異世界の真実



眩い光の中で、リアはしばらく呆然と立ち尽くしていた。気づけば目の前には少女が立っており、その後ろには壮大な遺跡がそびえ立つ。


少女は振り返り、冷静な表情でリアに語りかけた。


「自己紹介がまだだったわね。私はルミナ、精霊界の管理者よ。」


「ルミナ……精霊界?」


リアは混乱したまま少女――ルミナを見つめる。彼女の見た目はどこか幻想的だった。黒髪の中に白銀のハイライトが入り、瞳は赤いルビーのように輝いている。腰まで届く長い髪は風になびき、全身に描かれた魔法陣のような紋様がまるで生きているかのように光を放っていた。彼女が着ている薄い青色のローブは、星空を切り取ったような美しさがある。


「それで、さっきから何なんだよ。俺を助けてくれたのはありがたいけど、世界を救うってどういうことだ?」


ルミナは少し微笑むと、手を軽く振り、周囲の景色を変えた。


リアの目の前に広がったのは、世界全体を俯瞰するような光景だった。大地がひび割れ、空が黒い霧に覆われている場所があれば、緑豊かな森や美しい湖が広がる場所もある。


「この世界は今、大きな危機に瀕しているわ。均衡が崩れ、精霊界と魔界、そして人間界の境界が不安定になっているの。」


ルミナが語る中、リアは一部の土地が異常に荒廃していることに気づいた。


「……それで、俺に何をしろって言うんだよ?」


「この世界を救うためには、『異界の知識を持つ賢者』が必要なの。あなたのように転生してきた人間だけが、境界の歪みを修復する力を持っているわ。」


「俺が……? いやいや待て、俺はただ楽してレベルを上げたいだけなんだぞ! 世界を救うとか、そんな壮大なことは……」


ルミナはリアの言葉を遮るように一歩前に進んだ。その瞳には確固たる意思が宿っている。


「楽をしたいなら、それもいいわ。でも、逃げることはできない。あなたの存在そのものが、すでにこの世界を動かしているのよ。」


「どういうことだよ、それ。」


「あなたがここにいるだけで、この世界の魔力の流れが変化している。つまり、放っておけば、いずれこの世界そのものが崩壊する可能性があるわ。」


リアはその言葉に絶句した。


「……つまり、俺はこの世界にとって爆弾みたいな存在ってことか?」


「正確には、『希望か災厄か』どちらにもなり得る存在ね。」


ルミナは微笑みながら手をかざすと、リアのステータス画面を空中に浮かび上がらせた。


「あなたのステータスを見る限り、潜在能力は十分。私が少し手助けすれば、楽にレベルアップする方法も教えられるわ。」


「本当に楽できるなら……少し考えてもいいけど。」


リアがそう答えた瞬間、遺跡の奥から低い唸り声が響いた。


「何だ、この音?」


「どうやら、あなたを試す存在が目を覚ましたようね。」


ルミナが静かに告げる。遺跡の奥から現れたのは、巨大なゴーレムだった。全身が黒い岩で構成されており、その目は燃え上がるような赤い光を放っている。


「これを倒せば、私の力を少し分け与えるわ。さあ、あなたの力を見せて。」


「えっ、いきなり実戦!? 聞いてないって!」


リアは慌てながらも、覚悟を決めて杖を構えた。



現時点のステータス

名前:リア(Ria)


職業:賢者

レベル:5

スキル:ファイアボール、アーストラップ、柔軟化、重力圧縮

特性:未発動

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