【殺意の衝突】
瓦礫(がれき)が散乱する武器庫内━━━━━・・・
外から月光(げっこう)が差し込み、互いの正体がはっきりと視認できる明るさへと変わっていた……。
マキシス・アルフォス対するハディス・エレボロ。
マキシスはエレボロに攻撃を仕掛け、アルフォスとハディスは互いに間合いを維持しつつ睨み合っていた。
アルフォス:「お前……本気出してないシエルと殺りあって勝った気でいるんじゃねぇよな?」
ハディス:「……何?」
アルフォス:「あいつが本気になったら、止められるのはうちのマスターくらいだ……お前なんかすぐ殺られちまぞ?」
ハディス:「何が言いたい……」
アルフォス:「この俺を殺れないなら"シエルは絶対殺れない"って事だ……」
ハディス:ー人族が……図に乗るな、殺して黙らせてやるー
ハディス:「……!?!」
アルフォスはハディスが瞬きをしたその瞬間を狙い視界から消える。
驚き警戒するハディスに突如として背後からとてつもない威力の蹴りを当てられ、体勢が崩れると共に即座に刃物が腹部を貫く。
ハディス:「グッ……パァ……!!……ウグッ……」
ハディス:ー気配が……クソッ……全く感じない……殺気すら……どうなってる!?ー
止まることなく続くアルフォスの攻撃に打つ手ないハディス。
音を頼りにするも風の音しか聞こえず、ただひたすらに体を切り刻まれていく。
ハディス:「……いい加減に……しろ!!!……グラァウルルルルル!!!!」
人狼形態へと魔獣化したハディスはなんとか続く攻撃から逃れる事ができ、息を整え傷口を再生する。
アルフォス:「おいおい……なに回復してんだよ、んなの待ってる時間はねぇんだよ!!!」
一度スキルを解除し息を整えるアルフォス。
ハディスの傷口から煙が出ていた為、再生していると気づき苛立(いらだ)ちを感じていた。
スキルを解除したアルフォスの声が聞こえたと思えば、また突然目を突き刺されるハディス。
繰り返される隙のない攻撃に怒りが爆発し、平常心を失いそうになるが……
エレボロ:「エハハ!!ハディス〜、落ち着かねぇとまた面倒だぜぇ〜??」
ハディス:「グゥラゥルル……ダマレエレボロ!!!……グルルル……グルルル……」
アルフォス:「ったく……てめぇの心臓はどこにあんだよ……ハァ……ハァ……」
視界を奪う事に成功したアルフォスはなんとか時間を稼いで息を整える。
アルフォス:ー連続して息止めてられるのもそろそろ限界だぞ……ー
ハディス:「クソヤロウ……ドコニイヤガル……」
アルフォス:「あ?アサシンがそんな真正面から殺り合うわけねぇだろ……!?あの"馬鹿共"と一緒にすんじゃねぇよ!」
エレボロ:「エハハハ!!言えてらぁ〜!……だとよ?脳筋馬鹿さんよぉ〜!」
マキシス:「俺は力だけが取り柄だからな!!」
エレボロ:「ぶっへ!!……ひぃ〜、痛ぇ〜じゃあ〜ねぇかあ!!」
エレボロを何度も大斧で斬り裂くが、何度斬ろうとも再生してしまう。
マキシス:「めんどくせぇなてめぇ!!どうなってんだその体は!!」
エレボロ:「エハハ!体ぁ〜?……んなもんとっくの昔に捨ててんだよ!!」
マキシス:「ああ?……訳わかんねぇぜ」
エレボロは闇でマキシスを覆い、閉じ込めるが……斧を力強く回転させ、容易く闇を消してしまう。
エレボロ:「お前、あの時とはちと違ぇな〜?俺の闇をいとも容易く抜けやがる……」
マキシス:「そう何度も殺られてたまるか……、学ぶんだよ俺ぁ」
エレボロ:「にしてもよ〜お前はアサシンには見えねぇなぁ〜??」
マキシス:「ほぅ?言ってくれるじゃねぇかよ……じゃあ、これならどうだ?」
エレボロ:「えぁ……?ー!!!?ー」
突然マキシスの気配を感じなくなったエレボロは広げていた闇を一度引っ込め、辺りを見渡す。
しかし、トストスと足音は聞こえるが視界には映らない。
エレボロ:「んなでけぇ図体で走れんのかよ!!すげぇなぁ〜!!」
マキシス:「俺もアサシンだからな……」
エレボロ:「んな!?後ろ……か!!!んぐぁっっ!!」
背後からマキシスの気配を感じた時には既に遅く、
とてつもない力で首を絞められるエレボロ。
闇はビクともせず、どうする事も出来ずもがき苦しむ。
エレボロ:「っそ……いぎが……でぎねぇ゛……!!!」
そしてエレボロはある事に気づく……
エレボロ:ーおい……あの斧どこいった……!?ー
マキシスの両手はエレボロの首を絞めているため持てるはずも無く、担いでいる訳でもない。
エレボロは瞬時に何かを察する。
エレボロ:ー!?上か!!ー
マキシス:「お前、あんなデカイもんが空から落ちてきたらどうなるか知ってるか?……"真っ二つだ"」
ッッザッッッッン!!!!!
エレボロの頭上へ落ちてくる瞬間マキシスが離れ、
真っ二つに裂かれたエレボロの上半身、闇から大量に零れ出てくる赤い血液に、マキシスは勝ちを確信していた。
エレボロ:「ぐっ……ヴぁぁぁぁぁ!!!」
マキシス:「魔人も血は赤ぇんだな、また一ついい事を知れたぜ……」
エレボロの闇が突如として力を無くし、物凄い量の煙が立ち籠(こ)む。
エレボロ:「舐めて……たぜ……クソがよ……んなもん片手で持ってたお前のヤバさをよ……もっと早く気づくべき……だったぜ……グハァ……」
マキシス:「まぁ、楽しかったぜ……いい腕なのは認めてやるよ、時間がねぇ……じゃあな」
斧を振り被り、エレボロの首を斬り落としたマキシス。
再戦の末勝つ事が出来た喜びを噛み締めようとした……その時だった。
闇がエレボロの元へと集まり、更に煙が大きくなる。
マキシス:「どんだけしつこいんだよ……てめぇは……」
大きな煙から突然現れる大きなその正体に、マキシスは更に胸を高鳴らせる。
マキシス:「楽しませてくれるじゃねえか!!!」
煙を消し去る程の風をおこす翼、捻れた長い角、闇の炎を口から出し、姿を現す竜と化したエレボロ。
闇焔竜(あんえんりゅう)エレボロス:「バルルルゥゥゥゥ……カラララララ……」
ハディス:「馬鹿が……死にかけてんじゃねぇよ……」
エレボロの姿を見て、自らも再度人狼化するハディス。
マキシスとアルフォスは更に骨を折る覚悟である事を決意していた……。
一方……地下牢獄━━━━━。
魔族契約を使い魔獣と変貌したボーゲルスに打つ手なく窮地へ追い込まれたノルン達……。
次々と破壊されて行く地下牢を逃げ惑うのに精一杯だった。
エルト:「なっ……!?なんだよこの化け物!!!」
ボーゲルス:「ヴォゥアアアアアアアア゛゛!!!」
シオン:「エルトさん!!そいつから離れて!!少しでも触れられてしまえば死んじゃうから!!」
ノルン:「早くなんとかしないと……、天井が崩れて私達共々下敷きになっちゃう……!!」
ヨルム:「はぁ……デス達も通用しないんじゃどうしようもないな〜、たすけてぇ〜せんちぇ〜!」
ミリス:「誰よそれ!……もう……走ってるだけで体力が無くなりそうだわ……!!」
ヨルム:「ねぇお兄さんさ〜」
エルト:「ハァ……ハァ……な、なに?」
ヨルム:「魔法国なのに魔法使えないの〜??」
ヨルムの問に苦い顔をするエルト。
決して使えない訳では無い……。
呪文を噛んでしまったり、上手く発動しないというトラウマがある為、エルトは幼き頃から魔法が嫌いだった。
しかし今のこの危機的状況でそんな事を言っている場合ではないと、意を決してヨルムに聞き返す。
エルト:「アンデッドにはなんの魔法が聞くの!?」
ヨルム:「ん〜多分炎か聖魔法かな〜?ヨルムに当てないでね〜!」
エルト:ーまじか……聖魔法なんか使えるかよ!炎なら……クソっ!!やってやる!ー
自分の元へと向かってくる恐ろしくおぞましいボーゲルスに手足を震わせつつも息を大きく吸い、呪文を唱える。
シオン:「エルトさん!!」
ボーゲルス:「ヴォゥアアアアアアアア゛゛゛ー!」
エルト:「フゥ……ご、獄炎の大地に現れし精霊よ……炎竜の如く燃ゆる我が為にその加護を今授けたまえ……
"【フェイマ】"!!!」
前へと突き出したエルトの掌(てのひら)から炎球が現れボーゲルスへと放たれる。
炎が体全体へと燃え移り、雄叫びを上げるボーゲルス。
それを好機と隙を攻めるノルン達。
ノルン:「今なら!!ヨルムちゃん!手伝って!!」
ヨルム:「しかたないな〜……殺っちゃえお前達」
シオンが糸でボーゲルスの足を縛り、強く引っ張り斬り落とす。
体勢を崩したボーゲルスにすかさず動くミリスとノルン。
大きく開けられた刺々(とげとげ)しい口に、高速で何度も抉るように斬りつける。
ボーゲルスの口は爛(ただ)れ、動きが完全に止まった所をヘラ・ウロボロ・デスが襲いかかり肉体をずたずたに引き裂く。
ヨルム:「お兄さん〜もう一回魔法おねが〜い!跡形もなく燃やしちゃえ!キャハハ!!」
エルト:「最後の……一発……下級魔法くらいやがれ!!!!"フェイル"!」
先程よりも少し大きな炎がボーゲルスの肉体を燃やし、苦しみながら塵(ちり)と化していく光景に、ノルン達は膝から崩れ落ちた。
ノルン:「終わった……やっと……殺れたんだ……」
ミリス:「初めて倒せたわ……こんな化け物」
シオン:「えへへ……一人じゃ無理だったね」
ヨルム:「あ〜あ……ヨルムお腹空いたなー……ん??」
意識を失い、その場で倒れてしまうエルト。
使い慣れていない魔法を連続して使用した疲れが一気にきてしまっていた。
エルト:「やっ……たんだ……かあさん……おれ……使えたよ……ま……ほ……」
ノルン:「エルトさん!!」
━━━━━・・・・武器庫横中庭……。
竜と変貌したエレボロと人狼形態のハディスに追い詰められ、苦戦するマキシス達。
数発の攻撃を食らってしまい、互いに限界を迎えていた。
マキシス:「ハァ……ハァ……あぁ〜痛えなちくしょう……腕の肉がちとえぐれちまったじゃねぇか……炎もあちぃしよ……」
アルフォス:「息が……続かねぇ……ハァ……ハァ……こいつら……どうやったら殺れんだよ……斬っても斬っても治りやがって……」
エレボロス:「バルルルゥゥゥゥ……オマエ……アキラメロ……ニゲテモ……イイゾ……」
マキシス:「喋れんのかよ……逃げる訳ねぇだろ!!」
アルフォス:「正面から殺り合うしかねぇか……」
互いに"諦める"という事を知らない馬鹿同士。
顔を見合せニヤリと笑っていた。
アルフォス:「ほんっと……お前も馬鹿だよな……マキシス」
マキシス:「人の事言えねぇだろがアルフォスよぉ……」
アルフォス:「たまには出すか……?本気」
マキシス:「あ?お前はとっくに本気だと思ってたぜ!ガハハ!!やってやろうじゃねぇか」
アルフォス:「馬鹿言え……これが……本気なわけねぇだろ……」
互いに目の前の敵を睨みつけ、覚悟を決める。
着けていた指輪を外し、斧の柄へと嵌(は)め、召喚の呪文を唱えるマキシス。
マキシス:「戦の神獣よ……悪を許さぬ正義の双牙(そうが)を……今我が為に……授けたまえ!!!」
呪文を唱えた瞬間、白銀に輝く二つの大斧がマキシスの手に現れ、片方が鎌のように鋭く、もう片方が獣の鉤爪(かぎづめ)の様な刃に変化した。
マキシス:「おっしゃ……もう一戦付き合えよ?化け物(ばけもん)……」
アルフォス:「さてさて……俺も死ぬ気で殺ってやるか……」
先程よりも大きく息を吸い、腕に巻いている布を外し一刀のダガーを強く手に巻き付けたアルフォス。
服に装備された武器を全て外し、更に体を軽くする。
アルフォス:「教えてやるよ……アサシンの本当の武器……それはよ……」
フッ…………
アルフォス:「"闇"だ」
ハディス:「!?ーキエタ……ドコダ……!!」
ドグッシャァァァァッッッッー
ハディス:「ガルゥウラァァア……!!!」
アルフォスの拳で腹部が突き破られ、あまりの激痛に倒れてしまうハディス。
アルフォス:「俺は誰の視界にも映らない……お前は俺を見つけられない」
アルフォスは高速で動いている訳ではなく、景色に同化する事の出来る陰のスキルを発動していた。
ギルドでアルフォスだけが使用でき、約数十の時を同化したまま行動できるアサシン特化の上級スキル。
装備をしたままでも使える潜伏スキルとは違い、完全に音や気配を消す為限られた物しか装備出来ない。
息を止める必要は無いが、特殊な呼吸法を必要とし、体力の続く限りその呼吸を維持しなくてはならない。
相手に視認された場合自動的に解除されてしまい、
数分使えなくなってしまう。
その為、ある程度戦闘能力が高い者でないと扱えず、肺活量・潜伏スキル・格闘を鍛えたアルフォスだからこそ使えるスキル。
そして景色と同化したアルフォスを視認する方法は限られており、シエルが使用する【鷹龍の目】または聖職者が使用する【真実の目】だけである。
しかし、その両方を持たないハディスはアルフォスの気配を感じることは愚か、反撃することすら不可能な状態だった。
ハディス:「ウガァルルルッ!!ウガルァァァ!!……ウグッ……」
魔獣化を維持できず、解いてしまったハディスにアルフォスは休むこと無く力強く拳を当て続ける。
ハディス:「ハァ……ハァ……透明化している……のか……?うぐぁっっ……!!再生が……追いつかない……んぐぁ!!!……」
アルフォス:ーあと少しだ……効果が切れる前に殺らねぇともう手がねぇ……!!ー
━━━━━━・・・・ー
マキシス:「おらぁぁぁぁ!!!!!」
エレボロス:「バルゥゥララララァァァァ!!!!コノシロゴトモヤシテヤルゥゥ!!」
マキシスの双斧(そうふ)がエレボロスの翼と尾を斬り落とし、怒りで暴れ出すエレボロス。
闇炎(あんえん)を吐き出し城ごとマキシスを燃やそうとするが、炎を吐く前に口を両断するマキシス。
巨体である為動きが遅く、今の状態では勝ち目が無いと悟ったエレボロスは隙を見て竜化を解こうとする。
しかし四肢を切断され、再生が追いつかず焦り機会を逃してしまう。
エレボロは理解していた。
己の危機にこの状態を解いたとしても、一方的に殺られてしまう事になり、止むことを知らないマキシスの連撃はかなりの痛手だということを……。
エレボロ:ークソッ……死なねぇっつってもよ〜……これは流石にきついぜ……このままじゃ不味い、こいつ……前より遥かに腕を上げてやがる……!ー
マキシス:「そんなもんじゃねぇだろ!!俺は本気でお前を殺すぞ!オラァァァァ!!!」
マキシスの聖獣契約は聖虎竜(せいこりゅう)の牙が武器となり召喚され、王家の指輪を捧げる事で強力な双斧となる。
そしてその武器での攻撃は魔族である者に対して絶大な効果を発揮する。
エレボロはなんとかこの攻撃を阻止しようと闇炎(あんえん)を体内で溜め込み、巨体を爆発させた。
マキシス:「クソッ!!あっちいじゃねぇか……あ゛はっ……あ゛はっ……何しやがった……」
辺りは黒い炎で埋め尽くされ、マキシスは身動きが取れなくなってしまう。
体の大半を失ったエレボロは炎に紛れ徐々に闇を集め体を再生していた。
エレボロ:「流石によ〜……ここまで……バラバラになると……死にたくなってくんな……ウグッ……ちと舐めてたぜ……」
マキシス:「そこに……いやがったか……」
エレボロ:「ー!?……おいおい……まじかてめぇ……」
体に闇炎を纏い、炎の中から姿を見せるマキシスに、エレボロは動揺を隠せなかった。
エレボロに向けられたその殺意は遥かに度を超え、
死を恐れなかったエレボロが初めて、死を目の前にし、恐怖を感じた瞬間だった。
エレボロ:「焼き焦げちまうぞ……お前……」
マキシス:「おぉ……そうかい……俺の興奮が暑すぎてよ……こんな火じゃ寒いくれぇだよ……」
ずしずしと一歩……一歩と重い足音がエレボロの耳に響き、まるで目の前に自分よりも遥かに巨大な何かが迫ってくるかのような殺意に……エレボロは本気で自分を殺せる者に出会えたと感動する。
エレボロ:「エハッ……エハハハハハハハ!!!!やべぇ……やべぇぜお前!!殺れよ……この俺を殺ってみろよぉぉぉ!!!!」
マキシス:「あぁ……今あの世に送ってやらァ……言ったろ………終わらせるってよぉ……」
腕に力を入れ、血管が浮き出る。
双斧が青く光り、刃に殺意を乗せる。
エレボロ:ーこいつなのか……こいつがこの俺を……殺す事の出来る唯一の存在なのかもしれねぇ……早く……早く俺に死を経験させてくれよ〜……エハハハ……!!ー
マキシス:「あの世で笑ってな……クソ野郎……」
ハディス:「エレボロ……あいつ……ハァ……ハァ……ングッ……」
アルフォス:ーあと……あと一撃………食らわせられればー
ボロボロになったハディスにあと一撃食らわようとなんとか息を整え、仕掛けようとするアルフォス。
ー殺れる、魔族だろうがなんだろうがこの一撃さえ当てればー……ハディスに向けられたその殺意はアルフォスの疑念を確信に変えていた。
ハディス:「こんな……奴らに……殺られて……ッグ……」
足に渾身の力を溜め、ダガーを口に咥える。
ッッ……音すらも追いつけないその速さに……ハディスもまた……死を覚悟する。
━━━━━━━━━━━━!!
しかし……
マキシス・アルフォス:ー!?ー
エレボロ:「チッ……クソアマが……」
ハディス:「どういう……ことだ……」
エレボロとハディスの前に突如として現れた二体の魔獣。
ー「エレ兄……それにお兄ちゃん……こんな所でな〜にしてるのぉ〜??」
アルフォスとマキシスは悔しさの余りその場で膝を着く。
アルフォス:「なんで……」
マキシス:「こう……いつも嫌な時に来んだよ……」
ヨルム:「あ!もしかしてぇ〜ヨルムの事助けに来てくれたとかぁ??キャハハ!!やっさしぃ〜!でもでもぉ〜ならどうしてそんなにボロボロで遊んでんのかなぁ〜??」
ハディス:「なにがどうなってんだよ……お前……今まで何してた……」
ヨルム:「捕まってたぁ〜、もうほんと、ヨルム死んじゃうかと思ったよぉ〜」
エレボロ:「ピンピンしてんじゃぁ……ねぇかよ……」
ヨルム:「ん〜、ヨルム戻ってきたんだからもう少し喜んでほしいなぁ〜??」
ハディス:「……ふざけ……!?!」
ヨルムの背後から現れるシオン達に驚くハディス。
ヨルムを睨みつけ、怒りをぶつける。
ハディス:「ヨルム……お前ぇ……なに、考えてやがる……」
ヨルム:「今回だけだよ、別に……ヨルムの勝手でしょ?そこ口出ししないでくれる?お兄ちゃん」
ハディス:「ッ……お前……」
ノルン:「マキシス!アルフォス!!あぁ……こんな事になってたなんて……」
ミリス:「貴方達は……!!」
シオン:「……っ……また……邪魔するの!?」
ヨルム:「ハイはーい!お姉ちゃん達落ち着いてぇ〜!今日の所はヨルムが二人とも連れ帰るから!次はないけどねぇ〜キャハハ!!んじゃばいばーい!」
ハディス:「なっ……なに!?……ふざけるな……ヨルム!!!」
エレボロ:「エハハハ……もうなんでもいいや……またな……次はよぉ……邪魔無しで殺ろうぜ……」
デスとウロボロが二人を抱え、ヨルムが開いた闇の中へと消えていった。
ヨルム:「じゃあね〜お姉ちゃん達ぃ〜!お兄さんもかっこよかったよ!助けてくれてありがとう!またねぇー!」
マキシス:「もしかして……あいつら目的は俺らと一緒だったのか……?」
アルフォス:「……知らねぇよ……」
ミリス:「早く治療してもらわないと!!」
シオン:「でも……これだけ騒がしいのに……誰も居ない気がするのは……私だけ?」
ノルン:「確かに……街の人達も……誰も騒いでない、まるで……"私たちだけがその空間にいるみたいに"……」
マキシス:「シエル……レイン、デイン……そっちは頼んだぜ……」
━━━━━━━━・・・亜人(ペティーシャ)村
村全体が燃やされ、黒い鎧に身を包んだ兵達が村を囲んでいた……。
兵士:「ベリアット隊長!報告いたします。奴らの姿がまだ見えません。どうなさいますか?」
ラボラス:「何もしなくていい……面倒だからな、今に出てくるさ……これだけ燃やしたんだ。いくら俺達と体の構造が違おうと限界はあるんだからな……」
兵士:「ハ!承知しました!!」
ラボラス:「さぁ……殺しの……"絶望"の時間だ……」
村長の家地下に掘られた大穴━━━━━━・・・
ラボラス達の奇襲にいち早く気づき、隠れていた亜人族たち。
煙が地下まで入り込み、咳き込む者が増えていた。
レイグ:「っがは……がはっ……クソ……流石に限界か……」
アイルの母:「貴方……子供達が……」
アイル:「大丈夫だよ!父さん!……ッ……フゥ……フゥ……ミーシアとヘレナも……大丈夫……!」
ミーシア:「お父さん達が守ってくれるから……大丈夫、大丈夫だよヘレナ」
ヘレナ:ー怖いよ……怖いよ……シエルお兄ちゃん……ー
村人:「あのアサシン達が来てくれたら……」
レイグ:「それは頼もしいが……頼ってばかりもいられん……俺達の手で皆を護るんだ……!剣を持て、元王国兵・騎士団の力を見せてやるんだ!!」
ーオォ!!ー
レイグ:「アイル、ここに残る者達を任せたぞ、いいな?」
アイル:「そ、そんな……ングッ……ゲボッゲボ……やだよ!俺も戦う!!」
レイグ:「馬鹿言うな……!お前もペティーシャの騎士なんだ、護るべき者を間違えるな、わかったか?」
アイル:「……」
レイグ:「よし、行くぞお前達!!」
レイグの号令で外へ出ていく雄(おす)達。
アイルは歯を食いしばり、父の背中を見ようとはしなかった。
アイル:「俺だって……あんなに特訓したんだ……ッ!!」
アイルの母:「アイル!!!待ちなさい!!アイル゛!!!」
その場から剣を持って走り去り、外へと出てしまうアイル。
ミーシア:「ぉ……お兄ちゃん!!!」
ミーシアも後を追い出ていこうとするが、母に強く手を掴まれ、出ることは出来なかった。
ミーシア:「いやだ!!離しておかあさん!!いやぁぁ!!」
・・・・ー
ラボラス:「ー?……フッ馬鹿共が……やっと出てきたか……面倒だったな……」
レイグ:「よくも俺達を……!!あの時の無念……今晴らしてやる!!!!」
ラボラス:「やれ……お前達」
兵士:「は!……行け!!反逆者共を斬り殺せ!!!」
ラボラス:「魔法部隊は下がっていろ、前衛の防御力を上げるんだ」
魔法兵:「はい、承知しました」
ラボラス:ーさぁ……来いよ……馬鹿なアサシン共、こちらの準備は出来ているー
【憧れの背中】へ続く……。
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