No.16 サプライズとかいらねえから

「ああ、『デュエル』やるぞ」


コージローを殴る。殴ったはずだった。くそ、あの

『魔術』か。


朝、ホームルームが始まる前に確認した。

本当にクラスAとクラスDの『デュエル』が行われるらしい。あくまでも練習戦だが。


「つい最近な、教頭に言われたんだ、魔法を使えるようになったのなら双方のクラスの実力底上げの為やってみてはどうか、ってよ」


それをなぜスグ言わない!!!


「いや…サプライズでやろうかなって…」


しょんぼりとするコージロー。なんだこいつ、親かなんかか?そしてそんな事サプライズで言われても困るだろ。


「とりあえず席つけえ…」


見るからにテンションが落ちた。

そういえば実戦だったり『デュエル』『フラッグ』の実習とかも全部サプライズだった。これはもうコージローのやり方なんだろう。まあそれはそれで直してほしい部分なのでこちら側としてはもうやめてほしい。


「えー…みなさんにおしらせでぇーす」


ハキハキ喋れ。


「えー、と教頭からな、言われてさ、まぁ今週末にクラスAとの『デュエル』の練習がありまーす」


いえーい、と声を張らずに1人で盛り上げるコージロー。


『早く言えー!!!!!』


怒号が飛び、物が投げられる。まぁこうなるわな。


なぜなら今日は木曜日の朝。つまり『デュエル』は明日なのである。周りの反応で魔法に対する熱の上がり方が見て取れる。


「てめぇオレらが負けてもいいってかコラァ!」


ザックがいう事に同意する。相手にどんな人がいるかなんてほとんど知らない。こちとら不良の集まりでお馴染みクラスDである。クラスAの優等生達と接点なんてあろうはずがない。対策くらいはしたい。


「はい、質問」

ルカが小さく手を挙げた。いいぞどんどん聞いていけ。私はこの手の話には全く詳しくないから。


「『デュエル』って事はクラス選抜になると思うんだけど何人でやるの?」


な、なに…?


「とりあえず5人が妥当か」

『少な!!!!』


今更だが、クラスDは48人の生徒がいる。クラスAやBには150人以上いる。さすが落ちこぼれオンリーで構成されているクラスDそう見ると少ない。


「10分4ラウンド制だからな。それの掛ける5だ、戦闘が長引いたりしたらめちゃくちゃ長くなるわ」


「クリス、元々何人制!?」

「え、えっと『デュエル』は個人戦のトーナメント形式で「マジックコンペティ」には学園から選抜された20人が代表として出るんだ」


学園全体から20人…結構狭き門なんだ。それを知った上で先輩達のあの負けっぷりを思い出すとまた腹が立つ。


「そンなら今日の内に5人決めねえとよ」

「ザックは内定してるぞ」

「分ぁかってんじゃねぇか!!!」


ザックがふんぞり返って大声で言う。これであと4人。このクラス内なら私もそこに入れる自信はあるぞ。


「それとジフ」

「よしゃ!」

よし、選ばれた。もうここからはどうでもいい。

さっさと適当に決めてくれ。


「一応聞くがよぉ、クラスAで誰が出てくるとか目星は付いてンのかよ」

お、それは気になる。結構良い事聞くねあんた。


「ま、ハナ・ガーランドは出てくるだろうな。今年も「マジックコンペティ」に出てたらしいし」


あの銀髪か。アイツ選抜に入ってたんだ。


「ただ練習って事も踏まえるともう誰が来るかとかぶっちゃけ分からん。まあ向こうも同じ事を思っているだろうが」


あくまで練習なのだから担任が経験を積ませたいと思ったヤツが出てくる可能性がデカいと。


「しかも担任が変わってダンテになったからなぁ、あいつがどんなやつ選ぶかなんて予想出来ねぇけどまぁどうせ胸がデカい生徒選ぶと思うからハナは当確だろ」


副担任がコージローの横腹を蹴る。


「生徒の前でバカの性癖の話すんじゃないわよ!!ほんでそんな理由で生徒選ぶか!!!!」


コージローが横腹を抑えて膝をつく。

くそ、どいつもこいつもデカいのが好きな奴ばかりで嫌になる。


「名簿は見れるんだが、ほら見ろこの分厚さ。この中から出てくるやつを5人予想しろなんて無理だろ?」


「…だから?」

「見ねえ」


『見ろ!!!!!』


仮にも教師で賢者だろ、こいつは強いなってヤツ見てたらわからないのか。


「せ、先生、クラスAを実際に見た事はあるのでしょうか…」

「え、ある」


なおさら見ろ。なんだこいつ。


「俺から見たらリオハイムここの大会選抜生徒なんてカスと一緒だからなぁ」


「言うなそんなこと…!」


コージローがパラパラと辞書のような名簿をめくる。だんだんこの教師コンビの口喧嘩も見慣れてきたな。


「ああ、ルーチェって奴ももしかしたら出るかもな」


え!?あのチビ?うそぉ


「それはなんで?」


「お、ジフも見た事あんのか?こいつめちゃくちゃ浮いてたよな」


………浮いてた?


「ルーチェちゃんね、今年からリオハイムに入った一年生なの。…この学園の噂や実績を鑑みて入ってきたはずなんだけど」


「どういう事?リーナ」


「もしかして、ルーチェってあのピンク髪のガキか」


おや、ザックも知っている。なんだ?有名人?


「クリス!解説!」


「え、えっと、ルーチェさんは新入生なのに『デュエル』『フラッグ』に選ばれてるんだ。入学してから僅か半年で学園選抜に入ってる優秀な生徒なの」


あ、あいつそんなヤツだったのか…!?でも、


「なんで浮くの?」


「『フラッグ』の時ソレがすげー見て取れたンだよ1人だけやたら声あげて飛び回って頑張ってるガキがいた、だが言っちまえば負け戦、事実すげー点差つけられて負けたがそいつだけだったな。ガチで勝とうとしてたのは」


ザックが補足してくれる。

え、という事は…


「…クラスAで唯一、大会優勝を目指してる奴…?」

「そりゃ、浮くわな」


なんだよあのチビ、気合い入ってるじゃん!?


「よし」


コージローが名簿を勢いよく閉じる。


「発表するぜ、『デュエル』クラスD選抜5人衆」

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