第70話

「好きなのか?大学いも」




そんな大層なものでもないのに進藤は丁寧に、大学いもの入ったパックを自分の持ってる袋に入れた。



そしてまたしても手を繋いで歩き出す。



大学いもが好き……?



進藤の言葉を反芻する。



好き……?




「桜竜?」




急に黙ってしまったあたしを心配して、進藤が顔を覗き込んでくる。



切れ長の漆黒の瞳。




とても澄んでいて綺麗。




触りたくなっておもわず手を伸ばし、目尻に触れる。



触らせてくれた。



あの人達……の瞳は泥のように酷く濁っていた……。




「桜竜?」



「あっ。わっっ。ごめんっ」




あたしってば、何を。




「いや、桜竜に触られるのは大歓迎だが、どうした?」



「……いや、なんでもない」




あたしは進藤の顔から手を引く。



確か……大学いもの話をしていたよね?




「大学いもは……昔……母親が……よく作ってくれて、懐かしくて……買った」




シドロモドロになる。



頼む、深く聞いてこないで……。


話したくない。




「そうか」




進藤が離れていく。




ホッとしていると、一瞬だったけど強く強く手を握られた。




何?




「??」



「桜竜に貰ったもんだから大事に大事に取っておきたいが……」



「いや、食べなよ」




確実に腐るよ。


食べ物なんだから。




「だよな。だから飯食ったらデザートとして一緒に食おうな」



「いやいやいや、二人分もないから。甘いものが大丈夫なら1人で食べて」




進藤にって買ったんだから。




……それとも食べたくない……とか?

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