第5話 自殺自殺自殺自殺自殺ッ!

 洞窟を拠点に、森で魔物を狩って食べる日々。

 もう何日経ったのか分からない。


 私が領地の村に到着していないのは、お父様の耳にとっくに入っているはず。なら絶対に探してくれているだろう。

 しかし、なかなか助けが来てくれない。

 あれから何週間? もしかして何ヶ月も経った? 


 ヘリコプターがある前世の世界でも、遭難者の捜索は大変で、発見できずに捜索が打ち切られることもあった。

 そう考えると、ここでジッと助けを待ち続けるのは間違いな気がしてきた。


 ひたすらどこまでも真っ直ぐ歩けば、いつかどこかに辿り着くんじゃ?

 いや、落ち着け。ここは地球じゃない。まだ一度も人の手が入っていない未開の土地が広がっている。歩けば歩くほど人類の生存圏から離れていくというのもありうる。


「……お腹が減りました。とりあえずなにか食べないと考えがまとまりませんね」


 いつものように森を歩き回る。

 そしてスライム発見。けれど色が違う。いつものスライムは水色なのに、今日のは緑色だ。

 まあ、食べてしまえば一緒だ。いただきまーす。

 ……うっ!?


「い、息が……」


 息ができない。心臓が痛い。解毒魔法が効かない。今まで食べたどの魔物よりも毒が強い。


《死亡を確認。自働蘇生を実行します》

《死亡を確認。自働蘇生を実行します》

《死亡を確認。自働蘇生を実行します》

《死亡を確認。自働蘇生を実行します》

《死亡を確認。自働蘇生を実行します》


 ヤバい。本格的にヤバいですよ。

 解毒魔法よ、限界を超えろ。フルパワー中のフルパワーを絞り出すんだ。

 ぬおおおおおおっ!

 よっしゃぁっ、成功!


《毒スライムから『魔法スキル:毒魔法』をラーニングしました》

《説明。毒魔法とは、毒を生み出す魔法です。神経を麻痺させたり、肉体を破壊したりします。色々な毒を操れるようになりましょう》


 助かった。そしてヤバそうな魔法を覚えてしまった。

 毒スライムを食べたら呼吸できなくなったから、神経毒だったのかな?

 攻撃系のスキルを覚えたのは嬉しいけど、聖女っぽくないなぁ。

 生肉を食べてるからこういうことになるのかしら?


 まあ、せっかく覚えたんだから使ってみよう。

 毒よ出ろー、と念じたら、手のひらから緑色のゲル状の物体が、うにょーんと出てきた。

 これが毒?

 ちょ、ちょっと食べてみるか。

 ぺろっ。


《死亡を確認。自働蘇生を実行します》


 うわああああっ解毒解毒っ!

 ふぅ……なんて強力な毒なのかしら。

 この苦しみ、魔物にも味わわせてやる。

 お、角が生えたウサギを発見。しかし目が合った瞬間逃げられた。

 最近、魔物が私を警戒している気がする。

 私、完全に捕食者のポジションか?

 逃げる相手に毒をじゅるっと飲ませるのは大変だ。

 毒を飛ばせないかな。毒針的な。

 針? そうだ、毒を防御障壁で包んで針状にして、それから筒も作って、吹き矢みたいに息を吹き込んで……発射!

 ちゃんと飛んだ、やったね。


 再びウサギを見つけ出し……慎重に狙って……発射。

 命中。

 針状の防御障壁がウサギに深々と突き刺さった。それを解除すると、毒がウサギの体内に広がる。

 ウサギは倒れ、ビクビクと痙攣してから動かなくなった。


「いつも聖女パンチで挽肉にしてゲットしていたので、初めてまともな形でお肉をゲットできました」


 火がないから生で食べるのは一緒だけど。

 さーて、いただきまーす。


《死亡を確認。自働蘇生を実行します》


 ……そっか。私の毒がウサギの体内にあるんだった。

 自分の毒で死ぬとか自殺じゃん。

 ところで前は自働蘇生すると魔力がゴソッと減る感覚があったけど、それがだんだん薄くなってきた。魔力が増えてるのかな?

 同じ種類の魔物ばかり食べてるから、悪食スキルでの魔力成長は鈍化してるはずなんだけど。

 もしかして魔力を使いまくったせいで成長した?

 やっぱり努力は実を結ぶんだなぁ。


 ってことは。

 この毒で自殺を繰り返せば、魔力トレーニングを効率的にできるのでは……?

 でも、自殺を繰り返すってのはどうなんだろう?

 ちょっと抵抗が……。


 と、私が躊躇したとき。

 森の彼方から、またあの威圧感が広がってきた。

 意識が一瞬飛んだ。そのくらいの恐怖。

 威圧感の主が目の前に現われたら、なにもできずに失神するかもしれない。

 実力差がありすぎる。


 誰かの助けを期待できない以上、私は自力でこの森から脱出しなければならない。

 勝てる相手とだけ戦い、そうでない相手との戦いは全て回避する――そんな都合よくはいかないだろう。

 最悪、この威圧感の主と直接対決することも想定しなければならない。

 この森から確実に脱出するには、この森で最強になるべきなのだ。

 毒を飲んで強くなれるなら、ためらっている場合じゃない。


《死亡を確認。自働蘇生を実行します》

《死亡を確認。自働蘇生を実行します》

《死亡を確認。自働蘇生を実行します》

《死亡を確認。自働蘇生を実行します》


《警告。魔力が枯渇しつつあります。次に死亡したら自働蘇生は行われません》


 死んだ。メッチャ死んだ。そしてメッチャ魔力使った。

 今のところ、一日に死ねるのは十回くらいが限度だ。

 これを毎日続ければ回数が増えていくはず。

 頑張るぞい。

 それにしてもダルい……。

 魔力がなくなると精神が抉れる。

 洞窟まで帰るのが辛い。

 明日からは洞窟で自殺しよっと。


 ちゃんとスケジュールを考える。

 起きたら、食料の確保。

 それから限界まで自殺。

 このローテーションでやろう。


 狩り。食べる。自殺。自殺。自殺。狩り。食べる。自殺。自殺。自殺。自殺。狩り。食べる。自殺。自殺。自殺。自殺。自殺。狩り。食べる。自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺自殺――。


《『実績:毒殺百人』を達成しました》

《『サブギフト:アサシン』を獲得しました》

《『スキル:隠密』を習得しました》

《『スキル:不意打ち』を習得しました》

《『スキル:ダークミスト』を習得しました》

《説明。隠密とは、気配を薄くするスキルです。便利ですが使ったままにしていると誰からも気づいてもらえず悲しい思いをするので気をつけましょう》

《説明。不意打ちとは、相手に認識されていない状態で攻撃すると威力が大幅に増加するスキルです》

《説明。ダークミストとは、黒い霧を生み出すスキルです。霧に攻撃力はありませんが、目くらましなどに使えます。天気のいい日中にダークミストを使うと逆に怪しまれるので気をつけましょう》


 毒殺百人!?

 自殺しまくっただけなんだけど、それでも百人ってカウントになるんだ……。

 極悪人みたいな実績を達成してしまった。

 便利そうなスキルを覚えたからいいけど。

 あと、一日に二十回くらい蘇生できるくらい魔力が増えた。

 毎日コツコツ努力を続けた甲斐があったぜ。

 これからも頑張るぞー。

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