第7話 ホーンペインの街中で
「あなた?今夜の宿よ」
悩みながら足をすすめていて気づかなかったが
宿にいつの間にかついてたらしい
「おぉ、悪りぃ…」
宿のドアを開けて、宿の主人に声をかける
「すみません、2部屋空いてませんか?」
と彼女側から尋ねる
「いらっしゃい、旅の方かね?」
と宿の主人が元気ない感じで応対する
部屋はお好きにと言われたので
彼女が別々の部屋を指定し、鍵を受け取ったあと、俺はもう片方の鍵を渡される
「料金は出て行く時に払っておくれよ」
と、宿の主人は新聞を広げながら、部屋へ向かう俺たちを見送る
「なぁ、なんで部屋を分けたんだ?」
俺は素朴な疑問をぶつける
「おや?あなた…もしや今夜、期待してたんですか?嬉しい」
彼女は振り返るとニコッと笑う
下心がなくても、そこを見透かす感じの目に、思わずドキッとしてしまう
「と、いうのは冗談で……今回、任務として使う部屋と、アッシュ様の部屋を分けた方が都合がいいんですよ」
「都合……?」
洗脳の魔石の調査だから、俺が居ると、仕事の邪魔になってしまうのかな
それとも、魔石に対することを、尋問に利用するのだろうか?と考える
「そうですね…とりあえず、無くしちゃいけないものは私にあづけてください。この街はスリも多いそうなので」
と、彼女は手のひらを出すので、俺は素直に無くしてはいけないものを渡そうとする
「あぁ、財布は最低限のお金にしておきましょう。それとこのネックレスを…」
と彼女が俺にネックレスをつける
「……?これは……」
「ふふ、内緒です」
いや内緒なのかよ…
一通り貴重品を彼女に預けたら「解散」のハンドサインを彼女が出したので、俺たちは別行動をとる
宿屋を出て、昼飯を食べようと思い
酒場とかをチラチラ見るが
寂れていて閉店してるのかわからない雰囲気だ
「こんにちわぁ…………」
とおそるおそるドアをキィと開けると
薄暗い中、いらっしゃいメニューはそこだよと、奥の方から声が聞こえる
明かりは魔石を利用してるらしく、酒場のご主人はカウンター席にある魔石に魔力をこめ、灯りをつけてくれる
「あ、ありがとうございます。軽いもの一つ頼みます」
カウンター席に座りながら俺は注文する
「あいよ」
店の主人は準備しながら、こんなうす暗いところで申し訳ないね、と食器の準備しながら声をかけてくれる
「…昔はこんなじゃなかったですよね?」
俺は自分の記憶をすり合わせるために聞くと
店の主人も、ふぅとため息をついた後
「昔はね……今は悪い奴らが根城にしてるのもあって、観光客向けの商売が今やすっかり…この通りさ」
コト、とご主人はサンドイッチを俺の前に置く
「いただきます」
俺は食事してる間、誰も外を出歩いていないのを見ながら
彼女は「悪い奴ら」とやらの根城を調査しているのだろうか?…と考える
「お兄さんも気をつけなよ…身なりがいいと、
と酒場の主人は忠告してくれた
「一応聞きますが、その悪い奴らが根城にしてる地域って?」
「ホーンペインの鉱脈、って言えばわかるかい?奴らの根城はそこだよ」
と教えてくれた
「……あそこが占拠されてると、昔みたいに、鉱石を自由にとったりするのは、まだまだ先の話だねぇ」
酒場の主人が、窓から曇り空越しに見える、鉱山を眺めて、店主はつぶやく
「ごちそうさま。うまかったぜ」
代金を置いて、俺は店を出る
ホーンペインの鉱脈…酒場の主人が見てた、山を見る。
あそこには近づかないでおこう…トラブルに巻き込まれるのが一番嫌だし…
「俺も、情報収集にきっと役に立てるはず」
と腹を満たしたおかげか、やる気が湧いてきた
まずは酒場以外に人が集まるところ…
と俺は一人で街へ繰り出す
なるべく、怪しいごろつきがいないところを避けながら
「人がいるところ…」
だが、なかなか人の気配があるところはないが
昼間でも買い物に来ている女性に声をかける
「こんにちは。この辺美味しい「晩御飯」が食べれるところはありますか?」
人によってこの受け取り方は違っていて
どうやら、声をかけた女性は違う意味で取ってくれたらしい
「では…こちらに…」
手を引かれていったのは、簡素ながらも、部屋として小綺麗に整えられた家だった
「先ほど、私はこういうことで身銭を稼いでいるのです…なので、あなたがよろしければ、私はサービスしますよ…」
甘いささやきを俺の耳元で囁くのと同時に、紙切れを握らせてくる
その紙切れには、夜の大人サービスに関してだったので
時間がたっぷり取れるのと、あれやこれやきっと聞き出せることに、ニヤッと笑い
「伝わって良かったぜお姉さん。時間はそっちで決めてもらってもいい。この後お茶でもしながら楽しみましょう」
俺だって、ちゃんと情報聞き出せるってこと証明してみせるっ!
なんて、ことが役立たずになるとは、この時の俺は知ることもなかった
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