討伐クエストのはずが…
北へ向かう街道を進みながら、リアは魔物討伐に備えてスキルの確認をしていた。
「ファイアボールにアーストラップ、それから重力圧縮か……これだけあれば余裕だろ。」
討伐対象の魔物は、狼の群れが進化した「シャドウウルフ」と呼ばれる存在だ。素早い動きと集団での連携が厄介だが、遠距離攻撃と罠で対応すれば問題ないはずだった。
「楽勝でスキル吸収して、報酬を貰ってレベルも上げる。完璧な計画だな。」
そんなことを考えながら森の中へと足を踏み入れる。しかし、次の瞬間、リアの視界に飛び込んできたのは――
「おいおい、なんだこれ!?」
そこには無数のシャドウウルフの死骸が転がっていた。血の匂いが辺りに漂い、明らかに人間が倒せるレベルを超えた圧倒的な力が働いた痕跡だった。
「まさか……他の冒険者がやったのか?」
だが、リアの疑問はすぐに消し飛ぶ。森の奥から、ゆっくりと何かが現れたのだ。
それは――巨大な竜。
「え、竜!? いや、こんな序盤で竜とか聞いてないから!」
竜の体は黒光りしており、その目はリアを見下ろしている。普通なら逃げるべき状況だが、リアは思わず呟いた。
「……もしかして、こいつからスキル吸収できる?」
竜を前にしてなおスキル吸収を考えるリア。しかし、その考えは甘すぎた。竜が口を開き、低い声で語りかけてきたのだ。
「貴様、何者だ?」
「しゃ、喋った!? 竜って喋るのかよ!」
「愚か者。貴様のような者がこの地に足を踏み入れるとは……運が悪かったな。」
竜の目が光り、リアに向けて圧倒的なプレッシャーを放つ。その瞬間、リアは自分の身体が震えていることに気づく。
「ちょ、待て待て! 戦うつもりは――」
竜が大きく口を開き、黒い炎を吐きかけようとしたその時。
「ストップ! その子は私が連れてきた。」
突然、どこからか女性の声が響いた。森の木々の間から現れたのは、一人の少女。黒髪に赤い瞳、そして全身に魔法陣のような紋章が浮かんでいる。
「えっ、誰?」
「私はリアを助けるために来た。これ以上彼を脅すのはやめなさい。」
竜は少女を見るなり、目を細めて一歩後退した。
「……お前、何者だ?」
「それは秘密よ。でも、今はこの子を渡してもらう。」
少女はリアの方を見て微笑んだ。その笑顔はどこか親しみやすくもあり、不気味でもあった。
「えっと、助けてくれてありがとう?」
リアが礼を言うと、少女は一言こう言った。
「いいえ、あなたにはもっと働いてもらうつもりだから。」
その瞬間、リアの身体が眩い光に包まれた。気づけば周囲の景色が変わり、どこか知らない場所に立っていた。
「え、何これ!? どこだよここ!」
目の前には壮大な遺跡のような建物が広がっている。少女が振り返り、リアに向かって宣言する。
「ここがあなたの新しい仕事場よ。楽してレベリングなんて甘いこと言わないで、本気で世界を救ってもらうわ。」
「はぁ!? 俺、そんなこと聞いてないんだけど!」
予想外の展開に呆然とするリア。しかし、彼の冒険はここからさらに予想外の方向へと進んでいくのだった――。
現時点のステータス
名前:リア(Ria)
職業:賢者
レベル:4 → 5
スキル:ファイアボール、アーストラップ、柔軟化、重力圧縮
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます