神殺しの刺客達~15日の死闘~

ジョセフ武園

序章 横綱天魔王関

20XX年、元日。


身の丈2メートルは優に超す巨漢がそこに堂々と座るその姿は最早『ヒト』と言うよりは神仏に近い神々しさと、邪悪な影を纏っていた。


「天魔王関、角界から去る気はないか? 」

彼の正面に座る見るからに肥満体の男がどすの聞いた声で彼にそう問いかける。


「愚問――我が去るのではない。土俵に上がるべきでない力士が去るのである」


彼の言葉に、正面に座る男達が或いは溜息を吐き、或いは怒りでテーブルを叩く。


「貴様‼ 一体なんのつもりだ‼ 一昨年の春場所から対決力士を次々と土俵で殺害しおって‼ この人殺しが‼ 大人しく警察に捕まれ‼ 」


或る一人の大男が叫びながら立ち上がる。

その言葉を受けて、彼はクスクスと鼻を鳴らしながら笑った。


「土俵で……相撲の取り組みを行っただけ。死亡した力士は力士として、私に立ち向かうべき実力ではなかった。故に起こっただけの事。

 更には、古代相撲では相手が絶命する事で決着となっていた事実もあり……。

 何より、絶対的な事がある」


そう言うと、彼はゆっくりと立ち上がった。

「横綱とは、神の憑代――。なればこそ、我の取り組みは神の手の上の事である。

 故に――起こる全ては神の裁き也」



「イカれてやがる……」


理事長の札の前に座っていた肥満体の男が傷の様に深い皺を眉間に刻む。

「要するに、これからも土俵で殺人を行うって事か……自首もせずに……」


「それに何か、問題が? 」

さも、動揺も何もない。


「問題だらけだ‼ 貴様が力士を殺し始めてから、無観客、無放送という前代未聞の事態なんだよ‼ 」


叫ぶその言葉に「くっくっく」と彼は笑う。

「賞金や、入場料が事足りませんか」


理事会の面々は、全員血走った眼と真っ赤な顔で彼を睨みつける。


「いいでしょう。ただし条件があります」


やがて、彼はコーヒーショップでキャラメルマキアートを注文するかの如く、平然とした口調で語る。


「再来週より始まる両国国技館での初場所。そこで、私に1敗でもつける力士が居るのならば……私は土俵を降り……罪とはありませんが、罪を償いましょう」


その言葉に、理事会の面々は次々と波が引くように顔色を変えていった。


「貴様……それは……相撲界への冒涜と受け取るぞ……そして……約束は必ず守ってもらう」

理事長の震える声を彼は右手で制した。


「ただし……私が全勝優勝を果たした暁には……」



「相撲に関わる全ての人間の命を貰い受けます」




―――――



「何故受けたのですか⁉ 理事長‼ 」

彼が去ったその部屋で混乱はまるで水面の波紋の様に広がる。


「バカ者。こんな約束は在り得ない。全勝優勝などさせん。もししたとしても、殺害予告で警察に駆け込めばよい。そんな事より……」


「全力士を招集し、伝えよ

 再来週――初場所に出場予定力士に。

 横綱打倒を――

 そして、それは」




「生死を問わぬと」




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