第3話

健は無言のまま服を身にまとい、車の鍵を掴むと玄関を出ていった。乱暴に閉められたドアの音が家中に響き、私の胸の鼓動は一段と速まる。




――また、やってしまった。


エッチの最中に健が怒りを爆発させ、家を飛び出していくのは、これで何度目だろう。

もう、数えることすらできない。



――こんな生活、いつまで続くのだろう。

私たちは、もうやり直せないのだろうか。



視線が、壁に飾られた結婚式の写真に吸い寄せられる。

そこには、幸せそうに微笑む私と健がいた。

その笑顔を見た瞬間、胸の奥から抑えきれない悲しみが込み上げてくる。


気づけば、大粒の涙が頬を伝い、静かに床へと落ちていった。




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