第4話
内火艇には件の大学教授、学生、海上自衛隊の調査員等が乗り組み、ドックの前方500mに近づいていた。
「これから速力を落として、ゆっくりと進めます。皆さん、何が起こるか判りませんので、救命胴衣の紐はしっかりと締めておいて下さい。」
「教授、救命胴衣を装着して下さい。」
「しっかりとこの目で見ないと解らんだろう!こんな邪魔な物は、ワシには要らん!」
「そんなダダをこねないで下さい。みんな見てますよ。」
「要らんと言ったら要らん!あ、痛っ!!うわっ!」
教授と学生、調査員達は、盛大に見えない壁にぶつかり、海に投げ出された。甲板に設置された測定機器類も、海に落ちるか、後方へ飛ばされていた。
内火艇はスクリューを停止したが、惰性でそのまま進んでいた。
「うわ!わしゃ泳げんのだ!誰か助けろ!!」
「だから言ったのに...今助けますから、暴れないで下さい!」
「何にぶつかったのか判らん!って何だあれは!」
半分程度まで壁に当たった内火艇は、その姿の前半分が見えなくなっていた。内火艇の船首に居た見張り員が、突然何も無い空間から飛び出して来た。
「前方に700mに駆逐艦!って何でみなさん、泳いでいるのですか?」
「前方?何も見えんが?って艇体が半分無い?」
「有りますが...えっ?」
「内火艇から離れろ!後進を掛けて行き足を止める!」
そこには後ろ半分だけ見えている内火艇が佇んでいた。
船体が停止した所で、海上に居た同乗者は、全員救助されたが、やはり見えない壁から先には行けなかった。ただ、大和の乗員である内火艇の搭乗員達は、壁の向こうに行き来出来るようであった。
「艇首からおよそ700mに駆逐艦が停泊しています。速度を上げていたら、衝突していたかもしれません。」
「わしらからは何も見えんが、壁の向こうは異世界なのか...行ってみたかったがのう」
「後進を掛けて、元の桟橋に戻ります。皆さん、そのまま待機して下さい。」
「あ~あ、高価な測定機器が全滅だのう...」
「教授、あれを見て下さい。船首の旗竿に取り付けしたGoProがそのまま残っています!」
「早速外してこい!誰かGoProに接続できる機器は無いか!!」
「後方に置いてあったノートPCが大丈夫です。」
そこに写し出された映像を見て、全員が愕然とした。
そこには横腹を向けた陽炎型駆逐艦が、はっきりと撮影されていた。
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