第50話◇瑠璃色の地球◇
瑠璃子は、一人呟くと寝ころんだまま伸びをした。その時、左手が紙袋に触った。
「そうだ。これ見ないと。」
瑠璃子はベッドサイドのライトのスイッチを入れた。田中がくれた紙袋を開ける前に、ベッドサイドの引き出しから細長いべルベット地の紺色の箱を取り出して久しぶりに開いた。中には斎藤から貰ったサファイアのペンダントが入っていた。瑠璃子は久しぶりに箱からペンダントを取り出してつけてみた。「斎藤はどうしているのだろう。元気なのだろうか?」その後連絡はなかった。ドレッサーの前でランプの光に青い光を放ち輝く胸元の石を見つめていた。木村がくれたベッドの上の紙袋の中を見ると、アロマオイルの瓶が入っていると思われる紺色のリボンのかかった五センチ四方の赤い箱と、薄い無地のブルーの封筒に入った手紙が入っていた。瑠璃子は手紙の封をハサミで開けた。
「沢田瑠璃子様
瑠璃色の地球です。初めての作品なので、お手元に置いて頂けると嬉しいです。中のオイルはティートゥリーです。」
木村 聡」
瑠璃子は、手紙をサイドテーブルに置くと赤い箱を開けた。中に入っていた瑠璃色の地球は、暗い部屋の中でベッドサイドのランプに照らされて、濃淡アあらわになった。瑠璃子はボトルを手に取って明かりに近付けた。青く輝く瑠璃色の地球は、木村の言っていたように、手で造形したのか、大陸と海がなだらかな凹凸で表現されていた。瑠璃子は窓のカーテンを開けた。夜空には、満月に近い月の光が明るく部屋を照らしていた。瑠璃子は窓いいさなに地球をかざしてみた。
「宇宙から見たら地球はこんな感じに見えるのかな。」
瑠璃子は、ベッドサイドのテーブルにボトルを置くと、バッグから携帯電話を取り出し木村の番号を押した。この作品に込めた木村の気持ちをおもんばかるとおざなりにはできなかった。メールではなく、電話で晴らしい出来栄えの作品に対する感動を伝え木村に伝えたいと思った。木村の声が聞きたかった。三度のコール音の後木村の声がした。
「もしもし。」
「木村さん沢田です。今夜はいろいろありがとう。アロマボトル見せて貰ったわ。」
「ありがとうございます。」
木村は少し間を置いて言った。
「怒っていらっしゃいませんか?」
「大丈夫よ。」
「良かったです。僕、今夜なんだかおかしくて。」
「大丈夫よ。私はいつもおかしいから。」
瑠璃子は、今夜の出来事には触れず、冗談交じりでアロマボトルに話を向けた。
「とても素敵アロマボトルが出来たわね。デザイン画よりとても素敵だわ。」
「沢田さんのおかげです。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます