第13話 シュンの話
「まさか、ずっともう一人いたとは思わなかったよ・・・」
ミツトは、なぜか冠をつけた少年と二人で下校していた。
「俺も、まさか一般の男子高校生のボディーガードをするとは思わねえよ。どうせ守るなら幸高神様がよかった!」
迷惑そうに喚くシュンを横目に、ミツトも、はあ、とため息をつく。
「僕だって何が何だかさっぱりなんだよ?お互い様じゃん」
少なくとも四歳は年下だろう子供に高校生が喧嘩腰になっているのは良くない気がするが、この訳の分からなさをそろそろ誰かにぶつけたくなっていた。
「結局、怨魔ってやつが神様に・・・その、酷いことをさせているのは分かったけど、それ以外は全く分からないし」
「お前の立場からしたらそうだよな。ミナカミ様も最終的に愚痴言っただけだもんな」
ミナカミ様、と聞いて一瞬誰のことかと思ったが、やはり思い出してしまった。
人形のような美貌を持つ青色の瞳の青年、流のことだ。
「じゃ、俺が話してやろう。神様と能力者について」
「能力者・・・?それも初めて聞く単語なんだけど」
「だから、それを今から説明するっつってんだろ」
話を遮ってしまったからか、シュンに軽く睨まれた。
「え・・・?ごめん」
ミツトが謝ると、シュンは気を取り直すように、こほん、と咳払いをして、話を始めた。
まず、神様は先代と完全な血の繋がりがあることが条件になってんだ。
その血の影響で、神様には能力っていう特別な力がある。幸高神様だと炎を操る能力だな。
そんで、神様は一生怨魔の命令だけを聞いて生きなくちゃいけない。
具体的な例を挙げると、
『怨魔以外は幸高神より下だ。』
『苗字を持っていない者は苗字を持っている者より下だ。』
『渡された封筒の依頼には従わなければならない。』
封筒の中には殺しや拷問の指示が書かれている。
神様の普段の仕事だな。
『怨魔の呼び出しには応じなければならない。』
『歳が30になる前には必ず死ななければならない。』
『自身の跡継ぎが幼いうちに、できるだけ跡継ぎの記憶に残るように死ななければならない。』
こんな感じだ。
他にも色々あるみたいだが、俺も噂で聞いた話だからな。詳しくは分からねえ。
そこまで言ったところで、シュンは真っ直ぐ前に向いていた目をミツトに向けた。
「以上が、神様の説明だ。なんか分かんねえことあるか?」
ミツトは、シュンの質問には答えず、しばらく渋い顔をしてからようやく反応を示した。
「全体的にいやーな話なんだね。その怨魔って人、神様たちを何だと思ってるの?」
「少なくとも、生き物扱いしてないってのは確かだな」
言いながら、シュンは憂いを帯びた表情になる。
「本人たちは死ぬほどきついだろうが、俺らにはいっつも笑顔で接してるよな。助けてって言ってくれたらいいのに」
そして、自身のその言葉に苦笑した。
「ま、そう思ってるのは俺だけじゃないんだろうけどな。章も神様たちと仲いいみたいだし。じゃあ、次は俺、能力者についての話だな」
能力者は、他殺で死んだ未成年の中から選ばれる。つっても能力者のほとんどは死ぬ以前の記憶がねえ。
前世では殺されたんだなーって思うだけだ。
能力者は、気づいたら真っ白な空間にいる。食べ物も遊ぶものもなくて、壁もない。
残念ながら服は全員着ていた。
ただ、たまに現れる雑誌とか図鑑の話題で、俺とそう変わらねえ歳の奴らが楽しそうに話してるだけだったよ。
俺の場合、そこでとんでもねえ黒歴史を作ったけどな。
んで、時々行われる試験で合格したら命がもらえて、現世に行ける。
それまでは何回死んでも生き返ったし、腹も減らねえ、眠たくもならねえで退屈だけど不自由はなかった。
現世に行ったら神様の命令には絶対服従っていうルールが追加される。
命令に背いたら即座に敵認定だ。
「神様よりはいいけど、こっちも大変だろ?」
その後はシュンの愚痴を聞きながら、家に帰った。
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