お前誰や。

益荒男 正

お前誰や。

お前誰や。


知らんわ。お前以外の誰かやわ。


何しに来たんや。何もする気ねぇくせに。


知るか。勝手にさせろや。


ただでさえ気悪いんに、何でお前なんかの相手せにゃならんのや。


こっちの台詞や。俺だって気分悪いんじゃボゲが。


クソが。死にてぇわ。


おう死ね死ね。死んでしまえ。


黙れや。お前に言われて死にたないわ。


何や死なんのか。勇気もねぇ口だけか。ホンマに死んだ人に失礼やわ。


簡単にいくかそんなもん。イラつかせんなや。


じゃあどうすんねや。どうやって生きていくんや。


知らねぇよ。


知らねぇもクソもあるか。言えや。


知らねぇって。何もできねぇんだよどうせ。


勉強もせん、仕事もせん、家のこともせん、何もせんやないか。うんこ製造機なんかこの世にいらんわ。


分かってるよ、うっせぇな。やる気が出ねぇんだよ。


毎日そうやん。今日はどうするんや、この後。


風呂入って寝る。それだけ。


またか。明日のためになること何もせんのかい。


できねぇってんだろうが。


そうやってぐじぐじいじけたおして、いい歳して恥ずかしくないんか。


恥ずかしくないね。しかたねぇから。死んだらリセットだし。


またそれに戻るんかい、アホらし。ちゃんと病院かかっとんのか。医者に治してもらえや。


ずっとかかっとるわドアホ。それで何もなってないんや。クソゴミが。


何もなってないんは、お前が正直に話してないのがあるからやろ。


知らん。


話すこと話さんまま治せるわけないやろ。神様でもないんやから。


知らんわ。俺が決めたことや。いちいち口出すなや。


決めたって何をや。嘘ついてまわることかいな。くだらん、みっともない。


方便や。嘘つかんなん生きていかれんのや。


生きていかれんことはないやろ。お前の勝手な妄想や。


うっせぇわ。誰も何も分からんのや。こうするしかないやろ。


何や、誰かに分かって欲しいんか。だったらなおさら正直に言えや。


誰が分かるかアホンダラ。親でさえ分からんのやぞ。無理に決まっとろうが。


親だろうが結局他人やし、それにいい歳や。負担かけたくはないやろ。


知らんて。あいつら”先”の話しかせぇへん。”今”俺がどうなってるかなんて問題にせぇへん。ありえんわ。


共感が欲しいんかいな。だったらお友達にでも言ったらどうや。


こんな話できるわけないやろ、考えろ。「そうか、大変だね」って微妙な空気にさせて終わりやろうが。


じゃあどうするんかって。誰にも話さんつもりか。


そうや。一人で抱えたまま生きていくわ。


それが辛いんやないんか。限界来てるんやないんか。


だから、知らねぇよ。これは俺だけのもんや。他人の偽善に削り取られてたまるかい。このままでやれるとこまでやったる、駄目やったらそこまでの話や。


ガキじゃあるめぇし。どうなっても知らんからな。


おうよ。何かあったらお前が俺の代わりやれや。


誰が。お前のこと考えるだけでも懲り懲りや。じゃあな。



風呂に入って、スマホをいじって、参考書を一ページだけめくってから、電気を消して、ベッドに入る。


今日も、よく分からなかった。

明日は、どうだろう。

世界が、終わってればいいな。


すん


鼻を啜ってから、寝た。


ちゅんちゅん


朝が来たので起きた。

適当な服を着て適当な準備をして、家を出る。

すれ違う誰も彼も、パリッとした服装できびきび動いている。その動きに自分も順応していく。

朝日が温かい。背中や脇に薄っすら汗が滲む。鞄を握る手の力が強くなる。歩みを進める足の裏から、大地を蹴る感覚が伝わってくる。心臓も独りでに動いてくれる。

あぁ、生きるにはいい日だ。

吐き気がする。

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お前誰や。 益荒男 正 @kamulo

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