第42話◇乾杯◇

 席に着くとバーテンダーがメニューを持って来た。カウンターには瑠璃子達ともう一組若いカップルがいた。

「何飲む?」

 斎藤が聞いた。

「ショートカクテルが良いな。何かお勧めのあります?」

 瑠璃子は目の前にいた若いバーテンダーに聞いた。

「ベースは何が良いですか?」

「ブランデーベースとかありますか?」

「ありますよ。アメリカンビュティーはいか

がですか?ブランデーベースでドライベルモット、オレンジジュースグレナデンシロップポートワインが入っています。」 

バーテンダーはカクテルの写真が載っているメニューを見せた。

「このカクテルの名前はワシントンDCのシンプルフラワーに指定されているバラの名前なのです。」

 カクテルの写真の横にはバラの写真も載っていた。

「赤いカクテルなのですね。」

「はい。入っているお酒が赤系なのです。」

「薔薇の名前のカクテルなんて素敵ですね。それにします。」

隣で黙って瑠璃子とバーテンダーとのやり取りを聞いていた斎藤が言った。

「僕はバーボンロック。」

「かしこまりました。」

バーテンダーは目の前で、手際よくシェイカーの中に何種類かの酒を入れシェイカーを振った。カクテルを作る見事な手さばきに見とれていた。三角のショートカクテルグラスに赤いカクテルが注がれた。瑠璃子の前に置かれたカクテルグラスに手を伸ばすと斎藤が言った。

「乾杯しようか。」

「そうですね。」

二人は、お互いのグラスを静かに合わせた。

「乾杯。」

 瑠璃子は一口飲んでカクテルのおいしさに満足した。

「おいしいこのカクテル。」

「そう良かったね。」

 瑠璃子はグラスを置くと言った。

「この研修会楽しかったですね。」

「そうだね。沢田さんとも会えたしね。」

「ありがとうございます。私も斎藤さんと会えて良かったです。」

「早いものだね。君と出会って半年だよ。」。

「そうですよね。あっという間でした。私、漢方は今治の鍼灸院の先生に教わっていたのです。羽川先生とおっしゃるのですがご存知ですか?全国からお弟子さんが集まって傷寒論を読み合わせていたのです。」

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