吸血鬼怪異譚 ~鮮世~ (きゅうけつきかいいたん あざよ)
音宮日弦
プロローグ 冷夏
「今週は最低気温が15度を下回るとの予想でしたが、依然 20度を超える気温となっています。」
10月と思えない日差しの中、研究所から出る。
スーツはよれているが緩みきっているネクタイは整えようとゆっくりと締める。
スマートフォンからイヤフォンそして耳へと入ってくるのは検討はずれの天気予報を笑う声。
2024年 10月 7月から続く暑さはしばしばこの時になってもあらわれ、まだまだ秋は遠いと思えるそんな日のこと。
私、
家に帰る途中にのる電車には午前11時なのに学生服をきたカップルやくたびれたスーツを着た中年の会社員、酔っ払い 実に様々な人が乗っていて私もその中にいた。
この日はとくに暑かったので学生カップルが仲睦まじく話しているのをぼんやり眺めていると、2人に気づかれなにかヒソヒソと小さな声でこちらをチラチラ見ながら話すのが聞こえた。
私はそこにいるのが気まづくなり次の停車駅で降りるべき駅でないのに電車をおりる。
冷房の聞いた車両を降りると10月にみあわない熱気と再会し、おらた人たちが次々と改札へ行くのとは逆にフラフラとホーム内のベンチに向かい座った。
座った瞬間、頭からつま先までの疲れが外にスーッと流れ出るような感覚に包まれる。
あたりを見回すと、下車して今いる駅は『御茶ノ水』であり、ホームを歩く人の中には大学生も含まれている。
もう一度、スマートフォンから天気予報のサイトを開き今日の最低気温を確認すると13度となっている…しかしこの気温が到底そこまで下がるとは思えなかった。
『次の電車は11時58分発……』
駅中に次の電車の到着と出発時刻を告げる音声が流れるが多くの人の声でそれはかき消されかける。
そんな喧騒に包まれながら私は静かに思いだす……
9年前のことを
『私は吸血鬼…』
2015年の夏は例年よりも気温が低く今年とは逆に『冷夏』と呼ばれていた。
しかし、その日はそんな夏の中でも一際暑い一日であり…
その日に起こったことは私の心をまだ熱く燃え上がる炎のように照らし出している。
あの浪人生として過ごした一年…その夏に僕は彼女、
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