第29話
『私の騎士はライさんしか居ない…そんな気がするの!!』
マリーの突然の告白を受けた私の脳裏には原作でマリーがライに告白をした時のセリフが響き渡っていた。
ライを攻略するには分岐が大きく2つある。
それは聖女を守護する騎士、言わばパートナーを決める伝統的な儀式の場でライを選択すること。
そしてもう1つは、儀式では誰も選ばず、パートナー不在の状態のまま、国からの依頼案件を一緒に解決する一時的なパートナーとしてライを選択し、ゲーム時間で約5日程行動を共にすること。
今の段階では全くこの2つの条件に当てはまらない。
(だってそもそも騎士選びの儀式もまだじゃん!?それなのになんでだ!?)
突然自分へと向けられた好意に私は戸惑うしかなかった。
そしてなによりも、マリーの好意以前に私にはマリーの騎士を引き受けられない大きな理由があった。
それは既に私がメロウと契約関係にあることだった。
このゲームにはハーレムエンドはない。
故に、この乙女ゲームとしての根本的な"設定"が変わっていなければ、一人の人間が複数のパートナーを持つことはできない。
そして今の私の体(記号)は生物学上は"女"であり、これもまた同性同士のエンドも用意されていない。
(うぉぉー…なにがなんだか分かんないぞー…)
「そう言って貰えて凄い嬉しいよ…マリー…。だけど…」
ぐるぐると色んなことを考えながら重い口を開くと、すぐにマリーの方が私の言葉を遮るようにして話し始めた。
「分かってるわ」
「え?」
「分かってる、貴方が私の騎士になれない理由。メロウ・ド・ホワイトとの契約があるからでしょう?」
「あ、うん…そうだね」
(まあ…それもそうなんだけど…、そもそも私が女だからってのもあるし…厳密に言うと私はマリーの求めている"ライ"じゃないんだよな…)
マリーが私にその大きなアメジストの瞳で見つめてくる度に、私の心には暗い後ろめたさがジワリジワリと広がっていった。
「それなら、彼との契約を破棄してしまえば良いのよ」
「破棄…?」
「そう」
「でもそんなことしたらメロウが…」
「そんなのどうでもいいじゃない」
「………え?」
(今、なんて…?)
マリーの言葉に私が唖然としていると、マリーはふわりと私の方へと寄ってきて、その小さな手で私の手を握った。
「ライはメロウのことが好きなの?ホワイト家の人間と契約なんて…それは婚姻を意味するのよ?好きでもない相手とそんなこと…嫌じゃないの?」
「いや…そういう話じゃ…」
「じゃあ、どういう話なの?」
「だって…ホワイト家は1番最初に召喚されて守った相手を一生守り続けるって…ここで私が破棄してしまったらメロウは聖女の騎士になる資格を失ったどころか、永久に誰とも結ばれることのない孤独な人になっちゃうよ…」
そう自分で言葉にしてみて、私は改めて自分の失態の大きさに押し潰されそうになった。
庇護欲の強いホワイト家は人生をたった一人の聖女に捧げる。その意志の強さと伝統は執着ともとれるほどだ。
そんな家系の優秀な御曹司の未来を私はただその時思い付いたというだけの理由であまりにも軽々しく召喚魔法を使ってしまった。
私は取り返しのつかない過去を振り返り、強く唇を噛んだ。
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