第2話決まった夢

 翌日の水曜日。

 私は登校し、教室に脚を踏み入れ、数人のクラスメイトに挨拶され挨拶を返す。

 丹庭の姿はなかった。

 江藤恵理が談笑する輪に紛れた私。


 朝のSHRが始まっても丹庭は教室に姿を現さなかった。

 一限が始まる前の短い休憩に教室を出て、丹庭を探しに向かう。

 一年のフロアを端から端まで急いで探した。

 特別教室や空き教室を覗いたが彼女の姿はなかった。

 私は諦め、授業が一分後に始まる時刻に着席した。


 丹庭が教室に姿を現したのは三限が始まる三分前だった。

 軽そうな通学鞄を肩に提げ、現れた。彼女は自身の席の机上に通学鞄を乱雑に置いた。


 午前の授業が終わり、長い昼休憩に突入した。

 丹庭が教室を出ていくので、私は彼女の背中を追いかけた。

 丹庭は屋上へと歩を進める。

 校内と屋上を隔てる鉄扉が開く物音がして、閉まるのを物陰から確認して、屋上へと出た私。

 丹庭は手摺りに腕を載せ、黄昏ていた。

 私は彼女に歩み寄り、声を掛けた。

「丹庭さん、昼食は食べないの?」

「あんた……関わんなつったろ!消えろ」

「丹庭さんが昨日さっさと帰ってったから、話せなかったの……話そうよ、丹庭さん」

「私はおまえと話すことなんてなんも無ぇッ!今すぐ消えろ」

刺激リスキーを味わいたいなら、万引きより私と交際しない?」

「ハァ!?あんた、言ってること理解わかってんの!イカれてんの、おまえ?」

「犯罪で憂さ晴らしっていう丹庭さんに言われるとは思ってなかった。同性わたしとじゃあエッチぃことができない体質タチなわけ、丹庭さん?そういう世界、知らないわけ……ないよね?」

「おまえ……なにがしたいんだよ、ほんと」

「なにがって……言ったじゃん。丹庭さんと恋人になりたいって。犯罪者にさせたくないってのも込みでさぁ」

「……変な奴」

「で、私と恋人になる?それともならない?」

「明日まで……ってのは、無理か?」

「うぅ〜ん……まぁいっか。逃げたら、恋人になったっていうので良いならね」

「それでいい。もう……いいか?」

「お好きにどうぞ〜」

 丹庭が私から遠ざかり、鉄扉を開け、校内に姿を消した。


 私は向かい風に目を細めながら、鼻唄を続けた。



 丹庭詩羽は私のモノだ……


 私は彼女が私の色へと染まっていく映像ビジョンを想い描き、街を見下ろす。



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