第2話 前日①

その日の海莉は少しいつもよりテンションが高くて口角が上がっていた。ここ最近少しずつ嬉しそうになっている海莉そのことに気づいている人もいるにはいたが今日の漏れ出してる可愛いオーラに皆惹かれている。男子も女子も皆見惚れる美貌を持つ海莉にいつも以上に視線が集まっている。そして皆考える普段笑みをほとんど漏らさない彼女が何故こんなにも嬉しそうなのだろうと、今日は2022年11月17日。

なんの日かなんて彼女いや、彼女たちヘビーポケモンユーザーにとって愚問である。



待望の第九世代発売日前日である。




4限のチャイムが鳴ると海莉はウキウキでいつも2人でお弁当を食べている昇降口から少し離れた校舎はずれのベンチへと向かう。私もそれを追うようについて行った。

海莉が教室から出ようとするところに「竜胆さん」誰かが、彼女を呼び止める。よく見るとそれは同じクラスの杉原才人君だ。ザ陽キャと言うわけでもないが陰キャというわけでもない反応に困るタイプ、自分は陽キャ側と信じて疑わないためにギリ陰キャじゃないという微妙な子。

「ん?」不思議そうな顔で杉原君に海莉は振り向く

「り、竜胆さんなんか嬉しいことでもあったの?」みんなが気になっていることを代弁するように杉原君は聞く。

そこそこ大きな声で話しかけているのでクラスメイト達はしっかりと聞き耳を立てている。

「楽しみなことがあって、」

海莉は少し下を向きつつ頬がうっすらと赤みがかる。その様子はさながら好きな子とデートに行くようなそれ、なにこの可愛すぎる生命体は!?

「そ、そうなんだ、か、彼氏とか?」

杉原君はそう聞く。みんな(特に男子)が気になっていることを聞く。ここで杉原には大きく分けて2つの視線が向けられる。1つ目が聞くの怖いけど質問してくれてありがとうの視線、もう一つが公衆の面前でこんな質問するこいつやばすぎという視線。私は後者ではあるもののあまり心配はしていなかった。聞いた相手が〝海莉ど天然ポケモン廃人〟だから。

「えっ、違うよ、好きなものがもう直ぐ発売だから嬉しくって、」

「そ、そうなんだ」

「聞きたいのそれだけ?」

海莉は少し首を横に傾けて杉原君に聞く。

「えっ、あっ、うん」

そんな可愛すぎる海莉の仕草にドギマギしたのかしどろもどろに答える杉原君を見てそのまま教室から出て行ってしまった。それについて行くように私もついていくのだった。後ろからは杉原君が男子女子両方から若干非難されているのが聞こえていた。


「普段話しかけてこないえーっと杉原君から話しかけられてびっくりしちゃった」

「まぁ海莉わかりやすいからね」

二人でいつものベンチでお弁当を食べていると先ほどの話に戻った。

「そ、そうかな?」

少し俯き不安そうな顔をしながら弁当をつつく海莉。

「うん」

そんな海莉の様子に少し呆れながら言葉を返す。

「そ、そんなに、こんなんじゃふいうち択外して負けちゃうよ」

顔の横にガビーんと言う文字が出てきそうな顔で私の方を見てくる。

「相手に顔見られながらやるわけじゃないんだから大丈夫でしょ、」

私は呆れながらそう言う。

「えっ、でも凛と二人でやる時に凛に負けちゃうじゃん」

いきなりの私のみを狙ったふいうちを決めてくる海莉。

「ふいうちうまいじゃん」

少し顔が赤くなってるのを自覚し顔を見られないようにそう答える。

「えっ?凛と戦ってたのでふいうち入れてたの一撃ラオスだけだったからそんなのわかんないと思うけど、」

「なんで、そんなこと覚えてるの!?後そう言うことじゃない!!」

「えっ?じゃあどう言うこと」

「そ、そんなのい、言えないけどさぁ」

「へへなーんだ予想で答えるのはダメだよ凛君、わからない時こそダメ系を回すんだ!!」

「いや、うんそうね、」

いつもの調子に戻って少し落ち着いた。

「ところで凛はダウンロード?ソフト買うの?」

「えっ、あー私は明日の帰りに予約してた店舗によって帰るよ」

「私は今夜ダウンロードするのです!!」

「寝不足は肌荒れの原因にもなるよ」

「大丈夫だよ1日2日ぐらい!!」

「あー頭が回らなくて相手の変なダイマ技で破壊されちゃうかもなぁー」

「今日は直ぐ寝て明日帰るのに備えます!!」

「海莉あんたねー」

「へへー」

「海莉結局御三家は決めたの?」

「ニャオハか、ホゲータ凛は?」

「私はクワッスがホゲータかな」

「えーでもさぁ」

昼休みそんな期待に胸を膨らました二人の少女の会話が木陰の下のベンチに響く、校舎から聞こえてくる喧騒にも引けを取らない可愛らしい声が。


____________________________________________

あとがき

作者です

あけましておめでとうございます、

更新遅すぎてごめんなさい。

もともと決めていた設定が個人的にどうしようかとなりまして考えてたら投稿が遅くなりました。今後もこうなることが多々あるかもですが、ゆっくり更新していくつまりなのでゆっくりまったり待ってくれると嬉しいです。

後カクヨムの設定が分からなすぎて本文を無理やりアンダーバーで区切って作者の後書を書いています!!コメントなどでどうやって書けばいいかわかる方いたら教えてください!!

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