配信アプリ(2)
Bくんが配信しているというアプリの通知が届いた。
わたしはずっとRちゃんのあの異常な怯え方が気になっていた。
まあRちゃんにはBくんがいるしな。
違和感を拭いがら、Bくんの配信を聴きにいった。
【こんにちは】
「お、さくらさんじゃん〜やっほ〜」
Bくんはいつもの間延びしたおっとりした口調で挨拶してくれた。
既に配信を聴いてるリスナーは数人いた。
本日Bくんは休日で、ゆったりとお家時間を過ごしているみたいだ。
観葉植物をまた増やしたようで、浴室に一先ず新しく観葉植物を置いてみてるらしい。
【どこまで増やすの?】
「うーん、どうしよっかな〜植物園の一角みたいにしたいんだよね」
【なんだそれ(笑)】
ねえー…?えー
「緑に囲まれると落ちつくんだよね。さくらさんはお家の観葉植物ちゃんとお世話してる?」
全身が沸騰したように熱くなってから、急激に冷えてゆくような。落っこちたら助からない高さで足元がグラグラの板の上に立っているような。
そんな感覚が、これは危機だと言っている。
喉が渇いてカラカラになっているのがわかった。
【いきなりなに言うんだって思うかもしれないんだけど…この前Rちゃんの配信で、誰もいないのに女の人の声が聴こえたの】
「んー…?ああ、うん。それRから聞いたよ〜気のせいだったんだよね」
【あの、今同じ女の人の声聴こえたんだけど】
「……」
【ごめんね、わたし疲れすぎて変な幻聴聴こえてるのかも。でもね少しだけ気になっちゃって。変なこと言ってごめんね】
わたしはコメントを打ちながら混乱していた。わたしの方がどうかしている。きっと幻聴だ。こんなわたしごとで、2人を振り回しては駄目だ。申し訳ない、変な奴だと言われるだろうな。
[そんなん聴こえねえよ]とか[こわ〜www]とかコメントを残しリスナーは一気に減っていく。
「ふーん、別にいいよ。前にも言われたことあるしね〜」
えっ?
えーっと。
え??
わたしは意味がわからなくて、頭が真っ白になった。
「職場の人と通話してたらね、女連れ込んでるって勘違いされたんだよね〜その時誰もいなかったけど。1人でいるのにRと通話してる時にも疑われたから、Rには俺の家女の幽霊いるかもって話しはたんだけどね。イライラするよね〜」
Bくんはケロッとした調子で、いつもと変わらず間延びしたおっとりした口調で話す。話し続ける。
「マジで住んでるなら家賃半分払えよって話し!おーい女の幽霊聴こえてるか〜?家賃払え〜!」
ついに配信に残っているリスナーはわたしだけ。
わたしはなにもコメント出来ない。
人間に必要なものが削ぎ落ちている人間もどきと関わっているのだとわかった。
「まー、ここ事故物件だしね!」
スマホ越しに、ヘラっと笑った気配がした。
今のさあ…
どっちが笑ったの?
おわり
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