第15話 支え
陸の視線に気付いたのか、振り返った相手は、「
「こんにちは。今日は、休みかい?」
人相を隠すのにかけていたサングラスを外しながら、陸は
「あ、ええと……こんにちは」
陸の姿に気付いた
パーカーにデニム、バケットハットというカジュアルな服装の彼は、戦闘服姿の時に比べると年相応に見える。
「今日は週休なので……」
視線を合わせようとせず、もごもごと
「は、
「
心配そうな顔で、
少し前に、「怪異」との戦闘における無謀な行動が元で、
「ひ、一晩入院しただけで済みました……もう大丈夫です。戦闘服を着ていなければ重傷を負っていただろうって言われましたけど。来栖一尉には、すごく怒られました」
彼にとってもまた、
「ところで、
「俺、一人以上の術師か戦闘員と一緒でないと『怪戦』の施設から出られないから、外出に付き添ってもらっているんだ」
「そ、そうなんだ……」
陸の説明に、
「……あの……あの時は、ありがとうございました」
不意に、
「えっ? どうしたの?」
「助けてもらった時、ちゃんと、お礼を言っていなかったので……では、別の売り場も見たいので、失礼します」
決まり悪そうに言ってから、
「用事は済んだから、俺たちは出ましょうか」
陸と
外に出ると、店に長居した為か、既に陽が落ちかけている。
「
「
陸は、「体力錬成室」で
「
「そうだったんですね。この前のこともあるし、
「……だと、いいんですけどね。そういえば、
陸は、気になっていたことを口に出した。
「……ええ。
「真理奈さんの家は、私の家と同じように術師の家系でした。でも、真理奈さんには術師としての素質が乏しかったので、その代わりに『呪化学』を勉強して、『怪異』の討伐に貢献しようと考えたそうです。彼女は子供の頃から頭脳明晰だった為、飛び級で入学できる海外の大学で学んでいたのですが……」
「留学先から帰ろうとした矢先、真理奈さんのご両親と弟さんは、『怪異』に襲われて亡くなってしまったんです。彼女は、自分だけが生き残ってしまったと苦しんでいました。今も、それは変わらないのかもしれません。あれから真理奈さんは笑わなくなってしまったし、私の使い魔である『コンちゃん』にも触れようとしなくなりました」
「……
――大事なものを失った悲しみや苦しみに耐える為に、
陸は、陽が殆ど沈んだ灰青色の空を見上げ、真理奈の氷のような眼差しを思い出した。
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