第24話 看護師の職業病
居酒屋の賑やかな空気の中、看護師4人はまたグラスを掲げて乾杯していた。
「ほんと今日も疲れたよねー!」と彩香がグラスを高く掲げる。
「乾杯だけはテンション高いのな」と翔太が苦笑しながら付き合う。
「いいじゃん。こんな時間くらい楽しまないと!」と美里が軽く流し、恵も「まあまあ、今日は特別だってことで」と笑顔を見せた。
翔太がふと、グラスを持つ彩香の腕をじっと見つめる。
「なんかさ、彩香の腕、すごい血管見えるな。」
彩香がびっくりして腕を引っ込める。
「ちょっと何よ、急に腕見つめて!セクハラ?」
翔太が苦笑いしながら言う。
「いや、これって完全に職業病じゃない?気づいたら他人の血管ばっかり見てる自分がいるんだよね。」
「わかる!」と美里が勢いよく頷く。
「飲み会でも気づいたら『この人の血管、採りやすそう』とか考えてるし、スーパーでレジ並んでるときも見ちゃうんだよね。」
彩香が笑いながら自分の腕をさす。
「それな!この間、友達とカフェ行ったとき、相手が『私、献血行こうかな』って言った瞬間、『その血管なら絶対いける!』って言っちゃった。めっちゃ引かれたけど。」
恵が手を叩きながら大笑いする。
「私もよ!家族とかにも言っちゃうもん。娘に『ママ、また血管の話してる』って呆れられるのよ。」
美里がグラスを置き、顔をしかめながら言う。
「でもさ、職業病って言えば、救急車の音に敏感になるのもあるあるだよね。」
翔太が「それな」と頷きながら補足する。
「街中で聞こえると、条件反射で『あれ?うちの病院に来るかな』って考えちゃう。しかも音が近づくとソワソワする。」
恵が自分の肩をさすりながら、ため息混じりに話す。
「夜勤中なんて、遠くで救急車の音聞くと構えちゃうよね。『来ないで、お願い来ないで』って祈るんだけど、なんか来る率高いのよ。」
「あるある!」と彩香が勢いよく手を叩く。
「で、音が病院の方角に近づくと、『絶対来るわこれ』って予感がして。で、本当に来たときの絶望感ね!」
翔太が「夜勤明けでボロボロのときにあれはしんどいよな」としみじみ言うと、美里が「でも、夜勤あるあるじゃないのこれ?」と突っ込んで全員が笑った。
彩香がふと思い出したように笑い出す。
「でもさ、看護師の職業病で一番笑えるのって、排泄物の話題に全然躊躇しなくなることじゃない?」
「それ言っちゃう?」と美里が吹き出す。
「でも本当だよね。職場じゃ普通に『今日〇〇さんの便、良い感じだったよ』とか言っちゃうし。」
恵が頷きながら言う。
「この間なんてさ、家で普通に夕飯食べてたときに『今日の患者さん、便秘が解消されてスッキリしてたよ』って話しちゃって、旦那に『なんでご飯中にそんな話するの』って怒られた。」
彩香が手を挙げながら続ける。
「うちも友達とランチ中に『〇〇さん、ついに下痢から形ある便になったよ』って言ったら、友達に絶句された。」
翔太が困った顔をしながら手を挙げる。
「それさ、俺も思うけど、飲み会でも普通に便とか尿の話するの、やめない?」
「いやいや、飲み会でも話せるのが看護師の良いところでしょ!」と彩香が言い切り、全員が笑った。
恵がふと思い出したように言う。
「でもさ、職業病といえば、ナースコールの幻聴もすごくない?」
「ある!」と美里が力強く頷く。
「家でテレビ見てても、ピンポンとか電子音がナースコールに聞こえて飛び起きるの。」
彩香も「それ!」と声を上げる。
「うちなんてこの間、完全に鳴ってないのに『ピンポン』が聞こえた気がして、寝室のドア開けて『はい、どうしました?』って言いそうになった。」
翔太が呆れたように笑いながら言う。
「お前、それは重症だろ。」
恵も笑いながら頷く。
「私なんて、この間夢の中でナースコール対応してたからね。起きたら『どうしました?』って声出してた。」
「それ職業病じゃなくて、ただの夜勤疲れじゃない?」と翔太が冷静に突っ込むと、全員が爆笑した。
彩香がジョッキを掲げて言う。
「いやー、看護師って職業病も多いけど、こうやって笑えるネタになるのがいいよね!」
美里が乾杯の音頭を取る。
「じゃあ、職業病に乾杯!」
全員がグラスを掲げて、笑い声がまた居酒屋に響き渡った。
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