第12話 ストレス発散係
「千歳さん、孤独や退屈が嫌みたいだけど、案外悪いものでもないと思うぞ?」
俺はそんな提案をしていた。別に学校を監獄としか思えないのなら、無理に天国だと思う必要もない。住めば都と言うし、単に、慣れの問題だ。
「孤独なら演技の必要もなくなる。皆と仲良くする必要もなくなる。安全にやり過ごしたいなら、俺と姫川さんを頼ればいい。同じ美化委員なんだしな」
「でも、孤独だと後ろ指を指されるのは、誰だって嫌でしょ?」
「そこは仕方ないでしょ。皆大なり小なり仮面を使い分けて生きている。別にあなただけが特別なんじゃない」
姫川がサポートしてくれた。
「姫川さん……!」
千歳は泣きそうな顔で姫川を見上げた。
「とってもいい人だったんだね」
さっきと言ってることが真逆だ。感情の起伏の激しすぎる奴だ。
「あと、人を駒のように扱うのも止めなさい? あんたが抱く程度の問題、誰だって抱えてるの。そんなのと無縁なのは……そうね。ぼっちを気取ってる柊木くんくらいよ」
俺を巻き込むな。
「柊木くんの心構え、是非見習いたいよ!」
「いや、そんな大層な心構えはない」
単にクラスの仲良しグループに入りそびれただけだしな。
「だがとにかく、死ぬだの殺すだの言うのは止めてくれ。滅多に口にすることじゃない」
「ごめんなさい。こんな両極端な性格で」
千歳は意外に素直に謝った。
「まぁ、極端な性格の人には慣れてるから。姫川さんだって、こんだけ口喧嘩強いのに裏では……ぐふっ、」
俺がそう言いかけると、後ろから口を塞がれた。
「柊木く~ん、それは言わない約束でしょ? 千歳さんを励ますのに他人の弱みを引き合いに出さないでほしいな?」
姫川さんは怒り心頭のようだ。確かに軽率だったか。
「す、すみません。このようなことが二度とないようにします!」
俺は謝罪し、どうにか解放してもらえた。
「二人とも、仲良しなんだね。妬けちゃうなぁ」
「そういう関係じゃないから! とにかく、退屈や孤独を感じたら、柊木くんで発散しましょ。これからは」
やっぱその役割からは逃れられないのか。
「そうだね! ありがとう!」
千歳はようやく、弾けるような笑顔を見せてくれた。さすがにこれは演技ではないだろう。
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