっ!!許せ……死した者たち」


シエル:「あいつは人の命を何とも思ってないんだ……あの時もそうだった」


ラボラス:「ハハハッ……ハハハハハァァ!!!何を後悔してやがるんだ?ああ??……この村を燃やし、殺したのはまぎれもなくこいつらだ!洗脳されるほど弱い意志だっただけのこと、この役たたず共が!!」


兵:「あ……あいつは誰だ、何者だ!!」


ラボラス:「黙れ!!面倒な奴らめ……俺の手を汚させるんじゃねぇよ……せめて死ぬ前くらい俺の役に立ってもらうぞ!!!」


そう叫ぶと地面に陣を描き、言葉を発するラボラス。

すると赤黒く陣が光り始め兵達の足元に同じ陣が現れた。


まずいと思ったシエル達は即座にラボラスを止めにかかるが、突如現れた大きな影に足止めされてしまう。


シエル:「っ!!?視界が……!!」


レイン:「クソっ!!!邪魔すんなぁぁぁぁ!!!」


デイン:「なんだ……体が異様に重い……っ!!」


エイル:「主(あるじ)の邪魔はさせん……」


シエル:「また……君か……!んぐっ……動けぇぇ!!!」


力を振り絞り、全力で影から抜け出すシエル。

影を操る少女の首を斬る事ができ、二人も影から解放される。

しかし、無念にもラボラスは既に行動を終えてしまいシエル達は目の前の光景に驚きを隠せなかった。


ラボラス:「ハハハハッ……ハハハハハハハッッ!!!見ろぉ……これが禁術の到達点だ!!!じゅるぅぅ……ぅ……美しいぃ……!!」


シエル:ーっ!!?ー


兵達がホムンクルスと一体化し、荒々しい鎧に身を包み、ドクドクと脈打つ剣を片手に雄叫びを上げる。


兵:ビャリャァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァァァァァァ!!!!!!


レイン:「また……罪のない者を……苦しめるのか……てめぇはぁぁぁ!!!!!」


ラボラス:「さぁ……存分に暴れろ!!!」


ラボラスの号令にとてつもない速さで向かってくる兵達。


デイン:「来るぞレイン!!構えろ!!!」


レイン:「分かってる……ちょっと待てよ……後ちょっとだからよ……」


シエル:「……?、、、!!デイン!!レインを援護するんだ!!」


デイン:「なるほど……そういう事か、わかった!任せたぞレイン!!」


レイン:ー落ち着け……心を……体を……落ち着かせるんだ……ー


レインがゆっくりと息を整え、筋肉の緊張をほぐす。


次々に迫り来る兵達を二人でなんとか食い止めるも、

素早さ、力強さが今までのホムンクルスとは非ではなく、核が剥き出しになっていても硬すぎる為一体を倒すのがやっとだった。


シエル:ーレイン……ー


デイン:ー流石に消耗が激しいぞ……まだなのかレイン……!!ー


ラボラス:「面倒だ……さっさと死ね……」


エイル:「主よ……なにか胸騒ぎがする……」


ラボラス:「うるせぇ……お前は黙って見てろ。首切られやがって……!!早くその体を元に戻しやがれ」


エイル:「……」


レイン:ー風を感じろ……風を斬る想像を……・・・・ー


シエル:「まだまだぁぁ!!!」


デイン:「くっ!!………刃がもつ限り相手してやる!!!」


減らしても減らしても湧いてくる兵達に休む暇もなく、体力を消耗していくシエル達。

しかし、焦ることなくレインは自分に集中し静かに息を整える。


髪が揺れ、体温が上がる。

レインの周りの草が燃え始め、辺りが熱気で包まれていく。


村の家に燃え広がっていた炎がどんどん膨れ上がり、

ラボラスも異変を感じ始める。


ラボラス:「あ?……火が……なんであんなに暴れてやがる……アイツらに魔法なんて使えるはずねぇよな??」


レイン:ー空気が……熱くなるのを感じる……もっと……もっとだ……ー


シエル:「ふぅ……ふぅ……暑いねぇ……さぁ見せておくれよ……修行の成果」


デイン:「レイン……蹴散らしてやれ」


レイン:ー!!!ー


レイン:「二人共……どけ!!!!」


シエル:「待ってましたぁ!!」


デイン:「よしっ!」


二人が瞬時に姿を消し、兵達の敵視がレインへと向けられる。


数十体の兵達が剣を構え高速でレインに襲いかかる。


ー「遅せぇよ」ー


ッッッッッッッ……………………!!!!!!


音を置き去りに兵達が跡形もなく消し飛ばされる。


ラボラス:「!?……なにがおき…………でぇ…」


エイル:「主っ!!!……ッッ」


レイン:「これが……俺の瞬羅(しゅんら)だ」


ッッパァァァァァァァァァッッンン!!!!!!


ラボラスとエイルの身体も吹き飛び、炎が爆発を起こす。


地面が大きく削れ、燃えていた家や草木の炎が一気に消えてしまった……。


シエル:「ありゃりゃ……あの速さは俺でも勝てないかも……アハハ」


デイン:「馬鹿言うな……煽ってるのか?」


シエル:「違うよ!本気で思ってるさ、俺の速さを過信し過ぎだよデイン」


シュゥゥゥゥゥ…………


レイン:「はァ……はぁ……はぁ……まじ死ぬかと思ったぜ……はァ……はぁ……」


レインはデインとマキシスの修行の末、瞬羅をある程度負担を無くす代わりに突発的な一度の攻撃のみに全集中させ、回避不可能の一撃へと進化させていた。


風の加護でレインの全身に空気の膜を作り出し、

膜の外では真空状態の空間が出来上がる。

そして限界まで溜め込まれた熱によって音すらも追いつけない速さを持った一撃を撃てるようになっていた。

しかし代償は大きく、少しでも長時間使用した場合、加護でも守りきれずレインの肉体が限界を迎え破裂してしまうと仮定したマキシスの助言により、勝敗を決するたった一度だけの使用にしたのだった。


シエル:「見事だったねレイン!あれは近くに居たら死んじゃうよ……アハハ!」


デイン:「恐ろしいスキルだ……全く未熟ではないじゃないかレイン、鍛えられたその体だからこそ使えるものだ……マキシスも悔しがるほどにな」


レイン:「素直に喜んどくよ……ありがと……フゥ……終わったな」


シエル:「うん!そうだ……・・・!!レインッッ避けろ!!!!」


レイン:ー!?!!ー


シエルの叫びに瞬発的に反応したレイン、間一髪鋭い何かを避けることができた。


デイン:「……神はまだ試練を与えてくるのか……全く……」


シエル達が視線を向けるその先で、次々と集まり形を作っていく黒い物体。

???:「マダダ……オワッテナイ……」


レイン:「あれだけ吹き飛んで……まだ生きてるってのかよ……」


シエル:「あいつ……もう"人では無くなってたのか"……」


デイン:「自らの肉体を捨ててまで……」


ラボラス:「エイル……オマエノオカケデ……オレハイキテイル」


みるみると大きく姿を変えるラボラスは人間のそれではなく、足が六つ、腕が八本、そして鋭くとがった尾に中心に空洞のある魔物へと変貌していく。


ラボラス:「オレハ……コノセカイヲ……コワス……ヤツモ……コロス……」


レイン:「これが錬金術の到達点ってか……?笑わせんな……大失敗じゃねぇか……」


シエル:「ダガーで斬れるとは……思えないね……」


ラボラス:「オレハ……ナンダ……コノチカラハ……ナンダ……」


デイン:「まるで悪魔だ……」


額に現れる一つの目、長く黒い舌が口から垂れ、頭から長くうねった角が生える。


ラボラス:ーオ゛アアアアアアアアアア゛゛゛ー


シエル:「魔法無しでどこまでやれるか……試してみようか」


レイン:「化け物が……」


デイン:「レイン、さっきのスキルもう一度いけるか?」


レイン:「時間くれるなら……ハァ……ハァ……いけるぜ…」


シエル:「安心して息を整えなよレイン、先に殺したら怒らないでね」


デイン:「言ってくれるじゃないかシエル、俺も負けないぞ」


レイン:「ったく……ここには馬鹿しかいねぇのかよ」


魔物と化したラボラスは大きく雄叫びをあげ、その巨体を四足歩行で動かした。


シエル:「誰があの化け物殺れるか……まぁ負けないけどね」


レイン・デイン:ー俺だ!!ー


レインは息を整え、デインとシエルは槍、ダガーを構え、辺りにとてつもない殺意が漂っていた。


【果たされる復讐】へ続く……。

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