第17話 食品会社ヤバカ
石井の決意は固まり、食品会社ヤバカでの日々が新たな局面を迎えようとしていた。彼は自分の身に迫る危険を理解し、真実を追求するための行動を起こす必要があると感じていた。
新しい職場に入ってから、石井は表向きは普通の社員として振る舞いながらも、島田が関わる「汚れ仕事」に繋がる痕跡を探し始めた。会社の内部で何が起こっているのか、何が隠されているのかを知るために、彼は注意深く観察し、情報を集めることにした。
最初の数週間は平穏に過ぎていったが、徐々に石井は職場の雰囲気に不穏なものを感じるようになった。社員たちの間で囁かれる噂や、日常的に行われている業務の背後にある謎めいた動き。何かが隠されているという確信が、彼の心を占めていった。
ある日、休憩室で何気なく他の社員の会話を耳にした。彼らは、近日中に行われるという重要なプロジェクトについて話していた。内容は詳細に触れられなかったものの、何か大きな決策が下されることが予感された。石井は、自分もこのプロジェクトに関わることで、真実の一端に触れられるのではないかと考えるようになった。
プロジェクトの発表会の日、石井は心の中で自分に言い聞かせた。「今日は、自分の目で真実を見極めるチャンスだ」彼は会議室に向かう途中、島田の存在に気づいた。島田は他の幹部たちと共に並んで座っており、その表情は通常とは異なり、緊張感に満ちているように見えた。
発表が始まると、社員たちが集まる中、重苦しい空気が漂っていた。プロジェクトの内容が次第に明かされるにつれ、石井は驚愕の事実に直面する。プロジェクトには、表面的な利益を上げるだけでなく、裏で行われる「汚れ仕事」が絡んでいることが明らかになったのだ。
石井の心には不安が広がる。そして、同時に確かな直感が彼を打つ。「これが、私の知りたかった裏側なのか」
会議が進むにつれ、島田が発表した内容は、明らかに倫理的に問題のあるものであった。石井は目の前で繰り広げられる議論に耳を傾けながら、自分が関わろうとしている世界の危険を再認識していた。
発表会の終わりに近づくにつれ、石井は自分の立場を考えた。このまま何もせずに見過ごすのか、それとも自らの身を危険にさらしてでも真実を追求するのか。選択を迫られた。
心の葛藤を抱えながら、石井は外に出る決心をした。何か行動を起こさなければ、知らずに深い闇に飲み込まれてしまう。彼は真実を見極めるための最初の一歩を踏み出すことを決意した。
この新しい職場での生活は、ただの仕事ではなく、自分の未来を決める戦いでもあるのだと石井は腹に決めた。それが、明るい道を選ぶのか、闇の中を彷徨うのか、自分の選択次第であることを知ったからだ。
デスダーツ
葛城玲奈が食品会社ヤバカに足を踏み入れてから、彼女はその表向きの穏やかな日常に疑念を抱き始めた。島田が関わる「汚れ仕事」の影を感じ取った玲奈は、その真実を追求する決意を固めていた。しかし、会社の中で何が行われているのか、その全貌はまだ見えていなかった。
ある日、玲奈は工場内でささやかれる話を耳にする。社員たちの間で囁かれる「デスダーツ」というゲームの話だった。最初、その名前に特別な意味を感じることはなかったが、次第にそのゲームが単なる娯楽でないことに気づく。
「デスダーツ…?なんだ、それは」玲奈は同僚の一人に尋ねた。
「お前、まだ知らないのか?」その社員は驚いた顔をした。「あれはただの遊びじゃない。ゲームに負けた者には、ただでは済まないことになる」
玲奈はその言葉に心を奪われた。ゲームといっても、まさか命をかけたようなものではないだろうと、半信半疑だった。しかし、社内でそのゲームに参加することがどれほど危険で、どんな人間が関わっているのか、玲奈は次第に関心を深めていく。
ゲームの内容
数日後、玲奈はそのゲームが実際に行われる場面に遭遇することになった。昼休みを利用して工場内の一角に向かうと、そこにはダーツボードが取り付けられ、社員たちが囲んでいた。参加者たちは、軽い冗談を交わしながらゲームの準備をしているが、玲奈はすぐに違和感を覚えた。
「これ、ただのダーツだよね?」玲奈は目を凝らしながらその様子を見守った。
だが、すぐに彼女はその場の空気が普通でないことに気づく。ゲームは確かにダーツを投げるというシンプルなルールだが、負けた者には即座に何かしらの罰が与えられるらしい。玲奈は参加者たちの表情に浮かぶ冷ややかな緊張感に圧倒された。
そのゲームが始まると、ダーツがボードに命中するたびに、参加者たちの顔色が変わった。誰もが冷徹な目でお互いを見つめ、失敗すれば自分に降りかかるであろう「罰」を恐れているようだった。途中で失敗した参加者が一人、場から退場させられる。その際、玲奈はその社員が引きずられるように、工場の裏口へと向かうのを目撃する。
その社員の顔には、恐怖と諦めが浮かんでいた。
玲奈はその光景に目を見張った。何かが起きている。これはゲームではなく、何かもっと深刻なものに関わっているのではないかと。
ゲームの本質
その後、玲奈は更に情報を集めることに決めた。彼女は工場内をうろつきながら、社員たちの会話に耳を澄ませた。すると、ある社員がぽろっとこんなことを言うのを聞く。
「次のデスダーツは、お前の番だ。お前が失敗したら、次はその部下だぞ」
その言葉に、玲奈はハッとした。どうやら、デスダーツは単なるゲームではなく、企業内での権力闘争と関係があるらしい。ゲームで負けた者が処罰を受けるというだけではない。敗者の代わりに他の人間が犠牲になったり、逆に勝者が更に上昇するための手段となっているのだ。
玲奈はその事実を突き止めようと、さらに深く調査を進める。ある日、彼女は工場の一室に隠されている記録を発見する。それには、過去に行われたデスダーツの履歴と、そこで起きた「事件」の詳細が記されていた。何人もの社員がこのゲームを巡って権力闘争に巻き込まれ、そして行方不明になる者も出ていた。
暗黒の支配
玲奈はその記録を読み進めながら、驚愕の事実にたどり着く。デスダーツは、実は会社内のある秘密結社によって運営されていた。彼らはそのゲームを通じて、社員を次々と「管理」し、最終的には会社を支配するための道具として利用していた。
その結社は裏で行われる犯罪活動に関わっており、ゲームに負けた者はほぼ例外なく、何らかの形で抹消されていた。玲奈は、このままでは自分もその犠牲者になりかねないことを悟り、決して無視してはいけない状況に立たされていることを痛感した。
決意
玲奈は、自分の身に迫る危険を理解した上で、これからどう行動すべきかを決めなければならなかった。無理にこの世界に立ち向かうことで自分の命が脅かされるかもしれない。しかし、このまま放置しても、何も変わらない。
彼女は心の中で一つの決断を下す。ゲームの裏側を暴き、闇を晴らす。それが自分の未来を取り戻す唯一の方法だと感じた。
そして、玲奈は決意を胸に、再びゲームの場へと足を踏み入れることを決める。彼女の選択が、どれほど大きな変化を生み出すことになるのか、誰も予測できない――だが、玲奈にとっては、もう後戻りすることはできなかった。
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