第57話 いつか……
映画が終わり、映画館を出た真凜達は駅構内へ向かった。
「真凜さん。お腹空きませんか?」
「うん、空いた。真くんは?」
「僕も空きました」
「あ、あそこにカフェがあるよ?」
「本当ですね。入りますか? 結構並んでますね……どうします?」
「う〜ん……並ぶ? あ!」
「どうしたんですか?」
「あそこに観覧車がある」
真凜は駅の窓から見えるそう遠くない場所に、観覧車を発見した。
「本当ですね、遊園地じゃないですね」
「うん、あそこ行きたい!」
「行ってみますか?」
「うん!」
真凜の楽しそうな様子に真は嬉しそうな表情を浮かべる。
真凜と真はカフェに入るを止め、観覧車に乗ることになった。
* * *
観覧車に乗ると2人を乗せた観覧車は、どんどん上昇して行く。
「わぁ……凄い」
真凜は窓の方へ顔を近づける。高い所から見下ろす風景は、真凜をワクワクさせた。
「真凜さん、あまり乗り出すと危ないですよ」
「え〜? 平気、平気」
真はあまり動こうとしない。
「真くん? 大丈夫?」
「……はい」
様子のおかしい真を真凜は心配する。
「もしかして、観覧車……苦手だった?」
「初めて乗ったので、分かりませんけど、苦手かもしれません」
「大丈夫だよ。観覧車ってしっかり作られてるから」
「はい」
「真凜さん、僕護身術でも習おうかと思います」
突然真は真凛に告げる。
「え? 護身術?」
「はい、真凜さんのこと、守る為に」
「え?」
「今回、ストーカーのことで思いました。もっと強くなりたいって。だから……」
「真くん……」
観覧車は上昇を続け天辺まで上り緩やかに下って行く。
「真凜さん、いつかヨーロッパへ行きませんか?」
「ヨーロッパ?」
「はい、エドワーズとマリアの過ごした所へ行ってみたいんです」
「うん! 行きたい。いつか行こうね!」
「はい。それと……」
真は上着のポケットに手を入れると何かを取り出す。中から出てきたのは、長方形の手のひらに収まる濃紺色のケースだった。
「僕は真凜さんと出逢う為に産まれて来たんだと思います。だから……いつか……マリアとエドワーズの分も幸せになりませんか? 僕と大人になったら結婚して下さい!」
そう言いながら真はケースを真凛に差し出す。
「真くん……ありがとう」
真凜の瞳にはうっすらと涙がにじみ、真からケースを受け取ると、笑顔で真に返事をした。
「いつか、一緒に幸せになろうね」
「はい! 良かった……断られたらどうしようかと思いました」
ホッとしたように真は真凛に告げる。
「断る訳ないよ。開けても良い?」
「はい、どうぞ」
真凜がケースを開けると、中にはネックレスが入っていた。シルバーのチェーンに小さなドロップ型のローズクォーツが付けられている。
「可愛い……ありがとう、真くん!」
真凜が嬉しそうに笑顔を向けると、真は照れくさそうに真凛に微笑む。
「さすがに指輪はまだ僕達には早いと思ったので……」
「そんなことないよ、凄く嬉しい!」
「良かったです」
そうして、真凜と真は未来への約束を交わした。
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