魔王とマシンガンと女の子(名前はけい)
「おい早く来いっつったろうがぁ!!!」
突然の、猛り声に一同、身を固くするのみである。場所は、ただの公園_普通の午後_すぐそばで園児が、公園のバネ付きおもちゃに夢中に、なっている。たった今聞こえた、鋭い怒号にびっくりしている様子は、特にない。
「、、、とは、言わないけどっも!」
眞弥は、言いながら、両腕を腰に置いた。えらくえばり調子である。その前には、兎瓦けい(確認しておくと、現在は惑星巫天・桂)、一匹のアマガエル、そして、一人の礼儀良さそうな長髪の女の子である_名を木村優美と、いった。はたから見ると、一匹のカエル(わずか親指ほど)と歳もそんなに、離れていなそうな、女の子3人が何か、重々しい雰囲気で立っている。園児の面倒を見ながら、主婦らしき女性は、それを見て呟いた。
「?あら、確かあの子、兎瓦さんとこの、、、」
-
ホオジロザメのビデオを見ながら、坂口浄介は、それと同時に、<世界の神々>をペラペラと高速で、怖い程の集中力でその内容すべてを、頭に入れようとしていた。
<好きになっちゃった>
邪念が頭をよぎるが、絶対に騙されているの一言で、それを吹き消しながら、の、途方もない作業である。
「ああああ!わかんねえ!載ってねえよ!」
浄介は、ビデオデッキの扉、その透明に映る、自分の目のクマを確認した。呟いた。
「、、、どこだよ、あさりがわって」
ビデオで、今、一匹のホオジロザメの歯によって、ずたずたに引き裂かれたサーフボードの写真が、生々しく映っている。ショッキングなのは、わかったが何秒も、固定し過ぎじゃねえか、この画面に、と浄介は、殴るような怒りの思念を送った。
なにか、自分がどんどん変人に近付いてる、と怖くなり始めた。やっぱ全部、嘘だと思おう、と思った。奈良の彼女は、精神病になったのだ。ああ、かわいそうだ。誰より、奈良がかわいそうだ。あの、変な彼女のめんどう
<好きになっちゃった>
めんどう、、、。
-
「、、、どこだべ、ここ」
成功した様である。
あの変な花男が、元の時代に帰してくれたようである。ようであるが、来たことのない場所であった。間違いなく、自分は、この体は兎瓦けいである、と思った。にぎにぎ、と足を触り、すりすりと二の腕をもんだ。あまりに集中して、その作業を行っていた為、行き交う人々は、ほほえましそうにウケた。けいは、真剣だったが。制服の女子高生は、街で、眩し過ぎる太陽の光に邪魔されながら、目の前のショッピングウィンドウに映る自分の恰好を見た。兎瓦けいだが、
「いや!」
スカートの先20cmが、めくり上がり腰のゴムにしっかり挟み込まれてある。自分が笑われている理由がようやく、わかった。ダサい以前に、これ痴漢じゃねえか、と誰かに謝った。半泣きで、スカートを戻している最中、通りの向こうに目に入るものが、あった。<スタジオ・HURRICANEPUSH>と書いてある。ミュージシャンが、楽器をがしがし、鳴らす場所だろう、と思った。けいは、それについて考えることは、それ以上は、なかった。
-
奈良は、本日二度目の呼び出しを喰らっていた。彼の親友にである。
「もう許してやっからよ!お前早く病院行けよ!クマすげえぞ」
「うるせえよ!もうちょっとで解りそうな気がしてんだよ」
「いいけどさー。止めた方がいいぜ、宗教は」
「宗教じゃねえ!」
坂口は、それだけはねえ、とばかりに否定した。同じカフェである。奈良は、よく彼女とも来る場所なだけに、ちょっともう飽きてきていた。ああーあの、おっちょこちょいで、勘違いしいで、涙もろい馬鹿な、自分の彼女は元気だろうか、と思った。思わず、声に出していた。
「好きだ、けい」
「しってるしってる」
坂口浄介と奈良さとしは驚きで、飛び上がった。目の前に現れたのは、ここ最近忽然と姿を消していた、女の子の姿である。
「けい!おめえ、携帯通じねえしよ!? そういうことすると、おれ心配するっていつも言ってっぺよ!」
「ごめんて。いやよ?いろいろあったんだって。坂口君!よっす。野球部楽しい?」
「、、、!あ、、、!」
「?」
どうしたのだろう。坂口は、<世界の神々>を読み進めることで、忙し過ぎるようであった。忙し過ぎて、まともな反応を、けいにできなかったようだ。おまけに、顔が真っ赤だ。おそらくよほど根を詰めて、このリサーチ作業に励んでいるのだろう。まったく、感心することだ。
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