夢の終わりに始まる、もう一つの愛の形

　木山喬鳥様の「夢でもしあえたら」は、現実と夢が交差する不思議な余韻に包まれた作品です。現実の孤独や痛み、夢の中でだけ紡がれる温かな絆。そのどちらもが、曖昧に溶け合う感覚に、心が静かに揺さぶられました。
　
　夢は意味がない、現実にこそ価値がある――多くの人がそう信じて疑わない中で、主人公たちは夢の中にこそ自分の居場所や、大切な人との時間を見出していきます。けれど、その夢すらも儚く、やがて別れの時が訪れるという切なさ。三人称が交錯し、誰もが自分の夢や現実に問いかけているような、不思議な読後感が残ります。
　
　読み進めるごとに、人生で本当に大切なものは何か、夢と現実の境界線はどこにあるのか――ふと立ち止まりたくなるような余韻が胸に残りました。現実と夢を巡る静かな奇跡の物語、ぜひ多くの方に読んでいただきたいです。