第14話◇美味しいお酒◇
店のからくり時計が七時を知らせる音楽を奏でた。瑠璃子は、店を閉めると木村の乗って来たタクシーで中村佳乃子が待っている「旬菜・潮」(しゅんさい、うしお)と言う店へ向かった。
タクシーに乗って暫くすると木村が話しかけた。
「こちらから行くと、中村さんのお店の三軒ほど手前にあるお店なのですよ。行かれた事ありますか?」
「ないのよ。楽しみです。」
「れもん薬局」から十分で「旬菜・潮」に着いた。店の入り口には、店の名前が白抜きに描かれた夏らしい薄茶色の暖簾が掛かっていた。木村は先に暖簾をくぐると店の戸を明けた。迎えに出て来た店員の女性に木村が名前を告げると、先に来ていた佳乃子が奥の椅子席から立ち上がって手を振った。
「沢田さん、急なお誘いだったのに良く来てくれましたね。」
店内は椅子席で通路側には藍色の暖簾が掛けられていて、見えない様になっていた。佳乃子は昼とは変わってシックな装いで、一段と美しさを引き立てていた。紺地に白のストライプの入ったノースリーブのワンピースに透け感のあるワインレッドのジャケットを羽織っていて、近付くと良い香りがした。
「お誘い頂きありがとうございます。まだ売ってもいないのにすみません。」
佳乃子は、向かいの席を瑠璃子と木村に勧めると言った。
「来て頂いて良かったわ。木村君が東京から来る時は決まってここで食事をするので予約していたのです。ゆっくりアロマの話もしたいなと思って。ここ、お料理もだけど日本酒を色々取り揃えていて美味しいのです。お酒召し上がるのでしょ?。」
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